ベビーを育てるのは簡単なことではありません。育てるだけの時間と能力がないために、死なせてしまうことも少なくありません。 |
わがまますぎる飼い主の希望
恐ろしすぎて怖い噂なのですが、「目が開いたか開かないかの週齢で飼わないと馴らせないから」と人間が育てるには難しい年齢のベビーを欲しがる人がいます。こういう人は、「馴らせる時期は過ぎているからペットショップで馴らした子を」と考えるのかもしれません。この噂は、小さなペットだけに言われているものではありません。「馴らしたいのでまだ目の開いていない仔猫が欲しいのですが、どうすれば手に入れられますか」といった質問を私は受けたことがあります(この質問には、目の開いていない仔猫の世話がどれだけ大変で、育てられないおそれがどれほどあるのか伝え、親から離れられる月齢の仔猫を飼うように答えました)。
でも、小さなペットに対して言われることの多い噂です。そして、それを真に受けるのか、目が開いたばかりの仔シマリスやモモンガのベビーなどがペットショップで売られることもあります。
シマリスもモモンガも、ほかの小さなペットも、大人になっている子を飼い始めても馴らすことはできます。だからどうか、親から離すのが早すぎる赤ちゃんを飼いたがらないでください。飼い主のわがままな希望が、親に育ててもらう必要がある赤ちゃんを親から引き離し、その赤ちゃんの命を危険にさらしているのです。
なお、親の世話が必要な週齢の赤ちゃんを人間が育てた場合、たしかに人間によく馴れた子に育ちます。ただし、育てる間の数週間は人間は数時間置きにミルクを与え、保温に気をつける必要があり、体力的な疲労を味わうことになります。そして、生後1年を過ぎた大人を飼った場合でも、飼い主が馴らす努力をすれば、人間が育てた子と同じかそれ以上に人間に馴れた子にすることができます。
噛まれた経験のある人の方が飼い主としてのスキルは上がります
噛まれると痛いので、誰だってペットに本気で噛まれたいとは思いません。でも、噛まれたことがない人よりも、噛まれたことがある人の方が、ペットを飼う技術は高くなります。一度でもペットに本気で噛まれると、なぜ噛まれたのかを考えることができます。考えることにより、ペットの気持ちや行動について考えるチャンスを得られます。また、噛まれないようにするためにはどうしたらいいのかも考えますし、もし飼い始めであるならば、ペットを安心させ、仲良くなるためにはどうすればいいのかも考えることでしょう。
昔、知り合いの犬の訓練士さんに、彼女が所属する訓練所に連れて行ってもらったことがあります。その訓練所には、所長さんのお嬢さん(小学校低学年ぐらい)がいて、大きなシェパードたちと楽しそうに遊んでいました。
「子供の頃から多くの犬と遊べるなんて楽しそうでいいですね」と私が言ったところ、「そんなことはない」と所長さんに言われました。「訓練所にいる犬たちは訓練士の方々がトレーニングをしているので急に触ったり、大きな声を出したりしても安全だけれども、訓練所の外で会う犬によっては、急に触ったり、大きな声を出したりすると驚いて噛み付こうとすることもある。うちの子たちはここの犬に慣れてしまっていて、犬の怖さを知らない。だから、かえって危険なんです。」というようなことを言われました。
ペットは、たとえ子供の手のひらに入ってしまうような小さなハムスターであっても、身の危険を感じたら噛み付いてくることがあります。ペットが噛むということを知っていれば、噛まれないように接することができるのに、噛むということを知らないと噛まれやすい触り方をしてしまうおそれがあります。そのことに気が付きやすいのは、一度でも噛まれたことのある人です。
ペットには噛まれたくありません。でも、噛まれたからこそ気が付けることもありますので、噛まれることを恐れないでください。どんなに小さなペットでも、相手が生き物であること、相手に意思があることを忘れずにいられるのは、噛まれたことの無い飼い主さんよりも、噛まれたことのある飼い主さんに多いです。噛まれたら、今よりいい飼い主になるチャンスをもらったと思ってください。