温泉/関西の温泉

リバティ仮設風呂と廃業温泉、温泉センター2題 岸和田の温泉と奈良の温泉

掛け流しに改修するクアオルトリバティの仮設温泉に入湯した。また奈良、京都県境の笠置で廃業温泉にも入湯。ほか温泉センター2箇所

執筆者:郡司 勇


千亀利温泉クアオルトリバティ

岸和田に湧出する温泉
リバティ外観

岸和田にあるこの湯は以前、大阪や京都、阪神などの市街部を集中的に廻ったときに入浴した。ここは24時間営業なので午前2時頃に到着して入浴し、その後、犬鳴山まで走って車中泊した記憶がある。この度、日本サウナ協会の会長になられたそうで、営業部長が活発な方で、現在の循環方式ではまずいと考えたと思われ、掛け流しに改修することになった。そこで私が監修を依頼された。以前行った時も、この温泉ではいろいろと説明を受けた記憶があり、そして「千亀利の水」というミネラルウォーターをいただいたこともあり、なぜか縁が有るような気がする。各種の雑誌、WEB、ラジオ、テレビはかなりいろいろとやってきたが、本来の職種である建築にかかわるものはこれが初めてである。人生とは面白いものだと思う、温泉宿の設計をぜひしたいと、ずっと思いつづけていてもそんなことはなく、私と温泉とのかかわりは「テレビチャンピオン」というメディアから始まり、「るるぶ」や「旅」などの雑誌へと進んでいった。しかしこの話は設計をするわけではなく、どんな形で温泉を生かすかというコメント的なものである。まず源泉に入る前に通常の温泉利用はどうなっているか知るために入浴した。大きな内湯がありジャグジー状態のところと古代桧の浴槽があり、さらに温泉プールまである。小さめな露天風呂もあるが、すべて循環で透明、無味、無臭の個性の無いものであった。分析値でも清澄な温泉で36度の蒸発202mg、総計318mgである。個性がでるような成分を特に含有していなかった。しかし唯一Feが0.8mgある。さすがにこの湯をミネラル飲料水として販売しているだけの綺麗な湯である。

ポリバスでの仮設入浴
素晴らしい掛け流し


現在、温泉施設で使っている源泉は毎分403リットルの湯量があり循環の必要があるのかと思っていた。今回はポリバスを用意していただきそこに源泉直で入れてもらった。すでに完成されている設備の一部をこのポリバス用に出してもらったのである。新鮮な湯はなかなか良い湯で、やはり源泉に優劣はないなあと思わせてくれた。新鮮な温泉のもつ香りや、少ないながら飽和していた気体成分の気化など、源泉直接特有の表情があり100φほどの塩ビパイプから出る源泉を楽しんだ。
今回のためにポンプを回してもらった。ポンプ回転後約30分で実測39度にも湯温が上がり、驚いていた。塩ビパイプ直結でこちらはポンプのままなので調節が利かず、毎分100リットルくらいの揚湯量と推測された。入浴したのは私一人であるが、関係者一同が周囲に放散される「かつおぶしダシ臭」のような匂いに気づき驚いていた。湯口で注意深く観察しないとわからない微妙な匂いであるが、よくわかる。気体成分の含有も多く、小さな浴槽内部は弱く白濁しているような状態になった。身体への気泡の付着も多く、それを取り去るときのぬるっとした感触が気持ち良い。配管の簡素さと、湯量の違いのためであると推測される。
泡付きが見られる
新鮮な湯はどれも良い


基本的な泉質は同じである。この実験で湯量の大切さがよくわかった。現在、露天風呂が完成した。どの源泉でも簡素な配管にし、湯量を多くすれば良いと思っている。




笠置大天光温泉 

ポリ容器にて入浴
ポリ容器にて入浴

リバティ所有の廃業温泉。源泉は毎分20リットルほど自噴している。驚くべき分析値で総計2900mgほどの純粋な重曹泉でCO3 260mgほどである。18度 ポリバスにて入浴。つるつるはやや強い程度。アイリスヒルズがたしか200を越えていたのが最高と思っていたので日本有数である。

笠置町は京都府の最南端にあり、奈良県と県境を形成している。木津川沿いの風向明媚な地点に湧出する温泉で、過去に大きなホテルがあったが廃業し現在は窓ガラスが割れ、暴走族などの落書きがあって廃墟化している。入り口より細い道で登って行く。源泉はその道の途中にあり、小さな小屋にポンプ設備やタンク類も設置してあり、放置されている。事前に準備していたのか、小屋の中に1メートル角ほどのポリ浴槽があり、そこに源泉を入れ入浴した。総計3179mgの純重曹泉で分析内容を見て驚いた。Na914、HCO3 1641
CO3 256mg Cl 180mgである。炭酸イオン温泉多い純重曹泉はとろとろのぬるぬる温泉であることが多く、同じく純重曹泉の炭酸イオン量を見てみると、高串温泉の114mg 羽根沢温泉の 152mg 中山平温泉(丸進、中山平最高値)の150.4mgなど100mgを越えると非常につるつるが強くなるので、この256mgという数値が非常に多いものであることがわかる。日本一ではないかと思われるつるつる度の奥熊野温泉が記憶では200近かったような記憶である。この温泉は1100メートルも掘っており、分析表では34.3度である。温度は揚湯を続けると34度くらいまで上がるらしいが、現在自噴しているのは18度であった。この濃厚な重曹泉はポンプで揚げても毎分60リットル程度で、自噴ではちょろちょろと毎分20リットルほどであろう。しかし今回入浴用に水槽より出した源泉は13度と気温と同じくなっており、まさに寒の地獄と同じ温度で非常に辛い入浴となった。つるつるも弱いレベルで。この分析表の湯とは思えないものであった。しかし重曹分や炭酸イオンの特有の苦味はあり、この源泉がただものでないことが伺えた、推測だが加熱したらきっとつるつるのとろみのある湯になると想定できる。またはポンプで34度近くまで温度を上げた源泉であればつるつるが強いのかもしれない。なおこの源泉は自噴しているのでポンプ真上のコックから採水できる。





*近畿特集*
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