信州最古の
由緒ある禅寺

北向観音が比叡山延暦寺系の天台宗のお寺であるのに対し、安楽寺は、禅宗の一派である曹洞宗のお寺です。徒歩すぐのところにあるのに、宗派が違うとお手の雰囲気もずいぶん違うものだと驚かされます。
安楽寺の本堂。キキョウの花が風情を添える

安楽寺は、鎌倉時代中期には大規模な禅寺となり、信州の禅の中心道場であったようです。鎌倉北条氏の外護によって栄えましたが、北条氏滅亡(1333年)後は、寺運も傾いて正確な記録は残っていません。しかし、国宝、重要文化財等数多くの鎌倉時代の文化遺産が伝わっており、信州最古の禅寺のおもかげを残してます。

珍しい八角形の三重塔

絶妙な安定感のある八角塔
安楽寺の名を全国的に知らしめているのは、たいへん珍しい八角形の塔です。木造の八角塔は、全国でも、ここにしかなく、国宝に指定されています。

ただ珍しいだけではなく、この塔は、実に美しいです。本堂から少し坂を登った高台にあるのですが、下から見上げると、その素晴らしさ、神々しさに心打たれます。ぜひ、いろいろなアングルから眺めてみてください。

屋根が四つあるので、一見四重塔に見えますが、一番下の屋根は、実際は屋根ではなく、「裳階」(もこし)と呼ばれる飾りです。奈良の薬師寺の塔に裳階が三つあって六重塔に見えるが実は三重塔であるのと同じことです。
屋根の下に、放射状の木組みがある。これもすごくきれい

境内の下の方から眺めるのも美しいです
縁や手すりがなく、柱は直接地面から立っており、まわりは板壁です。屋根を支える垂木が扇の骨のように放射状に外側に出ています。こういう建築のやり方を「禅宗様」といいます。そのほかこの塔は、禅宗様の建築の特徴を数々備えています。これは、中国から直接伝来した、鎌倉時代の最新式な建築様式です。

しかし、この塔の中に祀られているご本尊が大日如来であるのはとても不思議なことです。(普段は扉が開いていないので、直接見ることはできません)

禅宗の寺のご本尊は、通常は釈迦如来で、大日如来が祀られることはありません。大日如来は、真言宗など密教系の仏教の中で一番偉い仏様だからです。にもかかわらず、この塔に大日如来が祀られている理由は、まだはっきりとしたことはわかっていないようです。

八角輪蔵もある

回すだけで一切経をすべて詠んだのと同じ功徳があるとされる輪蔵
「輪蔵」とは大きな八角形の回転式の経箱で、古来よりこれを1回転して礼拝すれば、中に納められている全ての仏典を1回読むのと同じ功徳があると言われています。

こちらのお寺にも立派な輪蔵があり、中に収められているお経は、江戸時代に、京都の萬福寺から買い入れたものだそうです。輪蔵は、お寺によっては、収められた経蔵に入って実際に回せるところもありますが、こちらは、経蔵の内部には入ることができず、外から眺めるだけです。

次のページは、萱葺き屋根が美しい常楽寺にご案内します。境内奥にある石造多宝塔もお見逃しなく