韓国の寺は
多くが山の中にある
最初の目的地、世界遺産、海印寺(へいんさ)は、韓国の中央部よりやや南寄りの山間にあります。今回はソウルから行ったので、5時間ほどのドライブでしたが、プサンからなら、もうちょっと早いでしょう。しかし、なにせ人里離れた山の中なので、どちらにせよ、個人旅行で行くのは、けっこう大変だと思います。美しい山道を登っていくと、やがて、立派な山門がある |
●海印寺の場所を確認したい方は、こちらをクリック。地図の真ん中より下のあたりにあります。
韓国のお寺は、たいていが山の中腹にありますが、朝鮮王朝時代には儒教を重んじ、仏教は抑えられ気味だったので、なるべく山奥に寺を造ったというのが理由のひとつと聞きます(朝鮮王朝以前からあった寺には、その理由は当てはまらないでしょうから、今後の研究課題となります)。日本でも、山の上にお寺があることが多いですが、(主に、天台宗や真言宗など、密教系の寺。例=高野山金剛峯寺、比叡山延暦寺)それは、古代より山を神々の棲む聖域と見なしており、その結果、山を歩くこと自体が修行であるとされたためで、韓国の寺が山奥にあるのとは、由来自体が異なります。
海印寺の背後は山。しかし、韓国にはそれほど高い山がなく、樹木の背も低いせいか、わりと明るい。日本の山岳寺院が、樹齢何百年という巨樹に囲まれているのとは対照的だ |
寺通の二人もびっくり!
琵琶を弾く四天王
これが二番目の門。その両脇には、衝撃の四天王が! |
海印寺への道筋は、まるで奥入瀬渓谷のような清流もあり、とても雰囲気がよいです。と言っても、その日は、3m先も見えないような豪雨だったので、たぶんすごく美しい景色なんだろうなと想像するだけです。日も落ちかかったころに、ようやく山門に到着。幸い雨は小降りになってきたものの、あたりはもう薄暗くなっていました。
二番目の門をくぐった瞬間、ほーりーさんが驚きの声を上げました。
「うわっ、これはいったい何だ!」
指差す先には、極彩色の仏像(?)が。門の左右に二体ずつ、計四体あります。
ふっふっふっ、実はわたしは、事前の勉強で、これに関する情報だけは持っていました。
「ほーりーさん。これはね、四天王なんですよ」
「ウソでしょ。だってこんなに派手だし、第一、あの像は琵琶を弾いてますよ。日本で琵琶を弾く四天王像なんて、見たことがない」
極彩色の不思議な四天王たち。左の琵琶を持っているのが持国天 ただしこれは、海印寺の天候が悪く、うまく写真を撮れなかったため、他の寺の四天王です。どこの寺の四天王も、ほぼこんなかんじで、ほとんどの場合、門の両脇に二体ずつあります |
四天王と言っても、ヨン様、ビョン様の、「韓国イケメン四天王」とは違います。仏教世界の中心に須弥山という山があり、四天王は、その中腹で四隅を守る守護神です。
持国天(じこくてん)―東方を守護し、剣を持つ。
増長天(ぞうちょうてん)―南方を守護し、矛(ほこ)を持つ。
広目天(こうもくてん)―西方を守護し、筆と巻物を持つ。
多聞天(たもんてん)―北方を守護し、宝塔と宝棒を持つ。
日本における四天王像は、このような形が基本です。まぁ、守護神ですから、だいたいが硬派な感じで、楽器をかき鳴らしたりなんかはしないものだとお考えください。しかし、仏像は、それぞれの国の土着信仰を取り込んで、形や持物、役割が微妙に違うようです。こちらの琵琶を持った像は持国天です。あとで調べてみると、中国では、持国天は琵琶を持つこともあるとか。ここ韓国は、地続きであるせいか、道教など中国の土着信仰の影響が日本より強いのでは、というのがわたしの推測。
もう一方の側の四天王の持ち物も、日本のものとはかなり違う。 そもそも日本では、門には二体の金剛力士像がつきものだが、韓国では、四天王のほうがポピュラーな感じだった |
次のページも驚きの発見が続きます。なぜ韓国の寺は、日本の寺と、こんなにも違うのか???