飼育者と販売側の姿勢
自戒を込めて、私がいつもここで書いているのは「脱走させることは悪」です。ましてや遺棄などはもってのほかです。ヘビやイグアナを脱走させたら大騒ぎになって「そら見たことか」と思われてしまうのは火を見るより明らかです。
「危なくない」「毒はない」「おとなしい」と言っても、3.6mのビルマニシキヘビならば殺傷能力は十分にありますし、カリキンだって咬まれれば血が出ます。おとなしいイグアナも噛み付かなくたって爪を引っかけられれば洋服が傷つくでしょうし、肌が傷つけられることだってあり得ます。
「イヌだって危険で殺傷能力があるだろう」「日本ではペットの両爬が人間を殺した事件はないが、イヌが人間を殺した事件はある」と反論されることもありますが、全くその通りで事実です。
しかし、どんなに私たち飼育者が両爬の魅力や安全性を熱弁しても、一般の方たちから見れば(カメ以外は)「得体の知れない気持ち悪い生き物」という前提があるのが大半の見方です。ましてやヘビを飼っていることを理解しろ、なんて無理です。いつでも「飼うことを許してもらう」くらいのつもりで謙虚な姿勢を忘れないようにしたいものです。そもそも、それが趣味人の粋ってもんでしょう。
とにかく脱走させないために全力をつくすのは飼育者の義務といえます。
ショップのせい?
また「販売する側にも責任がある」とも言われています。私は基本的に「遺棄・脱走・保護」の事案には販売側の責任はないと考えているタイプなのですが、最近はさすがにちょっと考え方が変わってきました。
これらの事案とは無関係ではありますが不祥事も相次ぎ、さまざまな法律によるあらたな規制がかかる逆風に関する無関心、そして無法地帯とも言えるネットオークションの有り様。こんなのばかりを見るとどうしても「販売する側の責任」という言葉も無関係ではないと考えざるを得なくなってしまいます。
ネットオークションで安いボールパイソンを見つけ、準備もないまま小遣いで購入し、親に見つかって反対され、仕方なく捨ててしまう...根拠も何もないのに、こんな状況が想像できてしまうのは私だけでしょうか。
図鑑を見てボールパイソンに憧れて、購入するために小遣いを貯めて、その間に飼育方法をしっかりと勉強して、保護者や周囲の人から許しを得て、ショップでしっかりと生態や飼育方法、注意点などを教わり、飼育を許してもらったかわりにしっかりと勉強をして、家の手伝いもして、これをモチベーションに自分を律し、ボールパイソンの寿命が尽きるまで大切に飼い続け、自分も保護者も周囲の人も「あのときに飼い始めてよかった」と言えるようになる。
こんな状況になればいいのに、と思ってしまいます。
次回は後編として「ヘビの脱走対策」に関してお話ししたいと思います。
<ガイド記事>
初めてのボア・パイソン
両爬飼育の「覚悟」と「心がまえ」