さて、6月26日のwebニュースでも目にした方も多いでしょうし、直後の私のメルマガでもコラムにしたので覚えている方もいらっしゃると思います。
「色をカメレオンのように色を変える新種のヘビが発見された」
というニュースです。
私たち愛好家は「新種」という言葉に敏感である上に、「色を変えることができるヘビ」という要素も加わって、興味を持った方も多いでしょう。
私も、とにかくネタもなかったことですし、急遽コラムにしたんですが、その後、ゆっくりとこの記載された論文を読んでみました。
そこで今回は、せっかくですから忠実に論文を訳して、それに従ってわかりやすく、この新種のヘビをご紹介しましょう。
新種記載論文
"John C. Murphy, Harold K. Voris, Mark Auliya, 2005. A new species Enhydris (SERPENTES: COLUBRIDAE: HOMALOPSINAE) from the Kapuas River system, West Kalimantan, Indonesia. The Raffles Bulletin of Zoology 2005 53(2):271-275"
なお、元の新種記載論文やネットニュースおよびWWFの公式ページ内の記事は検索エンジンで「新種」「ヘビ」「ボルネオ」と言った単語で検索をかければ見つけることができます。
新種の名前
今回、話題になったヘビはナミヘビ科のミズヘビ亜科ミズヘビ(ニジミズヘビとも)属のヘビです。与えられた学名はEnhydris gyii であり、英名としてKapuas Mud Snake とされました。和名は特に決まっていませんが、英名から考えれば「カプアスドロヘビ」ですが、「ドロヘビ」は北米のFarancia属のヘビを指すことが多いので、あまり適当ではないので、おそらくEnhydris 属のヘビに使われている「ミズヘビ」をそのまま使って「カプアスミズヘビ」または「カプアスニジミズヘビ」あたりでしょう。
ミズヘビ属について
ミズヘビEnhydris属は、東南アジアから西はインダス川、南はオーストラリアのクイーンズランド州の東海岸の広い地域に分布する水中生活を主にした小型から中型のヘビたちです。現在までに、今回新たに発見された本種を除いて22種類が知られています。全種に関して確認されているわけではありませんが弱毒を持つ後牙類のヘビです。私たち両爬飼育者にお馴染みなのは、以下の3種類でしょう。
- シナミズヘビE. chinensis・・・中国南部からベトナムに分布
- オオミズヘビE. bocourti・・・インドシナ半島とマレー半島に分布
- ハイイロミズヘビE. plumbea・・・中国南部からインドシナ半島、マレー半島
これらいくつかの種以外は、あまり広い範囲に分布していないようで、限定的な水系のみに分布しています。
ボルネオ島のミズヘビ属について
今回の新種のヘビが発見された舞台であるボルネオ島には、これまで以下の5種のミズヘビ属のヘビが見つかっていました。E. alternans、E. dorinae(Bloth-Lipped Mud Snake)、E. enhydris(Common Water Snakeニジミズヘビ)、E. plumbea(Plumbeous Water Snake)、E. punctata(Spotted Water Snake)
シカゴの自然史博物館のJ.C.Murphy、H.K.Vorisおよびドイツのボンにあるアレクサンドル・ケーニッヒ博物館のM.Auliyaらは1996年に採集された35個体のミズヘビ属の標本の各部形態の測定をしているうちに、上記の5種のいずれでもない標本を3個体発見し、今回の新種の発見となったのです。