猫の色、柄、模様の種類を理解しよう
猫の色柄の呼び方は様々ありますが、ここではTICA(The International Cat Association) というアメリカの血統団体がキャットショーで猫を区分するときに使用する色やパターンのカテゴリーをご紹介します。猫種図鑑のカラーやパターンを読み取るときの参考にしてください。遺伝子、顔、毛、柄、ボディタイプなどの用語も一部解説します。TICAは猫の毛色を色素の遺伝に基づき、4つのカテゴリーと8つのカラー・ディビジョンの掛け合わせによって、32種類に分類しています。
カテゴリー |
カテゴリー(CATEGORY)
■トラディショナル・カラー・カテゴリー(Traditional Category)目の色は、ブラウン(ブロンズ)カッパー、ゴールド、グリーンまたはヘーゼル、白猫においてはアクア、ブルーまたはオッドアイ。
■セピア・カラー・カテゴリー(Sepia Category)
目の色は、ゴールドかグリーン・ゴールド。
■ミンク・カラー・カテゴリー(Mink Category)
目の色は、ブルー・グリーンからグリーン・ブルー。
■ポインテッド・カラー・カテゴリー(Pointed Category)
目の色はブルー。
ディビジョン |
ディビジョン(DIVISION)
カテゴリーの中には、それぞれ以下の8つのディビジョンがあります。1.ソリッド・ディビジョン(Solid Division)
ノン・アグーティ遺伝子を持った柄のない単色。
2.トータシェル・ディビジョン(Tortoiseshell Division)
略してトーティということが多い。黒い毛(ユーメラニン色素)と赤い毛(フェオメラニン色素)、または、それぞれのダイリュート・カラーの2色が混ざったベッコウのような色柄。和猫ではサビと呼ばれる。ノン・アグーティ。
タビー模様の猫の顔に表れる特徴 |
アグーティ遺伝子を持つ。縞模様として見えるタビー・パターンと縞と縞の間にあるティッキングになっているアグーティの部分からなる。タビーには下記のような代表的なパターンがあるが、基本的にどのパターンにも額にM字のような模様、クレオパトラ・ライン(目尻から頬にかけて入っている縞)、顎(下唇の下)が白または淡いクリーム色になる。
- ティックド・タビー(Ticked Tabbies)(アグーティ・タビーまたはアビシニアン・タビーともいう)
身体にはほとんどタビー・マーキングがなく、様々なカラーでティッキングされている。 - マッカレル・タビー(Mackerel Tabby)
魚のサバのような縞模様のタビー。 - クラッシック・タビー(Classic Tabby)
上から見ると肩に蝶が羽を広げたように見えるバタフライ・マーク、身体の横にブルズ・アイと呼ばれる洋弓の的のような模様がある。 - マーブルド・タビー(Marbled Tabby)
ベンガルにみられるタビー・パターン。大理石のような柄。 - スポッテッド・タビー(Spotted Tabby)
斑点型のタビー。
代表的なタビー・パターン |
4.シルバー/スモーク・ディビジョン(Silver and/or Smoke Division)
抑制遺伝子の働きで毛の根本が白い。白の部分の面積が一番少ないものがスモークで、白い部分が多くなるにつれシェーデッド、チンチラになる。
1.ソリッド・ディビジョン 2.トータシェル・ディビジョン 3.タビー・ディビジョン 4.シルバー/スモーク・ディビジョン |
5.ソリッド with ホワイト・ディビジョン(Solid with White Division)
ソリッドに白が入ったもの。
6.トーティ with ホワイト・ディビジョン(Tortie with White Division)
トータシェルに白が入ったもの。キャリコともいう。和猫では三毛と呼ばれる。
7.タビー with ホワイト・ディビジョン(Tabby with White Division)
タビーに白が入ったもの。
8.シルバー/スモーク with ホワイト・ディビジョン(Silver and/or Smoke with White Division)
シルバー/スモークに白が入ったもの。
5.ソリッド with ホワイト・ディビジョン 6.トーティ with ホワイト・ディビジョン 7.タビー with ホワイト・ディビジョン 8.シルバー/スモーク with ホワイト・ディビジョン |
毛色の遺伝用語
- 優性遺伝
対立遺伝子を持つ両親から生まれた1代目の子猫に現れる形質遺伝子。 - 劣性遺伝
対立遺伝子を持つ両親から生まれた1代目の子猫に現れない形質遺伝。例えばブルー・カラーは劣性遺伝なので、両親ともにブルー・カラーの遺伝子を持っていないとブルーの子猫は生まれない。 - 性染色体
猫38本の染色体の中の性を決定するものを性染色体という。メスはXX、オスはXYと表される。X染色体には、オレンジ(レッド)の遺伝子があり、伴性遺伝子である。 - フェオメラニン
レッドやクリームのもとになる色素。伴性遺伝子。 - ユーメラニン
黒を基調とした色素でブラック、チョコレート、シナモン、ブルー。ライラック、フォーンの元になる色素。 - アグーティ
タビー・パターンを発現させる。1本の毛をいくつかの色帯(バンド)に分ける遺伝子。 - ノン・アグーティ
イエロー・バンディング(黄色の色帯)の形成を不活性化する遺伝子で、毛色はソリッド(単色)になる。ユーメラニンとのみ働くので、レッドには現れないため、レッド・ソリッドなどには縞模様が出る。 - ルーファス・ポリジーン
すべてのタビーが持っている。色彩の乏しい黄色やオレンジを温かみのあるアプリコットやレッドに変えるポリジーン。 - ポリジーン
数多く集まると表現型として現れる遺伝子のこと。 - レックス遺伝子
ガード・ヘアがなく毛がウェーブしている。コーニッシュ・レックス、デボン・レックス、セルカーク・レックスがこの遺伝子を持っている。
毛の用語
- アンダー・コート
長いガード・ヘアの下にある短いウール状の毛で、オーン・ヘアとダウン・ヘアがある。 - オーン・ヘアー
2種類のアンダー・コートのうちの粗い方、ダウン・ヘアとともに二次毛を形成する。 - ダウン・ヘア
アンダー・コートの中で短く柔らかく縮れた毛のこと。綿毛ともいう。 - ガード・ヘアー
上毛、一番外側の被毛を形成している長く粗い毛。オーバー・コート、保護毛ともいう。 - ダブル・コート
厚いアンダー・コートの上に長く厚いオーバー・コートがあり、オーン・ヘアはガード・ヘアと同じ長さ。ロシアン・ブルーに代表されるコート。 - ティッキング
アグーティ遺伝子による1本の毛の中に現れる帯状の模様。 - ティッピング
毛の先端だけに色が入ること。ティッピングの入り方が一番少ないとチンチラ、増えていくとシェーデッド、スモークとなる。
毛色の用語
- ダイリュート・カラー
基本色が薄められた色のこと。ブラックはブルーに、レッドはクリームに、チョコレートはライラックに、シナモンはフォーンなどになる。 - トービィ
トーティ(赤と黒など)の2色で、黒の部分にタビー模様があるもの。パッチド・タビーともいう。 - リンクス・ポイント
鼻を中心とした頭部、耳、四肢、しっぽに色が濃く出るポイント。カラーの部分にタビー・マーキングがある猫。タビー・ポイントともいう。 - ミテッド
前肢、後脚など限られた部分に白斑遺伝子によるホワイトが入っている。 - バイ・カラー
頭部、背、尾に色が付き四肢や下腹は白。顔がハチワレ(ブレーズ)になることが多い。 - ハーレクイン
バイ・カラーより白い部分が多く、バン・パターンより色の部分が多い。 - バン
ターキッシュ・バンに代表されるように身体はほとんど白で色がつくのは頭部としっぽだけ。 - チンチラ
毛の先端部分だけに色素が出ていて、それ以外は白く。 - シェーデッド
1本の毛の先端から約1/3~1/2に色素が強く出ていて、そこから地肌までの毛は白または単色。 - スモーク
根本は単色か白で毛の1/2~3/4に色素が強く出ている。ノン・アグーティ遺伝子。 - シナモン
ユーメラニン系の色素でできている毛の色で、シナモン・スティックに似た赤見のある茶色。 - ルディ
アビシニアンとソマリにみられるブラウン・アグーティ・タビーのこと。毛の先端が一番濃くブラックかダーク・ブラウン、皮膚に近い部分はオレンジ・ブラウンで、1本の毛の中に2~3つのバンドでティッキングされている。 - フォーン
シナモンが希釈(ダイリュート)されたカラー。ミルク・コーヒーのような優しい黄褐色。 - セピア
バーミーズ・カラーとも呼ばれ、シール・セピア(セーブル)、ブルー・セピア、チョコレート・セピア、シナモン・セピア、ライラック・セピア、フォーン・セピア、レッド・セピア、クリーム・セピアなどの色がある。 - セーブル
バーミーズのカラーの最も濃い色で、シール・セピアともいう。 - ミンク
トンキニーズにみられるカラーでセピアより薄く、ポインテッドのボディ・カラーより濃い。ボディとポイントの色には明らかなコントラストが求められる。シール(ナチュラル)・ミンク、チョコレート(シャンパン)・ミンク、シナモン・ミンク、ブルー・ミンク、ライラック(プラチナ)・ミンク、フォーン・ミンク、レッド・ミンク、クリーム・ミンクなど。 - シャンパン
トンキニーズのカラーのひとつで、ボディは黄褐色から温かみのあるミルク・チョコレート色、耳と鼻先はそれより濃いめの色になる。
ブリーディングの用語
- ドメスティック・キャット
イエネコのこと。元々その国にいた土着の猫を表す意味でも使われる。 - ナチュラル・ブリード
元々住み着いている地域で自然にタイプが固定・形成されてきた品種。ノルウェイジャン・フォレスト・キャット、ターキッシュ・バン、サイベリアンなど。 - アウトクロス
異なった品種を交配すること。
猫の顔部分の用語
- ウィスカー・パット
ヒゲが生えている部分。 - マズル
顎、口、鼻を含む猫の口吻。 - ストップ
前頭部とマズルの間の鼻筋にあるくぼみ。 - ブレイク
ストップより深く極端なくぼみ。 - ブレイズ
和猫ではハチワレと呼ばれる鼻・口のまわりから額にかけて白が入っている部分。 - ローマン・ノーズ
バーマンに代表されるこぶやアーチ状に盛り上がっている鼻。
猫の体型タイプ
- オリエンタル
シャム猫に代表されるような、ほっそりとした円筒形の胴、頭は長めの三角形、四肢は細く、長いムチのようなしっぽ。 - フォーリン
アビシニアンに代表される長いボディと釣り合いの取れた長い脚、先細りの長いしっぽ。 - セミ・フォーリン
エジプシャン・マウに代表されるやや長めの胴で中くらいの骨格を持ち、しっぽは長すぎずやや先細り。 - セミ・コビー
アメリカン・ショートヘアーなどに代表されるペルシャほど詰まった体型でなく、胴、四肢、脚はやや長め。 - コビー
マンクス/キムリック、ペルシャなどに代表される骨格が太く胴が短く丸みのある足先、頭部も丸く大きめで、しっぽの先も丸め。 - ロング&サブスタンシャル
メインクーンやベンガルに代表される大型で筋肉質、重量感のある骨格、胴は長めでしっぽも比較的長め。
キャット・ショーに猫を出陳したり、ブリーディングをしていれば感覚的に理解している用語ですが、馴染みのない方にはイメージが伝わりにくいかも知れません。わたしは1996年からTICAのジャッジを務めていますので、今回はTICAのカラーやパターンの分類に基づいて紹介しました。ここに掲載した内容はすべて2010年3月現在のものです。
※TICAでは現在ブラウン・タビーやシルバー・タビーはマーキングのカラーを元にブラック(ブラウン)・タビー、ブラック・シルバー・タビーと表記していますが、猫種図鑑では被毛カラーのイメージが紛らわしくなるためブラックを省いて掲載しました。
■参考文献:Uniform Color Descriptions and Glossary of Terms
The International Cat Association, Inc.
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