昨年末に、両爬愛好家や研究者を震撼させたツボカビ関係の記事の最終章です。
今回は前々回の「診断と治療」、前回の「検疫と消毒」に引き続きカエルのツボカビ症対策の後編として「日本の両生類を守るため」をテーマに「ツボカビを屋外に出さない方法」について考えてみました。
日本のカエルを守るために
さて、今回のツボカビ問題は日本国内のカエル飼育者の方たちにとってはもちろんですが、それ以上に研究者や専門家が心配しているのが「日本の在来野生両生類への影響」です。国内へのツボカビの侵入ルートがどうであれ、国内で確認されていなかった病原体が日本国内で発見されたという事実は、極端にそして短絡的に考えてしまうと「海外からの両生類の輸入禁止」という結論に結びつく可能性があります。
ですから、私も一両生爬虫類飼育愛好家としては「あまり大騒ぎになったり大げさにするのも...」と考えることがあります。
しかし、カエルのツボカビ症で知られているさまざまな客観的な事実を付き合わせていくと、野外にツボカビが出てしまったら、日本の野生の両生類へ壊滅的な打撃が生じてしまう可能性は否定できません。
もしかすると、もう遅いのかもしれませんが、やはり飼育愛好家や流通関係者、両生類研究者あるいは飼育施設ではツボカビが野外に出てしまわないように最大限の努力は必要だと思います。
そのために私たちができることを考えてみましょう。
野外へ生体を棄てない
ツボカビがどうとか、そういう問題からだけではありません。飼育している生き物を屋外に棄てることはやめましょう。外国産の種類はもちろんですが、国産の種類もやめましょう。
私は身近な両爬の飼育を推奨している人間でもあります。その飼育に関して「元にいたところに戻すことができる」という前提を持っていました。
しかし、今後はそういう方法を勧めることはやめようと考えています。特に、外国産の種類と一緒に飼育を楽しんでいる方たちはやめるべきです。
その生き物の最期の姿を自分の目で確認する飼育を推奨します。
排水の消毒
ツボカビの遊走子は水中で生活をしています。ですから、飼育に使った水や飼育器具の洗浄に使った水に遊走子が入っている可能性があります。ツボカビの侵入の可能性がある場合は、これら飼育に関係する水は消毒をして捨てましょう。
・水の消毒
飼育に関係した水や飼育器具を洗ったあとの水は、そのまま排水せずに以下の手順で消毒をしてから排水して下さい。
- 捨てる水を大きめのバケツなどに溜める
- 沸騰水を加えて50℃以上にする
- 塩素系漂白剤を200ppm以上になるように加える
- そのまま30分程度放置する
- 観賞魚用の塩素中和剤(ハイポ)を加えてからトイレなどに流す
※排水が20℃で2リットルあるならば、計算上は1.5リットルの水を沸騰させて加えれば50℃になるはずです。余裕を持って排水の量と同じ量の水を完全に沸騰させて加えるといいでしょう。
※先述したように水5リットルに50mlの原液を加えると200ppmになるようです。
ただ、ここからは個人的な意見なのですが、少なくとも昨年の11月に公式に日本でのツボカビ症が発症したわけですから少なく見積もって11月に国内に侵入。
ということは、それ以降に両爬を扱うショップで生体を購入した場合(特に水関係)は、少なくとも検疫期間中の水に消毒処理を施さなくてはいけません。
また、海外から生体を輸入するショップではこれを半永久的にしていかなくてはいけないことになります。
そんなことは可能でしょうか?
これに関しては、私自身が納得できる答えを見出していません。どうすればいいんでしょう...