ケース4.不幸な加害者をつくる可能性もあります
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深夜の夜間専門の動物救急病院での出来事です。
その夜、先生に用事があった私の友人は、待合室で診察が終わるのを待っていました。すると、診察室から、先生のぼそぼそ話す声が聞こえてきたそうです。
「肋骨が折れてるし、その他にも内臓にダメージがあるかもしれないし。。。この子は多分かなりの高齢ですよ。17か18か、15歳は超えていると思います。このまま治ってもそんなに長くはいられないでしょう。今は大変な怪我をしているし。もし治ったとしても高齢だから、これから飼い主を見つけることは大変だと思いますよ。」
ネコをつれてきたのは若い男性らしいですが、治療中のネコの飼い主ではなさそうです。
「点滴をしながら朝まで様子をみることはできますが、ここは夜間専門の病院なので…お昼は近くの病院を探して診てもらわなければなりませんが、どうされますか?」
「…」
「連れて帰れる?」
「…何とかします。夜、自宅で仕事をしているので後で迎えに来ます。」
「預かってて、もし、苦しむようなら安楽死という選択をしたほうがいい場合も出てくると思います。何かあれば連絡しますね。」
「…できる限りのことをお願いします。…お支払いは?」
「後で、お迎えのときでいいですよ。」
うなだれて帰って行ったのは若いまじめそうな青年でした。
青年は飛び出してきたネコを避けきれず車でネコをはねてしまい、急いでこの病院を探し連れ込んだそうです。
事故を起こしてしまったのはもちろん彼の不注意かもしれませんが、ネコの交通事故は日常茶飯事です。
何かの物音に驚いて、何かを追っかけて、ネコは車が来ることなどお構いなしに道を横切ります。
ネコは自分に向かってくる車を見ると固まる!
私自身も、一つ間違ったらネコをはねてしまったかも?!という体験があります。
細い路地からネコがひょっこり出てきて、さっさと走り抜けるかと思っていたら、突然ライトを見つめて道路の真ん中に仁王立ちになって固まってしまったのです。
ネコが出てきたことがわかってスピードを落としていたので、私は止まることができましたが、もしネコがいることに気がつかなければ、そのまま…悲劇になったかも知れません。
それからは、前方の道路を横切ろうとしたネコがいたら、車を止めて先にネコを渡らせることにしています。
二度と会えないかもしれない覚悟…
早朝国道を走っていると、路肩にうち捨てられたネコの亡骸を見かけることがあります。
ネコをはねてしまっても、そのまま行ってしまう車もあるでしょうが、この青年のように大きな責任を感じて、ネコを助けるために手を尽くす人もいます。
ノラネコの平均寿命は4~5歳なので、ここまで高齢ということはどこかで飼われていたネコでしょう。
そのネコが外出自由だったのか、それとも逃げ出したのかはわかりませんが、次の日の朝になって飼い主は帰ってこないネコの心配をするでしょう。
ネコにも飼い主にとっても、変わらぬ日常が突然終わりを告げ、ネコは飼い主と離ればなれになってしまい、命に関わる大けがをしてしまいました。
もし次の日に、飼い主が手当たり次第に動物病院に電話をかけて、この事故のことを知ることができれば、…もし、その時まだそのネコの命があれば、再会できるかもしれませんが、その可能性は非常に低いでしょう。
ネコを外に出すということは、もしかしたらそのまま二度と会えなくなるかもしれない、ということなのです。
そして、誰かがそのネコを外に出さなければ、『いのちを傷つけてしまった』という辛い思いや、大けがをしたネコを引き受ける為の生活のやりくりなどの負担を負わずに済んだ青年がいたかもしれません。
はねられたネコには責任がありません。飛び出すのはネコの本能だからです。
一番大きな責任者、本当の意味での加害者を考えるとき、ネコをどう飼えばよいのか、法律でも定められていることを、今一度考えてほしいと思います。
次のページは、法律で定められた動物の飼い方についてです!