2018年は「旅が日常化していく」1年に!

2018年、宿はこれまでになく多様化する1年になるだろう。非日常でリッチな旅は「年に1回だけ」となる一方で、旅が日常にも融け込み始め、居酒屋にちょっと出かけるような感じでふらっと旅に出るスタイルも徐々に消費社会に浸透していく。

その背景にあるのは、ホステルやゲストハウスに加えて、合法化により民泊が加わる「簡易宿所」というカテゴリーの急増だ。食事を提供しない簡易宿所は、旅館やホテルに比べて比較的参入が容易で、ここにクリエイターによる手が施されて、新しいコンセプトの宿がどんどん生まれていく。消費者性向も「誰かを喜ばせるための旅」から「自分が楽しむ旅」に変わっている。そうした消費に対応していく宿が登場する一年になるだろう。

2018年の日本の宿事情はどうなるのか? 旅館ガイドによるヒット予想をお届けする。


 

ヒット予測第5位 奄美諸島

2018年の注目エリアとして「奄美諸島」(奄美大島と周辺諸島)が来そうだ。きっかけの一つは1月に始まった今年のNHK大河ドラマ「西郷どん」。幕府に追われた西郷隆盛が身を潜めたのが奄美大島だ。奄美の美しい風景がお茶の間でも放映されることで、奄美の文化や生活の魅力がより知られるようになるだろう。そして、夏には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界遺産候補として登録審査を受けるため、奄美の美しい自然にも関心の目が向く。
奄美

美しい自然景観が広がる奄美諸島

近年、奄美では個性的な宿が増えている。その中でも、注目しているのが「伝泊」。「伝泊とは、伝統的・伝説的な建築と集落と文化を次の時代につなげるための宿」のこと。台風除けの塀に囲まれ、平屋・高床式などの家屋が敷地内に分散する奄美の伝統建築がリノベーションされ、宿として蘇った。

映画「男はつらいよ 寅次郎紅の花」で寅さんとリリーが暮らすシーンを撮影した「リリーの家」も次世代に残された。この「暮らすように泊まる」取り組みは今年一層注目され、多くの奄美ファンを創ることだろう。


 

ヒット予測第4位 二人宿

2005年頃から10年以上にわたり増え続けるのが「二人旅」と「一人旅」。かつて多かった家族旅行や友人旅行等は減少の一途をたどる。実は、客にとっても、宿にとっても、宿泊者が同じ顧客層で固まってくれたほうが満足度は高まる。そんな本質を極めた「時の宿すみれ」や「風の森」は「お二人様専用宿」としてわが道を行く。二人といっても夫婦やカップルばかりではない。母娘、同僚、友人、親子。中には戦友が酒を酌み交わすこともあるという。

二人ノ宿きひろ

「二人ノ宿きひろ」の窓からは琵琶湖を一望

琵琶湖と神の島「竹生島」を望む湖北に、2018年新春、新たな「二人宿」ができた。宿の名は「二人ノ宿きひろ」。「喜」が広がってほしいと名づけた宿は、湖岸道路に面した7室の宿。3つの貸切風呂に引かれた温泉は、やわらかな肌ざわりだ。

もともと調理人だった館主はこだわるのが、近江推しの料理。初めての鮒ずし、赤こんにゃくにも会話が弾む。コンパクトだが全室湖面に面した客室からは、刻々と彩を変える琵琶湖が美しい。頼めば竹生島まで漁船をチャーターすることも可能。ここは「自分のため」ではなく「相方のため」に宿に相談してみよう。(※ホームページは制作中)


 
 

ヒット予測第3位 アパート民泊バブル崩壊

2018年、住宅宿泊事業法が施行され、民泊が正式に宿として認められる。民泊には「家主居住型」と「家主不在型」の二種類があり、前者は「交流型」、後者は「アパート貸部屋型」だ。都市部で急増すると予測されているのは後者。こちらは「ロケーション」が鍵を握る。しかし、ロケーションがそれほどでもない物件も少なくない。そのため、物件が増えるだけ増えて、価格が暴落。手間とコストに嫌気が差してアパート民泊バブルは徐々に崩壊していく気がする。

民泊

いつまでもお元気で。上勝町の里がえりの植松さん

一方、勢いは弱くとも定着に向かうのが「家主居住型」だ。本来の民泊の定義であるこちらは、様々なコンセプトが受けて人気を高めていく。銭湯の民泊。農家の民泊。古民家の民泊。日本ならではの生活感が売りになる。

民泊デビューなら、個人的なおすすめは四国。元来、お遍路の「お接待文化」が根づき、外来客にやさしい。例えば、「営業は半年だけ、週休3日」という神山町の「カフェオニヴァ」の民泊は外国人に支持が高い。同じく「営業は半年だけ、予約は月に3組」という上勝町の「里がえり」は、90歳になろうかという植松さんご夫妻のもてなしで「天空の楽園」と言われている。ただし、あくまで個人宅での宿泊だ。ルールや環境を守り、楽しみたい。


 

ヒット予測第2位 絶景宿

SNSの普及につれ、絶景が一段と注目されている。絶景の宿で検索すると相当数がヒットする。そのほとんどが「海の絶景」だが、これは島国日本の強みだろう。見渡す限りの山を眺めながら過ごす高級ヴィラ「天空の森」では、1人一泊100万円を超す棟を構想中とのこと。こうなると単なる絶景だけではなく、絶景をどのように眺めながら過ごすか、「眺め方」にまでテーマが及ぶようになってくるだろう。

XYZ

太平洋の絶景を眺める解放感抜群の客室露天風呂

2017年夏に、これまでにない絶景宿が南紀の椿温泉(白浜町)にできた。潮岬にも近い紀伊半島のほぼ突端。岩場に囲まれた小さなビーチにはりつくように建つ「XYZ Private spa and Seaside Resort」。「浜の番屋」をコンセプトとする宿をひと言で表現するなら、絶景露天風呂付き最高級海の家であろうか。コンパクトな客室棟が半屋外の渡り廊下でつながれ、食事はこれも半屋外のテラスで炭火焼きとかなりカジュアルだ。

一方、バリ島家具が置かれた客室の目玉が「電動目隠し付き露天風呂」だ。つるつるした泉質の椿温泉が注がれた湯船からリモコンを操作すると、目隠しのアクリル板が下がり、目の前に絶景が広がる。晴れた日の夜には満天の星空! 深夜、漆黒の海に浮かぶ漁火と海風を感じながら入る解放感は、今までの宿にない体験だ。


 
 

ヒット予測第1位 泊まれる○○○

2018年の第1位としたのは「泊まれる○○○」。○○○にはいろいろな言葉が入る。馴染み客の多いところでは、「泊まれる天ぷら料亭」「泊まれる居酒屋」等の和風オーベルジュ系がある。露天風呂に釣瓶桶でお酒を下ろしてくれる「泊まれる酒屋」も隠れた人気が続く。そこに近年、「泊まれる本屋」をコンセプトにしたホステルや、東京R不動産の仕掛人でもある建築家、馬場正尊さんがプロデュースした「泊まれる公園」が誕生し、注目を浴びている。これまでの宿の概念を超え、「○○○が主、宿が従」といった流れが加速している。

中村屋

泊まれる酒屋「地酒の宿中村屋(中村屋酒店)」では、こんなサービスも

そして、2018年春、本格的な「泊まれる本屋」として、箱根強羅温泉に「箱根本箱」が開業する。日本出版販売の保養所をリノベーション。里山十帖を運営する自遊人がプロデュースをした宿は、2万冊の本に囲まれ、ブックストアやコ・ワーキングスペースも併設。本好きにはたまらない宿だ。自遊人は、滋賀県大津市では「泊まれる商店街」も構想中で、2018年夏には町家をリノベーションした宿が数棟お目見えする。

「泊まれる寺社」である宿坊も高級化の流れが生まれている。2018年6月には住宅宿泊事業法が施行され、きっと様々なスタイルの民泊も今後登場するだろう。「泊まれる映画館」、「泊まれる駅舎」、「泊まれる学校」、「泊まれるビーチ」等々。まち全体が宿になる。そんな「まちやど」の広がりが今後続いていくだろう。

 

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参考 昨年記事「2017年日本の宿ヒット予測!
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