毎年、5月くらいになると決まって、ある生き物の飼育に関する問い合わせが私のところにやってきます。
その生き物とは...「ニホンカナヘビ」です。今回は、私たちにもっとも身近な爬虫類である「ニホンカナヘビ」の飼育を2回に分けてCloseUpします。

▼どんな生き物?

「カナヘビ」はれっきとした、手足がちゃんとあるトカゲの仲間です。家の周りで天気の良い日に気持ちよさそうに日光浴をしている尻尾の長いほっそりとした茶色いとかげです。関東地方では「とかげ」というと「カナヘビ」である場合が多いです。
昼行性であり、小さな虫などを食べている、とてもおとなしい生き物です。また、危険を感じると尻尾を切る(自切)ことも有名です。
春になると冬眠から目覚めて、繁殖行動をするため、その季節にはよく目にします。

大きさも手頃で、おとなしく、よく人にも馴れるため、飼育がしたくなってしまいます。何よりカワイイですし。が、ちょっと待ってください!!

▼「生かしておく」のは簡単だけど...
ニホンカナヘビの飼育は
短期間、生かしておくのは簡単。天寿を全うさせるのは至難の業。
です。

飼育をして観察をすること自体は、一般的な昼行性トカゲを飼育する方法で構いません。具体的には次回説明しますが、春に成体を捕まえて、適切に飼育をすれば初夏には産卵をして、晩夏にはかわいいベビーを得ることができるでしょう。この辺は外国産種と異なり国産種ですから気候にあわせて飼育すれば自然の営みを見せてくれます。

また、この間に大切に飼うと人によく馴れるようにもなり「手乗り」にまでする事も可能でしょう。そういう意味ではとても飼いやすく、ペットに向いている爬虫類です。

ただし、その後にある「」と「」を越えなければ彼らに来年はありません。彼らは一年間だけで生涯を終えるわけではありません。彼らの寿命をご存じでしょうか?あんなに小さな体なのに7年(!)、私が聞いた中で最も長いのは9年も生きたのです!
なのに(もちろん私も経験したのですが)毎年、夏に日光浴中に死なせたり、冬眠中に死なせたり、冬に保温飼育中に死なせたり、冬眠明けに死なせたり...

人間だってそうでしょ?天寿を全うするには普段の食生活や休養をとることに気を遣わなければいけませんよね?ましてやカナヘビは囚われの身です。エサや飼育環境に十分に気を遣いながら飼育をしなくてはいけません。

▼最も身近で、最も分かっていないトカゲ
ところが残念ながら、彼らが野外でどんな生活を送っているのか、よくわかっていません。
もちろん多くの方が飼育や野外での観察を続けることによっていろいろわかってきています。でも、それが飼育となるとわからないことだらけです。でも、だからと言って「飼うな」とも言いません。いいえ、むしろ「飼ってみよう」と勧めたいです。身近な生き物の魅力に気づくことは、そのまま自然保護の啓蒙にもつながりますし、カナヘビの飼育経験は多くのトカゲ飼育の参考にもなると言われていますから。

▼まずは一夏だけのお付き合いから
ですから、私はカナヘビ飼育は「秋になったら自然に帰して、来年の春に逢おう」と言う飼育スタイルを勧めています。
なぜ?
私を含めて「一冬越えて死なせて、また次を捕まえて、また冬越えて死なせて...」と消費的な飼育を止めたいのです。命あるものですから。

※この枠の中は2007年7月に書き足しました。

ただし!!逃がす時は、必ず「捕まえた場所」に逃がして下さい!

そもそも動物愛護法では、飼育している個体の遺棄は罰せられる対象の行為です。しかしながら動物愛護法の改訂に先だって行われた検討委員会では「遺棄」は「危険な場所に移置させる行為」や「危険な場所に遺留して立ち去る行為(置き去り)」、または「他人に危害や迷惑を与えるおそれのある場所に放つこと」と想定されています。カナヘビを、元にいた場所に逃がすことはその範囲にはないと私は考えています。

ですからショップで購入したり、私の大嫌いなカナヘビのネットオークションなどで購入したりした場合は逃がすことは許されません。残念ですが、飼育に長けていない方の場合は、自分の手でカナヘビを殺してしまうという結末を見てしまうことでしょう。

そうならないためには、国産種を産地の表示もしないで販売している無責任なショップや、ましてやネットオークションやらでカナヘビを購入しないことです。

私がここに書いてみなさんにわかって欲しいことは「庭で見かけたかわいらしい茶色くて、尻尾が長いとかげを捕まえて飼ってみたいんだが」とか「子どもが近所の草むらで捕まえたカナヘビを飼うにはどうすればいい?」という場合に、「カナヘビは冬を越させて長く飼育するのはとても難しいことなので夏の間だけ仲良くなって、観察して、冬に入る前に元にいた場所に放してあげて下さい」ということです。

なお、これは「カナヘビ」だけに当てはめて考えて欲しいと思います。なぜなら、他の身近な両爬は、もっと簡単に冬を越せるし、あるいは冬を越す前に別の原因で死なせてしまうからです。

カナヘビだけは特別なんです。



すべての生き物の中で最も身近でありながら、最も、適切な飼育方法がわかっていない」それがニホンカナヘビなのです。

さて「あんなに身近にたくさんいるのに、そんなに飼育が難しいなんて...」とビビってしまった方も多いと思いますが、せっかくこんなにステキな爬虫類が身近にいるのですから、ちょっと頑張って真剣に飼ってみましょうよ。きっと、新しい発見があるはずです。

では、いよいよ「カナヘビの飼い方」をどうぞ↓
カナヘビの飼い方本編

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。