今回は、鼻で嗅いで感じるものとは別の器官を使って味わう=感じるフェロモンの話と、ネコの鼻に関係する病気についてです。
フェロモン
フェロモンをヤコブセン器官で味わって分析中~~
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フェロモンという言葉の語源はギリシャ語の「pherein」=フェライン(運ぶ)と英語の「hormone」=ホルマン(興奮させる・刺激する)を合成して作られた言葉です。
1595年、メスの蛾が分泌する信号にオスの蛾が惹き寄せられて集まる現象が実証されてつけられました。
フェロモンは動物の体内で作られた有機化合物で、体外にはごくわずかな量だけが放出されます。放出されたフェロモンは、同種の個体間に特有の行動や生理的な反応(興奮や刺激)を引き起こす(運ぶ)媒体です。
先に書いたようにメスの蛾がオスの蛾を引き寄せるなどで、フェロモンは特に異性間の間のものと思われがちですが、
性フェロモン=異性を惹き寄せる:以外にも
集合フェロモン=仲間を集める
警戒フェロモン=危険を知らせる
道標フェロモン=自分が通った道に印を付けて餌などの場所を知らせる
階級分化フェロモン=階級を決める
認識フェロモン=仲間かどうかを判断する
などがあります。
特殊なニオイの反応する別の器官
このフェロモンを感じるのは、食べ物や外界の様々なニオイを嗅ぎ分ける嗅細胞とは異なる、ヤコブセン器官=鋤鼻(じょうび)器官と呼ばれる組織です。
ヤコブセン器官は嗅覚と味覚の中間に位置し、副嗅覚系の鼻中隔=上唇と上の歯茎の間にあります。
ほ乳類ではネコの他には馬にも存在し、意外なところでは爬虫類のガラガラヘビなどがこのヤコブセン器官を持っています。ヒトのヤコブセン器官は退化してしまった、といわれていますが、まだはっきり解明されていません。
このヤコブセン器官=鋤鼻器官(じょうびきかん)で、主にフェロモン=興奮/刺激を運ぶニオイをキャッチします。
もし性フェロモンをキャッチすると、鋤鼻神経を経由して副嗅球~扁桃体(大脳辺縁系)などから自律神経の虫垂である視床下部に伝わり、性腺ホルモンが分泌を促され、発情などの性行動が起こると考えられています。
一心に臭いをかいでいたネコが突然口を半開きにゆがめ、半分目を閉じ、惚けたような恍惚とした表情で固まっているところを見たことがありませんか?
これは「フレーメン」と呼ばれる現象で、この時ネコは嗅いだものを舌で舐め取り、上あごにあるヤコブセン器官に運び、フェロモンの情報を味わい分析しています。
ネコは、ここから得られる同種の自分以外のネコについての情報を非常に大切にします。
例えば、相手のネコが自分の知っているネコか?性別は?今どんな状態なのか?
などなどです。
この情報は視覚や聴覚などと違い、ダイレクトに脳に届きます。
性成熟を迎えた後のネコでないと、フレーメン反応を起こさないと書かれている本もありますが、生後3ヶ月の子猫でも、フェロモンをキャッチするとフレーメンを起こします。
また、ネコに麻薬的効果をもたらす「マタタビ」や「キャットニップ」による恍惚感もこのヤコブセン気管で感じているようです。