寺・神社/京都の寺・神社

新緑の京都を歩こう2 鞍馬寺と由岐神社(2ページ目)

5月?6月は、京都の山々がもっとも輝く季節。今回は、お勧めコースのひとつ、鞍馬寺と由岐神社をご案内します。毘沙門天、義経、天狗。鞍馬には京都を代表する大スターがいっぱい。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド

もともとのご本尊は
毘沙門天です

鞍馬寺本殿
鞍馬寺は、八世紀後半に、鑑禎上人という僧が毘沙門天を祀る草庵を結んだのが始まりです。鑑禎上人は、中国からやってきて唐招提寺を開いた鑑真和上の高弟。平安時代は、京都の北方を守る寺として信仰を集めました。
鞍馬の狛犬は虎の形
毘沙門天はまたの名を多聞天といい、仏の世界の四方を守る四天王の一人です。その中で毘沙門天(多聞天)は北を守る仏様なので、実際に京都の北の端にある鞍馬山に祀られたのでしょう。

●四天王については、こちらをごらんください

境内にある鞍馬山霊宝館には、毘沙門天立像があります。平安時代の貴重な仏像で、国宝に指定されています。この像は、手を目の上にかざして遠くを見るようなポーズをしています。つまり鞍馬山の上から京都の町を眺め、守っているのです。また、毘沙門天のお使いは虎とされるので、こちらの狛犬は虎の形をしています。

現在は、山や自然がご本尊

鞍馬山には巨樹が多い。これは由岐神社境内にあるご神木の大杉
江戸末期の大きな火事や明治の廃仏毀釈などを経て、鞍馬寺は信仰形態を少し変え、鞍馬弘教という新しい宗派が立教開宗されました。お寺の方のお話によれば、現在の鞍馬では、山そのものやそこにある自然すべてが神仏として崇められているということです。そのため鞍馬では、樹木もなるべく切らないようにしており、動物や昆虫も大切にされます。

ここで面白い話を聞きました。鞍馬では、建物の中に入ってきたムカデも殺したりしないそうです。ムカデは毒があり、刺されるとたいへんなことになるのにね。その理由は、ムカデは虎と同じように毘沙門天のお使いとされているからです。そういえば、何年か前に鞍馬に来たとき、霊宝館に、ムカデの絵の掛け軸が展示されているのを見た記憶があります。

ムカデは足が多いです。足は、おあし(お金)に転じ、毘沙門天は、お金が多い、つまり商売繁盛の守り神としても、庶民に信仰されることになりました。

鞍馬と言えば
義経と天狗

霊宝館より先は、さらに樹木が茂る山道になっています。このあたりには、古くから天狗が住んでいました。天狗とは日本固有の山の神のひとつで、修験道の山伏のような服装をし、鼻が高くて顔が赤く、手足の爪が長くて翼があり、金剛杖・太刀・羽団扇を持っています。神通力があり、空を自由に飛べるということです。中でも、ここ鞍馬の天狗は、「鞍馬天狗」として、小説や映画にもなって大人気だったそうですが、それは相当古い話なので、わたしほどの年齢のものでも、イマイチ、よくわかりませんです。
鞍馬の駅前にある巨大天狗。鞍馬のアイドル的存在

源義経は、若いころ、この鞍馬寺に預けられていました。その際、このあたりの木の根道というところで、毎夜、天狗に指導されて剣術の修行をしたそうです。今回は、天候が悪すぎるためそちら方面に行くのは断念したのですが、以前行ったときは、しっかりその道を歩きました。

鞍馬の山は、岩盤が浅いところにあるので、木が根を深く張れません。そのため根は、地表を複雑に這いまわり、絡まりあって、独特の不思議な光景を作り出します。ぼこぼこしてたいへん歩きにくいため、ヒールの靴で行くのは厳禁。こんなところで修行したため、義経は、八艘飛びなどという離れ業を見につけることができたのです。

次のページは鞍馬の火祭りで有名な由岐神社にご案内します。
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