■吸出し技術がコツ
蟹に食べ方のルールはありませんが、私の一押しの食べ方をご紹介します。
先ずは、足と外子(外側についている卵)をじっくりと交互に食します。
外子は薄めの塩味が程よく、独特の『しゃりしゃり・ぷちぷち』した食感が何ともいえません。もちろん、内子(殻の中の卵)はさらに美味しいですが、外子は外子で癖になる味です。おなかのフンドシ(三角の部位)にくっついていますので、歯でしごく感じで頂きます。一度に全部を食べないで、足の部分と交互に味わいます。また、ふんどし付け根の真っ赤な部分は最高の内子なので、この部分までしゃぶり尽くして下さい。
セイコガニの足は細くてズワイガニにように、ほうばる感覚は味わえませんが、味は非常に美味です。このような小さな蟹の足は、食べると言うより、吸い取るという表現が近いです。『ちゅちゅ』と吸い込むと、美味な蟹肉と蟹のジュースが口に飛び込んできます。慣れないとうまくいきませんが、上海蟹や渡り蟹のような小さな蟹を食べるには、この吸出し技術は是非とも会得して欲しいです。
私は産直品のショッピングモールを運営していて、思いもよらないクレームを受けることがありますが、何度かあったのは、『セイコガニって全然食べるところがなくて、よくこんなもん売るよな!』という勉強不足のお客様のクレームです。大事に足の先まで堪能すれば、一匹でもかなり満足感があります。特に足の身はとても味が濃いので、面倒くさくても、きちんと召し上がって欲しいです。
足と外子を食べてから、だるま状態になった蟹の甲羅をはずします。
胴体部分のガニ(えら)を取り、半分に割ると真ん中の味噌と内子が露出しますので、これをこぼさないように、しゃぶりつきます。この味噌と内子の交じり合う部分を堪能するのが、セイコガニならではの楽しみです。
甘くて濃厚で、それでいてくどさがない味わいがセイコガニの特徴です。渡り蟹の味噌や卵も美味しいですが、セイコガニの味は苦味がなく味噌と卵の量の個体差が少ないので、確実に堪能できるのがうれしいです。
続いて胴体の甘い身を食べますが、お好みで身を甲羅の蟹味噌に混ぜて食べても美味しいです。甲羅にくっついている口の部分を取り、同時に口の延長についている胃も取りますが、この口と胃にもたくさんの蟹味噌がついているので、しっかりとしゃぶります。
■味噌を残して熱燗を注ぐ
最後は甲羅の隅々までたまっている内子と味噌をスプーンや指ですくい堪能します。まさに、舐めてはお酒を『グッビ』状態になります。このあたりまでくると、口も指も蟹の味がしみ込み、満足度も最高潮に達します。
もちろん、甲羅酒も最高です。卵(内子)を食し、わざと味噌を食べ残して、普通より熱くした燗酒を注ぎます。出来れば、少し直火で炙ることが出来れば、甲羅の芳ばしが酒に溶け込み、また違った味を堪能できます。
これだけ堪能して一匹1500円は十分にバリューがあります。ただし、面倒くさがりにはお薦めしません。
■ 取り寄せ情報 ■
(資)田島魚問屋