映画からコンサートライブまで端正なサラウンドの5ビーム。プログラムに併せてモードを選ぶ楽しさも
正月にBSから録画した音楽ソースをYSP-LC3000で聴いてみましょう。AAC方式5.1chで収録された『ウィーンフィルのニューイヤーコンサート2008』を5ビームで聴くと、音が伸びやかにクリアに広がり、十五年前に私がそこにいたムジークフェラインの透明な響きを聴きました。ただし、音がややハイ上がりになる傾向があるので他のモードも試しましたが、やはり「5ビーム」がもっともいい結果が得られました。ステレオ+3ビームは音が太く重くなる傾向があります。
次に聴いたのが、『世界のエンターテイナー、ライザミネリ』。NHKホール収録のこのソースはディレイ(遅延~反響の深さを決める)が深く、ナチュラルなエコーが掛かっています。「ステレオ」で最も好結果が得られました。「ステレオ+3ビーム」も、ボーカルがしっかり出て臨場感も豊かで悪くありません。
「3ビーム」だと、響きが付きすぎて、ボーカルの響きが前後に割れる傾向があります。新機能の「マイサラウンド」も試してみました。ライザのボーカルがオケや反響音から浮き上がって、ステージサイトの臨場感が出ました。
肝心の映画ソフトはどうでしょう。ブルーレイディスクで発売された『ブレードランナー』(6枚組)は、やはり5.1chの「5ビーム」が基本ですが、俳優の口跡が鮮明でセリフが聞きやすいのは「ステレオ+3ビーム」。深夜に小音量でご覧になりサラウンド感を特に求めないなら、お薦めの視聴スタイルです。
YSP-LCW3000(予想実売価格\150,000)のシルバータイプを設置したリビングルームのイメージ。テレビとYSP-LCW3000をHDMIで接続すれば、テレビのリモコンで大半の操作ができるようになる。高価なシステムコントローラーを使ってできた世界がYSPを使ってできるのだ |
デジタルサウンドプロセッサーは、ワンアンドオンリーな技術のオリジナリティ、シンプルで合理的なパッケージング、薄型テレビとピタリ一体化する生活の中での使いよさで、現在一番洗練されたフロントサラウンドです。
私はこの方式を高く評価しますので、YSP-LC3000を広くお薦めします。ただし、実際にスピーカーを部屋の各所に置いたときのように、音が背後から克明に聴こえたり、部屋の中を明快に移動するまでには至りません。そこまで求めるなら、たとえ小型の簡便なタイプでもスピーカーを部屋の片隅に置くことをお薦めします。どちらを選ぶかは優劣でなく、スタイルの問題なのです。
映画の中に豊かに含まれた音情報を、内蔵スピーカーの平板な音から開放してやって、映画本来の映像とサウンドが(足し算でなく)掛け算になってドラマを描いていく形に戻す、薄型テレビの求めた現時点で最良のパートナーが、デジタルサウンドプロセッサーであると考えればいいでしょう。
【関連リンク】
・ヤマハ YSP-3000