もし視覚を失ったり、聴覚を失ったネコがいても、きちんとケアできる飼い主と家の中の生活であれば、ネコは問題なく生活ができるでしょう。

しかし、もしネコが嗅覚を失ってしまったら。。。
嗅覚は、ネコの死活問題に関係してくる非常に重要な器官です。
今回の『猫が住んでいる世界』は、嗅覚についてです。

ネコにとって嗅覚が正常に働くことがどれだけ重要か

お鼻が元気だと~~
食欲も進みます!

鼻は、空気を取り入れ炭酸ガスを排出する呼吸器です。
鼻腔は湿り気を帯びることで、吸い込んだ乾燥した空気に湿気を与え、また一緒に吸い込んでしまうホコリや細菌・ウイルスなどを気管支以下に到達させないよう働いています。

ネコ風邪、と呼ばれるようなウイルスや細菌が原因で呼吸器系の感染症を起こすと、最初に鼻水・目やにが出始めます。悪化してくると、鼻水や膿汁は乾燥して鼻を詰まらせ、ネコは鼻で呼吸ができなくなります。こうなると、ネコの鼻は食べ物のニオイを感じることができないので、食欲が減退してしまいます。
食べたいそぶりは見せても、お皿の食餌にちょっと鼻をつけて、少量舐めるだけ…いつものようにバクバクと食べられなくなります。

これは、ネコがニオイで食べてよいもの、よくないものを判断する動物だからです。
ネコは窒素化合物を含むニオイに敏感に反応し、アンモニア臭がする腐った餌を嗅ぎ分ける名人です。
ネコの身体は元々腎臓・肝臓に多大な負担をかける肉体構造になっているので、毒素を分解する仕組みがあまり効率よく作られていません。
ですからネコは脂肪の中に含まれるかすかなニオイ=自分の食べ物として適しているかどうか=を敏感に感知し、鮮度を判断します。

ライオンは例外で、腐敗した肉も食べます。

もし、自分が食べても安全な食餌かどうか判断できなくなったら=もしネコの鼻が利かなくなったら=、ネコは腐敗した毒素の多い食事を食べて体調を崩すかもしれません。
ですから、ネコの本能はニオイが感じられなくなった時点で、食べ物に口を付けることをためらわせてしまいます。

ネコの鼻が利かなくなって食欲が落ちた場合は、食餌を温める、ニオイの強い鰹節などをトッピングする、など少しでも鼻を刺激できるような工夫をしてあげてください。

どうやってニオイをニオイとして感じるのか?

私たちが感じるニオイの元は、空気中に漂う様々な気体状の化学物質であるニオイの分子です。
匂いの分子は約40万種類以上あって、人間が嗅ぎ分けられるニオイは約3000~10000種類といわれています。

ニオイは、

1.ニオイの分子が鼻腔の上の方の嗅上皮と呼ばれる粘膜に達し
2.そのニオイの分子がニオイを感じる嗅細胞(直径40-50ミクロン)の先端に生えている10-30本の嗅繊毛(100-150ミクロン)という線毛のレセプター(受容器)にきっちりはまり込む(嗅繊毛はそれぞれ1本ずつ感じるニオイが違い、その嗅繊毛のレセプターにきちんとはまり込む=キャッチできる匂いの分子だけに反応する)と
3.嗅細胞が鼻粘膜のすぐ上の方にある嗅球に「なにかのニオイ」が届いたという電気信号を発信
4.レセプターごとに合致したニオイの情報はそれぞれ分類整理されて嗅球の中の嗅糸球体に入り込み
5.扁桃腺や一部は視床、視床下部を経て、大脳皮質の嗅覚野へ進み

何のニオイなのかが認識されます。

一部のニオイは、記憶中枢に密接な関わりを持つ大脳辺縁系経由で直接視覚野に達するので、記憶の中にあるニオイを嗅ぐことで、そのときの体験や情景まで思い出した経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

ネコもヒトと同じようにニオイを感じる仕組みを持っているので、あるニオイを嗅ぐことでそのときの恐怖を思い出したり、とても幸せな感触を思い出したりできるのではないかと思います。

嗅覚野とは、ニオイを認識する場所です。
嗅覚野は脂肪質の物質を含んだ細胞で黄色く湿っています。この嗅覚野の黄色が濃いほど嗅覚が発達しているといわれています。
人間は淡い黄色で、ネコの嗅覚野はマスタードブラウン色です。
鋭い嗅覚を持つ動物はたいていが四つ足で、地面から近い位置に頭があります。

ネコの身体のバランスの中で、頭部は小さめにできています。
顔の中のバランスで目は非常に大きいですが、鼻は小さめです。
人間の鼻の穴より数段小さなネコの鼻が人間の数倍嗅覚がよいのは、鼻腔に貝の形のようなデコボコがあり、そのため鼻の内部の表面積が大きいからです。

人間の嗅上皮の面積は約20センチ平方メートル、嗅細胞は約500万個、
嗅覚が非常に発達している犬のシェパードの嗅上皮面積は約170万センチ平方メートル、嗅細胞は約2億2千個!
そしてネコの場合は嗅上皮が約20~40センチ平方メートルで、嗅細胞数は約1千万個あるそうです。

一番最初に働き出すのは嗅覚

生まれたての子猫の最初に働き出す器官は鼻=嗅覚です。
通常子猫は産み落とされて早ければ数分で、遅くとも1時間以内に母ネコのオッパイを吸いはじめます。
このとき、子猫は母ネコの乳首のニオイを記憶し、またその乳首に自分のニオイを付けます。これにより、ほとんどの子猫は自分専用の乳首を持つことができます。

人の側で出産した母ネコは餌の心配(狩り)をする必要がありませんが、自分で獲物を調達しなければならないお母さんネコは巣穴にいる時間も限られます。子猫たちに自分専用の乳首があれば、他の子猫と競争することなく、素早くオッパイにありつける、といった本能の名残でしょう。

ネコのことが書かれた本の中には、幼いうちは他の母ネコの乳首を嫌がる、他の母ネコは別の腹の子猫を拒否する、と書かれたものが多いようですが、我が家のような環境では、同じ時期に出産した母ネコ同士が共同で子育てをしたり、または子猫をトレードしあったり、という姿が日常的に見られます。
また、子猫も一応自分専用の乳首が決まっていますが、そこのオッパイの出が悪いと他の子猫の乳首を争奪にいきます。

家庭ネコとしての穏やかな生活を長くおくってきたネコたちには、少しずつそのような本能が薄れてきているのかもしれません。
または、後に書くような共同のコミューンとしてのニオイの認識ができあがっている関係の中で、安心しきって子猫のトレードを行っているのかもしれません。


自分専用のオッパイがあると安心♪




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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。