寺・神社/宿坊に泊まる

ご利益シャワーの宿坊で尼僧の暮らしを体験(3ページ目)

奈良県と大阪府の県境にある信貴山では、一般の人も、尼僧や僧の体験ができます。おまけにここは、関西有数の商売繁盛の寺で、普通にお参りするだけでも、山ほどご利益をいただけるありがたい場所なのだ。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド


百八回のスクワットで筋肉痛に

まず、このようにひざまづき、次に合掌して立ち上がります
百八礼とは、ご本尊の毘沙門天様に向かい、ごまず頭と手を地につけてひざまづき、次に合掌して立つ動作を百八回繰り返すことです。何度も繰り返すことにより、ご神仏のご加護や功徳をいただくという意味で行われます。と、言葉で書くと簡単ですが、実際にやってみると、これがかなりキツく、翌日、階段を登れなくなるほどの筋肉痛になる人もいるとか。でも、途中で疲れたら、休んでもかまわないそうです。自分の体力と相談しながら、できるところまでがんばろう。

お坊さんが拍子木のようなものでリズムを取ってくださるので、それに合わせてやります。また、どれだけへとへとでも、真言と呼ばれる謎めいた言葉を必ず唱えねばなりません。ちなみに、どんな言葉かというと、

皆、へろへろになり、簡単には立ち上がれなくなりました
オン サラバ
タタギャタ
ハンナマンナ
ノウキャロミ


というもの。真言とは、真実の言葉で仏さまの真理を説き、その徳をたたえる短いお経のことで、サンスクリット語をそのまま音写したものなので、意味がわからなくて当然なのです。真言は、仏様ごとや唱える状況別にいろいろあり、これがあるために、この宗派は、「真言宗」と呼ばれるのです。

精進料理はきれいで美味しい

いただく前に般若心経と五鑑の偈を唱えます
一同がへたばりかけたところで、ようやく夕食の時間がやってまいりました。精進料理に関しても、初心者の方は、「質素で量が少ないのでは」というイメージをお持ちのようですが、こちらのお料理は、一般のお客さんに出されるのと同じもので、美しくボリュームたっぷりでした。肉や魚を使えない分、調理法にいろいろと工夫があって、美味しくいただけます。

しかし、やっぱりここでも食事は修行の一部なので、いただく前に般若心経と、「五観の偈」という言葉を唱えねばなりません。五観の偈は、今、自分の前に食べ物があることに、さまざまな面から感謝の意を表する言葉です。

精進料理は彩りも美しく、調理法もバラエティに富んでいます


伊藤若冲風の襖絵のある豪華な部屋
それにしても、玉蔵院の客殿の装飾の豪華なこと。修行のお部屋の障壁画は聖徳太子でしたが、食事をする部屋の襖絵は、金地に鳳凰です。最近大人気の江戸時代の画家、伊藤若冲の画風に似ていますね。

これ以外にも、各部屋には、さまざまな襖絵や書画骨董がさりげなく置かれていて、まるで博物館のようです。建物自体も、一部は大正時代のものとかで、今の技術では造れないような細工が施されています。こんな素晴らしい空間に、今夜の泊り客はわたしたちだけ。何だかすごく贅沢な気分です。

本堂からの眺めが最高

信貴山では、一晩中灯篭が灯されます
食事のあとは自由時間なので、ちょっと山内を散歩してみましょう。もう日は暮れていますが、信貴山は夜もお参りに来る人がいるので、一晩中灯篭が灯されています。

本堂は、玉蔵院から少し歩いたところにあり、京都の清水寺に似た舞台式の建物です。ここは視界が開けており、奈良の市街地の夜景が手に取るように見えます。こんな素敵な景色も、すべて独り占め。犬の散歩にいらしたご近所の方によれば、こちらは桜や紅葉も素晴らしいのに、意外と知られていない大穴場だとか。
奈良盆地の夜景が手に取るように見えます


次のページはまだまだ続く尼僧修行ルポ。翌日は朝5時からのお勤めに参加します。
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