爬虫類・両生類/爬虫類・両生類関連の法律

危険動物飼育許可(前編)(2ページ目)

ネタ作りのためだけじゃないんですが、特定危険動物の飼育許可の申請を行なってみました。その一連の流れをドキュメントでご紹介です。で、問題の危険動物とは...?

執筆者:星野 一三雄

相談

そういうフライングをしていることを知らずに、いよいよ保健所に相談に行きました。
実は動物愛護法改正を受けて、私も動物取扱業への登録に関して、すでに保健所で相談を行い、とりあえず届け出まではしたので保健所の方にも気軽に相談できました。

そこで一連の説明を受けてから、帰ろうとしたときに一言。
「星野さん、ご存じだとは思いますが、許可を取ってから購入して下さいね!」

え?やべー!もう買うって言っちゃったよ!!!!!

この時にはじめて自分のフライングに気づきました。
ショップにはその旨、相談して
「絶対に飼育許可をとって、買うから、ちょっと待ってて下さい!」
と非常にわがままで勝手なお願いをして、何とか了解をしていただきCITES関係の登録手続きもストップしてもらいました。感謝。

みなさんも、ここは本当に注意して下さい。
残念ですが、愛護法の改正を受けて全国一律の規制になったのではありますが、許可を出すのは知事です。自治体によって対応というか基本方針に温度差があるのは事実です。
絶対に新たな危険動物の飼育許可なんか出さない」みたいに、頑なに許可をしない自治体が存在しています。ですから「買ってから許可を得ればいい」という考えではダメです。
必ず許可を得てから、購入しましょう。
それと、もちろんショップも購入者が飼育の許可をとっているのかを確認してから販売しないといけません。

また、保健所の方から
「今は5月だから、この時点で申請を行うと旧法のもとでの許可になり、6月の改正法のもとで新たに申請をし直す等の二重の手間がかかる可能性がある。申請は6月に入ってからした方がいい。」
というアドバイスを受けました。これは結果的に非常によかったことでした。

飼育設備の準備

許可を得るために、まず飼育施設の準備をします。
飼育施設の基準は旧法のもとでは、かなりハードルが高い基準だったのですが、改正法では比較的現実味がある基準になりました。
これは「特定飼養施設の構造及び規模に関する基準の細目」にあるのですが、ポイントは
・逃げ出さない構造
・壊れない強度
・施錠できる
ことです。
それと保健所で言われたのは
・ずっと飼い続けられるような施設
です。つまり大きくなったときにも上の3つを満たすような施設で、ということです。
これに関しては、後述しますが大きな問題になりました。

爬虫類は「水槽型施設」で構わないので、私も120cmの強化ガラス水槽を準備しました。
購入予定のヨウスコウワニは全長で60cm程度ですので数年は、このサイズの水槽で飼育が可能であると考えました。ただし将来は庭に小屋を作って飼育するつもりです。
本当はそうとう高価な120cm強化ガラス水槽「飼養等施設」つまりヨウスコウワニ飼育水槽
もっとも工夫をしたのは「フタ」です。後から飼育してわかったのですが、ワニはガンガンジャンプします。しかも体重もありますから軽いフタでは外されたり壊されたりする可能性も考えました。
結局「フタ」は自作をしました。市販の「バーベキューネット」と「スチールアングル台」のフレームを組み合わせて、水槽の片面ずつ開閉できるように二つ作成しました。
さらに「鎖」でフタを固定し「南京錠」で施錠を可能にしました。
とにかく鉄製ですから、重いの重くないのって...結果的によかったんですが。実は小学校の時図画工作で「1」をとったことがある(実話)自作のフタ

Let's 申請

これで飼育施設の準備もできましたので、申請が可能なはずです。
基本的に申請には「申請書」の他に
1.特定飼養施設の構造及び規模を示す図面
2.特定飼養施設の写真
3.特定飼養施設の付近の見取図
4.申請者が動物の愛護及び管理に関する法律第27条第1項第2号イからハまでに該当しないことを説明する書類
5.獣医師又は行政機関が発行したマイクロチップの識別番号に係る証明書

を提出する必要があります。

6月1日になり、改正愛護法が施行になりましたので、とりあえず「2.特定飼養施設の写真」と「1.構造及び規模を示す図面(部屋の見取り図と水槽の図面)」「3.施設の付近の見取図(住居の地図)」を添付して申請書を作成し保健所に申請に行きました。1.と3.は昨年に特定外来生物のタイワンスジオとグリーンアノールの飼養許可を得るために作成してありましたので、それをベースにしました。
4.は単なる署名だけです(実は...後述参考)
5.は実際にワニを飼育し初めてから一ヶ月以内に動物病院でマイクロチップを入れてもらってから提出ですので、この段階では必要ありませんでした。

あ、忘れていました...登録には手数料が必要です。
基本的に手数料は申請1件で15,000円です。消費税込みで15,750円也。あ痛たたたたた...

最大の難関

ところが...
保健所の係の方「あ、星野さんはアパートでお住まいなんですね?」
俺「はい。」
保健所の係の方「賃貸住宅などで飼育をされる場合には、もう一つ書類が必要ですね。」
俺「何ですか?」
保健所の係の方「ほら、これですよ。『細目』にこうあります。『申請者が維持管理する権原を有していること』」
俺「それが何か?」
保健所の係の方「要するに、星野さんがアパートでワニを飼うことはできないんですよ。だって星野さんは借り主で、アパートの『維持管理する権限』を有しているのは大家さんなんですから。」
俺「と、言うことは...」
保健所の係の方「はい。大家さんに『アパートでワニを飼う』ことの許可をもらって下さい。
俺「.......それって無理だろ....」

最大の難関がやってきました。
アパートの大家さんのところに行って
「スミマセン。部屋で危険動物に指定されていて、飼育するのに知事からの許可が必要なワニを飼いたいので、許可して下さい。」
なんて言えません...
しかし、ここで挫折していられません。
3日間悩んだ末に、意を決して行ってきました。
様式はどんなでもいいので、「許可書」なりを自作して家主の許可を得ればいいのですから「誓約書」と銘打って
・絶対に逃がさない
・他の住人に迷惑をかけない
・借り主としての義務をきちんと果たす
・守れなかったときは退去命令を出されても素直に従う
などなどを約束するような内容の書類を作りました。

そしていよいよ、夕方の非常識でない時間に、ネクタイも締めて、きちんとした身だしなみで、お茶菓子を片手に、ついでに来月分の家賃も持って裏の大家さん宅へ...
こんなに緊張したの久しぶりでしたよ。本当に。
とにかく誠意を込めて説明し、守らなくてはいけないこともすべて守ることを約束して、何とか飼育することの許しを得ることができました。感謝。
世の中の若人諸君。やはり普段の生活とか、そういうのが大切ですよ。本当に。
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