知る人ぞ知る「子宝の湯」の里へ。

東府屋旅館
渓谷沿いに迷路のように建物が立つ吉奈温泉「東府屋旅館」。夕闇迫るころには虫の音に包まれる。
秋冬のグルメといえば、「別所温泉の松茸」!、「志摩のあのりふぐ」!、「気仙沼の秋刀魚」!、とたくさんありますよね。各地の新米や11月に解禁される日本海のずわいがにもおいしい季節です。
そして、忘れたくないのが、「ジビエ」。野性味のある禽獣の肉をワインとともにいただく至福・・・。
そんなジビエを一年じゅう、あくまで和風に、「鍋」で、あるいは、「鉄板」で焼いて、提供してくれる宿を伊豆・吉奈(よしな)温泉に訪ねてきました。

東府屋旅館
とうとうと注がれる湯は、加水もしていない。肌がすべすべになる極上の名泉だ。
「(伊豆には)七八箇所から湯が出てゐるが、子が授かるという名湯は大湯だ」と、川端康成が「伊豆温泉記」のなかで記した「吉奈温泉」。伊豆を南北に貫く狩野川の支流、吉奈川に沿った山深い谷あいに立つ善名寺の門前湯です。知る人ぞ知る鄙びた温泉で、江戸時代から「子宝の湯」として知られています。
吉奈には三軒の宿があり、豊富な湯を分け合っています。隠れ家の名がぴったりくる木造離れの一軒宿「芳泉荘」。ちょんまげ、かみしもを着け殿様気分で大名焼きを味わう「御宿さか屋」。そして、野生の猪やキジを仕入れ、年じゅう炉端で食べさせてくれる「東府屋旅館」。いずれの宿も個性的で、かつ「子宝の湯」として全国に名を馳せる名湯がとうとうとかけ流されています。
古くは、子に恵まれなかった家康の側室「お万の方」も吉奈を訪ね、よく温まる湯で湯治をしたところ、頼宣公(紀伊藩主)と頼房(水戸藩主)を授かったそうです。今回訪ねた東府屋旅館の中庭にはお万の方の腰掛け石があり、館内には徳川の紋章がついた大鍋が飾られています。今でも、この宿には、子宝に恵まれたいご夫婦が日々訪ねてくるとのこと。多くのご夫婦が敷地のお地蔵さんに子宝を願ったのでしょうね。数々の皇室や文化人・芸能人・スポーツ選手が訪ねた足跡も多々館内に飾られています。
さて、吉奈の名湯をいただいたあとは、いよいよお待ちかねの和風ジビエ!