ご存じの方も多いと思いますが、ついにオビトカゲモドキが天然記念物に指定されました。今回は、この話題を解説しましょう。
▼県境の奇跡・オビトカゲモドキ
あまり関心がない方のために、少しオビトカゲモドキに関して解説しましょう。
平成11年10月撮影 |
オビトカゲモドキGoniurosauras kuroiwae splendens
オビトカゲモドキは、人気のレオパ(ヒョウモントカゲモドキ)と同じトカゲモドキ科のヤモリです。日本にもトカゲモドキは分布しており、現在は以下の5亜種に分類されています。
クロイワトカゲモドキG.k.kuroiwae・・・沖縄本島・瀬底島
マダラトカゲモドキG.k.orientalis・・・伊江島・渡嘉敷島・渡名喜島・阿嘉島
クメトカゲモドキG.k.yamashinae・・・久米島
イヘヤトカゲモドキG.k.toyamai・・・伊平屋島
オビトカゲモドキG.k.splendens・・・徳之島
分布を見てわかる通り、どの亜種も大変限られた分布であり、その絶滅が危惧されています。例えば、伊平屋島などは周囲30キロあまりの小さな島で、イヘヤトカゲモドキは世界中でこの小さな島の、ごく限られた場所にしか生息していません。
もちろん、どの亜種も日本版レッドデータブック(RDB)に掲載されており、イヘヤにいたっては、もっとも絶滅が危惧されるランク絶滅危惧IA類になっています。
ところがRDBに掲載されても、法的な拘束力はありません。そこで、沖縄県ではクロイワトカゲモドキ全亜種を沖縄県文化財保護条例により昭和53年に県指定天然記念物指定されたわけです。この条例に違反した場合は5万円以下の罰金等の罰則規定もあります。
南西諸島の地理にあまり詳しくない方はわかりにくいと思いますが、実はオビトカゲモドキが分布している徳之島だけが沖縄県ではなく鹿児島県の島なのです。つまり、クロイワ4亜種のうち、オビだけは今まで保護の対象になっていなかったために、採集・飼育が自由だったのです。ですから、数多くのオビトカゲモドキが採集され、現在もなお(もちろん国産種フリークである私も含めて)飼育されています。
しかし残念ながら、オビトカゲモドキが鹿児島県に分布していることは、彼らにとっての不幸だったようです。開発による生息地の減少、そして私たち飼育者に起因する野性個体の夥しい流通が彼らの減少を招いてしまいました。
またオビと同じ状況がイシカワガエルとイボイモリにもありました。つまり沖縄県の条例では天然記念物であるが、鹿児島県の個体は自由に採集・飼育できるという状況です。
イシカワガエル(奄美大島産)平成14年12月21日撮影 写真提供:佐久間 聡 |
そうした背景の中、ようやく鹿児島県が条例の制定に動き出したわけです。