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Part1 両爬界の大激震!?(2ページ目)

後手に回ってしまった感のある新法「外来生物法」。今回は私見をなるべく最小限にして、特に初心者の方にわかりやすいように解説をしてみました。

執筆者:星野 一三雄

いったい何が決まったのか?

さて、それでは星野は、そしてどうして両爬飼育者たちの間に激震が走っているのでしょうか?
簡単に、今回の法律の解説をしてみましょう。

ただし先にお断りしておきます。
この法律に関して議論をしたり、真の理解をするためには「生物の多様性」という言葉を抜きにすることはできません。が、今回の記事の意図は、とにかくこれまであまり関心がなかった方々に、最小限の内容を知ってもらうことでありますので、「多様性」に関しては割愛させていただきます。

法律名・・・「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律

公布日・・・平成16年6月2日
※もうすでに公布されていることに注目。つまり、「もう、こういう法律はできました。日本国民はみんなこれを守らなくちゃいけないんだよ。だからよく読んで、理解しておいてね。」
と国が発表したわけです。

施行予定・・・平成17年4月
※法律は公布して、国民が理解して守る努力を決心する期間があります。で、実際にその法律が使われるようになるスタートが施行日です。ここまでに私たち飼育者は法律を守る準備や手続きをします。

・内容
ここでは、特に私たち飼育者に影響がある部分だけをピックアップしてみましょう。ちょっと難しいかもしれませんが、頑張って読んで下さい。
(1)「特定外来生物
今回の法律は、わかりやすく言うと「『特定外来生物』に指定された種類は飼育・輸入・譲渡・遺棄が禁止」ということです。
じゃ、特定外来生物とは?
要するに、人の管理下から放たれた場合
・生態系に影響を及ぼす
・人に害を与える
・農林水産業に被害を与える

生物および、そういう「おそれ」がある生物です。
問題は、どんな種類が「特定外来生物」としてさまざまな規制を受けるのか、というと、それをこれから(2004年8月現在)、専門家が話し合いながら決めていくのです。
問題は、私たちが飼育している両爬たちが指定されてしまうかどうかであります。それに関しては、後述します。

(2)禁止事項
この法律のメインは「特定外来生物」の取り扱いであります。前述したように、その「飼養・輸入・譲渡・遺棄」が「禁止」されます。
「飼養」は保管・運搬が含まれますし、「特定外来生物」は「卵」なども含まれますので、持っているだけ、あるいは繁殖も禁止になります。

(3)罰則事項
今回、もっとも強烈なのがこの罰則です。
違反した内容によって異なりますが、この法律に違反した場合、個人の場合で最高3年以下の懲役、300万円以下の罰金、法人の場合は最高1億円以下の罰金であります。
また、特定外来生物の被害を防止するために国が実施した駆除等をした場合、それにかかった費用は原因となった行為をした者に負担させられることがあります。

ですから、わかりやすくまとめると...
もしも自分の飼育している、あるいは飼育したいと思っている生き物が『特定外来生物』に指定されたら、完全にその生き物の飼育はあきらめなくてはいけない。もしもそれを守らなかった場合は、とても重い刑罰を科される」ことになるのです。

特定外来生物と未判定外来生物

さて、それでは問題の「特定外来生物」について考えてみましょう。
前述したように、現在(2004年8月)の段階では、どの種が特定外来生物になるかは決まっていません。
基本的には、おそらくこれは私見ですが、これまでに「日本で帰化してしまい、明らかな生態系への被害の実績があった種類」が、指定されると思われます。

また今回の法律には「特定外来生物」の他に「未判定外来生物」という言葉も使われています。
これはわかりやすく言うと「特定外来生物に似ているため、生態系へ被害を及ぼす可能性がある生き物」のことです。例えば憶測の範囲ですが「特定外来生物」の「亜種」関係にある生き物などが対象になるかもしれません。とにかく何にしても「未判定外来生物」ということになれば、「特定外来生物」と同じような扱いになります。

ちょっと話はそれますが、先日、私は本業の方で「学校の危機管理」に関しての仕事に携わりました。その中で強く思ったことは
「『危機管理』というのは、常に『最悪のケース』を意識しながら考えて行かなくてはいけない」
ということでした。

まさに今回の法律は、日本の自然環境の「危機管理」に他ならないわけです。ですから、やはりこちらも「最悪のケース」を意識していく必要があります。
と、考えると私たちにとって事態はさらに深刻になります。
例えば、どんなに多くの良識ある両爬飼育者たちが
「私たちは絶対に、飼育している生き物を逃がして帰化させてしまうようなことはしない」
と言っても
「いいや、万一にも大地震が起きてケージが壊れて逃げ出してしまったら?」
とか。
あるいは
「熱帯の生き物なんだから、東京の冬は越せないので冬になったら死んでしまうので帰化はない」
と言っても
「いいや、地球の温暖化は進んでいるし、ヒートアイランド現象で冬も大丈夫のはず」
などと言われてしまうかもしれないわけです。もちろん、どちらの主張に対しても科学的根拠が示される必要があるのですが。

こうして考えれば、日本には北海道から沖縄まで、寒いところから暑いところまであるわけで、世界中のありとあらゆる両爬たちは帰化の可能性があるために「特定外来生物」または「未判定外来生物」として指定をされても不思議ではないわけです。

また、来年の法律施行以降も「未判定外来生物」として扱われる種類は増え続けるでしょうし、あるいは「特定外来生物」も追加されて、多くの両爬が規制の対象になる可能性もあると考えられます。

さらに両爬だけではなく、餌動物に関しても適用される可能性があることも考える必要があります。現にもはや両爬の餌としてなくてはならないヨーロッパイエコオロギは世界中で帰化していることが知られていますし、デュビアなんかも指定されても何ら不思議はありません。
ヨーロッパイエコオロギが使えなくなったらどうしますか!?

マジメな話で、今回の法律によって両爬飼育から足を洗う人たちっていると思います。
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