内閣府は、2003年、全国60歳以上の男女を対象に「虚弱化したときに望む居住形態」についての意識調査を行いました。その結果、「現在の住宅にそのまま住み続けたい」が36.3%、「現在の住宅を改造して住みやすくする」が21.4%。これらをあわせると約半数以上の方が、現在の住宅を終のすみかにと考えているようです。

そんな中、今回取材にご協力いただいた方は、郊外の一戸建てに35年間お住まいになられたNさんご夫婦。住み慣れた家を引き払って、都心にあるマンションに移られたそう。お話をうかがってみました。

10年先の自分たちの生活を考えてみた


引越し、旧居
自分たちが気に入るよう、手を加えてきた愛着のある旧居
ガイド:郊外にある閑静な住宅地から、ここ都心にほど近い場所に移られてきたそうですが……。
Nさん:そうなんです。35年間住んだところだったので、それはいろいろ考えましたよ。(笑)
でも今、私が65歳、主人は72歳。これからの10年をどのように過ごそうかって真剣に考えた結果、こうすることに。

ガイド:35年も住んでしまうとなかなか決断がくだせなかったのでは?
Nさん:そうですね。本気で今後のことを考え出したのが3年ぐらい前でしょうか。いろんな方の老後の生活を思い浮かべました。自分たちの両親のことも含めて。

『体を動かせるうちは子どもの世話にならず、どうしようもなくなってから助けてもらう。』
それとも、
『体の自由がきくうちに、今後のことを考えて、自分たちのサイズにあった生活への準備をはじめる。』のか。
私たち夫婦は、後者を選びました。

ガイド:なるほど。生活を縮小されようと?
Nさん:はい。以前は一戸建てでしたので庭の手入れもありましたし、いざ出かけるにしても戸締りだって大変。それに旅行とでもなると、近所の方にはやはり一言告げておかないと……。それに、2人の子どもたちもそれぞれが家庭を持って独立していますので、これほどの広さもいらなくなって。

ガイド:で、今後住まれるところはどのように?
Nさん:都心に近いところがいいなあと。10年後、車の運転ができなくなるかもしれないことを考えると、とにかく便利なところにしたいと強く思いました。
それと私たち、夫婦の趣味は、映画や演劇を観に行くことなんです。都心に出る機会が多いので、帰りがラクだとうれしいですね。

あと、家庭を持った子どもたちが、それぞれ都心近くに住んでいることも重なって、どうせなら子どもの近くで過ごせたらという思いもありました。

ガイド:不安はありませんでしたか?
Nさん:あげたらキリがありません。(笑)ひとつあげるとすれば、長年築き上げたコミュニティーと別れる寂しさは大きかったですね。これから都会でのマンション暮らしの中、これだけ良好な人間関係が築けるのだろうかと不安も感じています。

モノの処分にひと苦労