湯灌とはご遺体を清める儀式
病院で亡くなった場合、看護師がご遺体をアルコールでキレイに拭き清め、鼻、口、肛門に脱脂綿をつめ、髭や爪や髪の毛を整えてくれます。しかし、病院が死後の処置をするようになったのは近年になってからのこと。それまでは近親者や地域住民によって行われる湯灌(ゆかん)の儀式が行われていました。
湯灌とは、ご遺体をお湯につけて洗浄する儀式のことです。湯灌は「逆さ水」という日常生活とは異なる作法で行われます。普通、私たちがお風呂に入るときはお湯に水を足しながら湯温を調節しています。しかし、湯灌の場合は水にお湯を足すという通常とは逆の温度調節を行いますので「逆さ水」と呼ばれているのです。
昔ながらの湯灌は、盥(タライ)に水をいれ、湯を注ぎながらご遺体を洗浄していました。現在の湯灌は自分達ですることはほとんどなく、湯灌業者によって行われています。自宅巡回の介護入浴サービス車から転じた湯灌車が、その都度湯灌が行われる場所まで出向きます。
湯灌の流れ
介護用に開発された浴槽を使用します。排水などは車両へ流します |
- 浴槽を室内へセットし、水を入れて準備をします。そのあとお湯を注いで温度調節をします。
- 布団に安置されているご遺体は関節を曲げて硬直を解きます。衣服は脱がせて布やバスタオルで覆います。
- ご遺体を浴槽に移し、立会いの人が交代で足元から胸元にかけて湯をかけます。柄杓(ひしゃく)を用いることが多いようです。
- 洗顔・洗髪を行い、顔を剃ります。最後はシャワーでキレイに流します。
- 故人を布団に移し、ご希望の衣服に着替えます。髪を整えたり、爪を切って仕上げます。化粧やマニキュアをする場合もあります。
- 業者が後片付けをします。
(引き続き、納棺が行われる場合もあります。
湯灌に関するQ&A
湯灌車には給湯設備やホースなどが完備。マンションの場合でも低層階ならOKです |
Q:
湯灌って絶対しなければいけないの?
A:
ご遺体は病院でキレイに拭き清められていますので、必ずしなければいけないわけではありません。「洗浄」という意味ではむしろ不要といえるでしょう。しかし、多くの人が「湯灌をやってよかった」と口を揃えて言う理由は、「故人との触れ合い」ができることにあります。死を受け止め、次へのステップへつながるひとつのきっかけになるのかもしれません。
Q:
湯灌はどこで行うの?
A:
葬儀式場で湯灌を行うことはもちろん、自宅で行うことができます。湯灌用の浴槽は、介護用から転じたもので、じゅうたんや畳の上にも置けるようになっています。もちろん水浸しになることはありません。浴槽と立会い人の数人が着席できれば、小スペースでも可能です。
マンションでも低層階(ホースが届く範囲)なら可能なので、葬儀社や湯灌専門業者に相談してみましょう。
Q:
湯灌の時、故人は肌を露出しなければいけないの?
A:
故人の肌が露出しないように、布やタオルでご遺体を隠しながらシャワーで洗浄します。それでも気になるようでしたら湯灌担当スタッフに相談すれば、できるだけ体の線が見えないように工夫してもらえます。
Q:
湯灌を行う際の追加料金はいくらくらい?
A:
湯灌を行うには、ほとんどの場合追加費用が必要です。業者によっても異なりますが、プラス6万円くらいから11万円くらいになります。基本料金はリーズナブルなのに追加費用が高かったり、またその逆のケースもありますので、あからじめ費用は確認しておきましょう。
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