猫が好きな人は大きな猫も小さな猫も、猫の種類や色柄や毛の長さなどにこだわらず「猫であればまるごと好き」という人が多いようです。でも、そんな中でも子猫のかわいらしさは格別。子猫の写真や動画を見ているだけで頬が緩み、強面の男性が優しい笑顔と猫なで声に変身して驚くことも。

もしこの子猫が自分の愛猫の子供だったらもっと可愛いだろうな、愛猫の子猫を見てみたいな~と想像したことはありませんか。

しかし、現実的には、子猫を生ませるためにはオスメス2頭の猫を飼育する必要があるし、平均3~5頭生まれる子猫をすべて家庭内で飼育できるかなど、様々な問題があります。例えば純血種を繁殖し、販売するのであれば、動物取扱業の資格などが必要となりますし、設備や環境を整えたりと、一般家庭での猫の繁殖は非常に敷居が高いです。

猫は安産の守り神とされている犬などより安産で、ねずみ算といわれるネズミよりも繁殖能力に長けた動物です。それでも、妊娠・出産で、体調が悪くなったり、手当てが遅れると命を落とすこともあります。

もし、本気で猫の繁殖を考えるのであれば、猫を飼い始める前から準備して、学んで、妊娠出産のすべてを計画通りに行わなければなりません。

今回は猫の妊娠、そして出産についての現実を知って、無計画に猫を妊娠させない、飼えない数に猫を増やさないことを肝に銘じていただければと思います。
生後2週齢のベンガルの赤ちゃん

生後2週齢のベンガルの赤ちゃん


メス猫とオス猫の発情

通常は短毛猫の方が性成熟が早く、早い子では生後5ヶ月頃から、平均は生後7~9ヶ月頃までに最初の発情がきます。長毛猫は、生後10~12ヶ月前後に最初の発情がくることが多いようです。

猫の発情は日照時間に関係があるという説が有力で、メス猫は1日のうちの12~14時間、500ルックス(読書が可能なかなりの明るさ)の光にさらされていると発情しやすいといわれています。冬至が終わるころ(1~2月頃)からメス猫のソワソワ=発情が始まり、受胎しなければ5~12日間続く発情を9~10月頃まで数回繰り返します。

室内にいる猫は、季節に関係なく明るい時間が長ければ一年中いつでも発情を迎える準備が整っていますし、夜でも明るい地域に棲んでいる猫の発情期は狂いがちになります。発情シーズンがあるのはメス猫だけで、オス猫はまわりに発情期を迎えているメス猫がいれば、いつでも準備万端です。

短毛種のオス猫は、生後5ヶ月でもパパになれてしまうので「まだまだ、子猫だから」と油断しないでください。まわりに発情しているメス猫がいなければ、オス猫の性本能の目覚めは遅くなる傾向ですが、それでも生後10ヶ月前後にはほとんどのオス猫がいつでもお父さんになれるでしょう。

オス猫の性成熟度が高くなると、今までよりオシッコのニオイが臭くなり、スプレーと呼ばれるマーキングを、あちこちに引っかけはじめたりします。


発情期のメス猫は、こんな行動を取ります。

・いつもよりも甘える仕草が増える
・人の体や家具などに身体をすりつけたがる
・食欲がなくなる
・しっぽの付け根をさわると嫌がるか、身体を低くして震えたりする
・今まで聞いたことがないような鳴き声を出す
・頻繁に陰部をなめる
・トイレに行く回数が増える
・トイレ以外で粗相をする
・スキがあれば外に出て行こうとする

猫によってはほとんど変化をみせない、軽い発情期もあります。一番最初の発情は短い(約3~5日)傾向で、その後3~4週間程度の間隔で1週間~10日鳴くという風に発情を繰り返し、徐々に発情期の状態がエスカレートしていくことが多いようです。発情期のメス猫は痩せて、毛が抜けたり、毛づやが悪くなっていきます。
お乳を吸う赤ちゃん猫

お乳を吸う赤ちゃん猫



発情中の出血には要注意

猫は発情中に出血しませんが、発情中のメス猫は、身体が異質な細胞(オスの精子)を受け入れる体勢が整うため、免疫力が落ちています。もし発情中に出血していたら、子宮蓄膿症や膀胱炎などが疑われるので、至急獣医師の診察を受けてください。

同じお母さんから生まれた兄弟ても、父猫が違うことがある

メス猫は交配時にオス猫から首筋を噛みつかれる痛みと、ペニスについているトゲトゲの刺激を受け、刺激排卵します。そのため、発情中に、複数のオス猫と交配すると、複数のオス猫の子を妊娠できるのです。

猫の妊娠率は非常に高く、これはもともと単独生活をおくる猫族が種を保存するために備わった本能の強さだと考えられています。


猫の妊娠

猫の妊娠期間は約63~66日前後で、1回に平均して2~6頭産みます。妊娠3週目あたりから乳首が大きく鮮やかなピンク色に変化(ピンキング)し、妊娠が確認できますが、まれに想像妊娠を起こす猫もいます。

エコー検査などで妊娠がはっきり確認できたら食事を徐々に高カロリーのもの、子猫用/妊娠猫用などに切り替えていきます。妊娠後期になると胃が圧迫されて一度にたくさん食べられなくなる猫が多いので、ご飯の回数を増やします。

出産の1週間ほど前から、部屋の中をウロウロして出産場所を探し始めます。猫が落ち着ける場所に段ボールや衣装ケースで作った産箱を用意しててください。産箱は出産後の汚れたものから移し替えるために、2個用意してください。

出産予定日の1週間~10日前にレントゲン撮影を行い、子猫の数や大きさ、母猫の産道の幅などの確認をしておいた方が安心して出産に望めるでしょう。
生まれたばかりのメインクーンの赤ちゃん

生まれたばかりのメインクーンの赤ちゃん



猫の出産

いつ出産が始まるかを予想するのは非常に難しいですが、多くの猫は出産の半日程度前から食事を摂らなくなります。出産間近になると、それまでお腹の中でよく動いていた子猫の動きが鈍くなって、固く感じられるようになります。出産1~2日前にはオッパイが突き出して、絞ると透明に近い乳白色のお乳がでます。オッパイが張ってきて、たれているように感じられます。

出産時には羊水や出血がありますので、ペットシーツや使いこんだ清潔なタオルなどをたくさん用意して汚れたら取り替えるか、上に敷いて猫の身体が濡れて体温が下がらないよう注意してください。

子猫が生まれてから後産(胎盤)が出てきますが、子猫→胎盤と順番通りとは限らず、2~3頭子猫がでて、後でまとめて胎盤が出てくることもあります。胎盤は母猫に食べさせた方がよいといわれていますが、良質なフードを食べている栄養状態の良い母猫であれば、後で下痢をすることがあるので、食べさせない方が無難かもしれません。

生まれた子猫の体重を量って、体重はその後、毎日決まった時間にチェックしてください。すべての子猫がおっぱいを飲み始めたかどうか、必ず確認しておきましょう。

【出産に必要なお産セット】
消毒液(ヒビテン、薬用アルコール)につけた脱脂綿とへその緒を縛る糸
ハサミ
ペットシーツ
ティッシュペーパー
ゴミ袋


出産後の母猫と子猫の管理

子猫がすべて生まれたら、猫を別に用意しておいた清潔な産箱に移します。出産のニオイで他の動物に襲われる可能性を避ける本能で、1~3日後あたりに子猫を別の場所に移したがる母猫が多いので、もし移動したがったら母猫の好きにさせ、母猫が落ち着いた場所に産箱をセットしてください。

母猫には静かな安心できる環境が必要なので、産箱の中は薄暗くしてください。人間が子猫を触ることを許さない母猫もいます。子猫を見たり触る時は、必要以上に母猫を刺激しないよう、短時間にしましょう。

母猫は子猫のお尻を舐め、その刺激で子猫は排泄するので、母猫がきちんと面倒をみていれば子猫の排泄の心配はありません。面倒見のよい母性本能の強い母猫は、子猫を舐めてピカピカにして、喉をゴロゴロ鳴らしながら授乳します。

生まれて2~3日は生理的体重減少があるので、体重が減らなければOKと考えます。子猫によってかなり差がありますが、1日5g~20g体重が増えます。出産後24時間~の初乳には高い免疫効果が含まれているので、初乳は、確実にのませてください。お乳は吸われないと出ません。最初は吸い方が下手な子猫たちも、健康であれば徐々に力強く吸えるようになります。

授乳中の母猫は、妊娠中より高栄養と水分を必要とします。高カロリーのフードをいつもより多めに与えてください。また出産後、授乳中は非常に喉が渇くので、いつも以上にたくさん水が飲めるように産箱の近くに用意してください。

出産後の出血(悪露・おろ)は猫によって違いますが、数日~数週間断続的に続きます。たいていは黒っぽい粘りけのある出血ですが、もし鮮血が出たり量が多い場合は早急に獣医師に相談してください。
お母さん猫と生後3週齢の赤ちゃん猫

お母さん猫と生後3週齢の赤ちゃん猫


季節による注意点

暑い時期に生まれた場合は、直接産箱に風が当たらないように注意してエアコンの除湿などで室温(27~28度程度)で管理してください。子猫の体温が高いため、暑い室内では母猫が子猫を抱くのを嫌がります。もし寒い時期に生まれたのであれば、今度は暖房が必要です。部屋全体を暖めなくても、産箱の半分だけにペット用のホットカーペットを敷くとか、産箱の周りにカイロや湯たんぽを置いても良いでしょう。



猫は、出産後約1~3ヶ月前後で次の発情が来て、また妊娠可能になります。タイミングが合えば1年に3回以上出産することも可能です。

今同居している猫を大切にしたい、健康で長生きしてほしい、計画的な妊娠・出産ができないのであれば、猫は不妊手術をした方が穏やかに過ごせるでしょう。