葬儀・葬式/埋葬方法

「海に散骨してほしい…」遺骨を海にまくことは可能?方法は?

遺骨をお墓に埋葬せずに散骨を希望する人が増えていますが、法律上は問題ないのでしょうか? 散骨は海や山にまく方法がありますが、ここでは海にまく散骨についてお話します。

吉川 美津子

執筆者:吉川 美津子

葬儀・葬式・お墓ガイド

海や山への散骨希望が増加中…遺骨をお墓に納骨しないオリジナリティ

最近は遺骨をお墓に納骨せずに、海や山にまく散骨を希望する人が増えています。

これは、少子高齢化や核家族化などの社会的背景もありますが、葬儀やお墓についての考え方がひと昔前と比べて少しずつ変わってきたことも理由のひとつです。

例えば葬儀の場合だと「故人が好きだったお花で葬儀の祭壇を飾りたい」というように、慣習にとらわれずにその人らしいお別れをするケースが目立ってきました。また、お墓の場合は「墓石に彫る文字は心に残る言葉にしたい」「墓石は○○のような型にしたい」など、オリジナリティを求める人が増えてきています。
都市部では機械式の納骨堂が増えていますし、墓石の代わりに樹木等を墓標とする樹木葬墓地も注目を集めています。

近年、散骨は葬送の選択肢のひとつとして確立されています。。散骨と言っても、海にまく、山にまく、思い出の地にまく……等がありますが、ここでは特に海にまく海洋散骨についてのみ取り上げていきます。

【INDEX】
散骨は法律で認められている?認められていない?
海へ散骨する場合の手順
個人で好きな場所に散骨をしてはいけないの?
散骨についてよくある質問~Q&A~
格安の委託散骨プランは5万円台から

 

散骨は法律で認められている?認められていない?

散骨は違法ではありませんが、遺骨を細かく砕いたり、人に迷惑がかからない場所にする等の配慮が必要です。
散骨は違法ではありませんが、遺骨を細かく砕いたり、人に迷惑がかからない場所にする等の配慮が必要です。
散骨は法律でどのような位置づけになっているのでしょうか。昭和23年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」(以下、墓埋法)の第四条によると、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」という条文があります。

この法律が制定された当時は散骨のような葬送については想定されていなかったため詳しく記載されておらず、現在散骨は法律の対象外として解釈されています。

また、1991年の「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪に該当しない」と当時の厚生省及び法務省の非公式見解に基づいて行われているのが現状です


なお、静岡県の熱海市や伊東市などの自治体では、海洋散骨を行う海域などについてガイドラインを設けています。法的拘束力はありませんが、漁業権や観光資源への配慮を促す意味でも、今後も各自治体でガイドラインが策定されることが考えられます。
 

海へ散骨する場合の手順

近年、散骨に関する決まり事を制定する自治体が増えています。散骨は個人で行っていけないという決まりはありませんが、禁止区域のガイドラインが決められていることがありますし、周囲とトラブルになる可能性もありますから、散骨専門業者に依頼するほうが良いでしょう。

1.遺骨を粉末状に砕く

散骨をする際には遺骨を粉末状(概ね2ミリ以下)にします。遺骨の粉砕は個人で行うこともできますが、業者に依頼するケースが多いようです。粉末にする費用は2~4万円。粉末化したあとは、水溶性の紙に包み、そのまま海へ散骨します。

2.散骨場所まで船で移動

散骨業者が実施する散骨船の場合は、「海岸から○km沖合いにまく」と社内でガイドラインを設定しているところが多いようです。

3.散骨の実施

紙に包んだ遺骨を海へ撒きます。その際、故人が好きだった音楽を流したり、しばらくその場に船を止めて献杯するケースもあります。

4.下船

下船の際、散骨証明書を発行する業者もあります。(埋火葬許可証や分骨証明書と違って、公的な書類ではありません。)
 

散骨に関するマナーやガイドラインは守らなければならない

遺灰と一緒にお花を海にまく場合には、自然に還りやすいように花びらだけにすることをおススメします。
遺灰と一緒にお花を海にまく場合には、自然に還りやすいように花びらだけにすることをおススメします。
前述の通り、散骨に関する厳密は法律は現在のところありません。そのため、葬儀社や散骨専門業者が実施する散骨プランを利用せず個人で散骨しても、禁止エリアでなく注意事項を守っていれば、罰せられることはありません。

少なくとも下記を厳守するようにしましょう。

1. 自治体で出されている散骨に関するガイドラインを確認する。
2.遺骨は原型をとどめることなく粉末状に砕く。
3.散骨場所は他人に迷惑がかからない場所にまく。
4.その他諸問題が生じないように注意する。

例えば、多くの人で賑う海水浴場や、海産物の養殖場などで散骨することはマナー違反。喪服だと、中には嫌悪感を示す人もいるでしょう。普段着で乗船することをおすすめします。

また、ドラマや映画では海へ花束を投げるシーンがありますが、美しくアレンジされた花束を投げているシーンはあまり参考にしないで欲しいものです。リボンやセロファンなどははずし花びらだけを撒くなど、自然に配慮する必要もあります。
 

散骨についてよくある質問~Q&A~

散骨をする際は、故人と遺族の意思を確認しておきましょう。親戚の同意を得ることも大切です。
散骨をする際は、故人と遺族の意思を確認しておきましょう。親戚の同意を得ることも大切です。
散骨について、よくある質問をまとめてみました。

Q:
散骨できない宗旨・宗派はありますか?
A:
基本的に、宗旨・宗派は問いません。

Q:
海ならどこでも散骨できるのでしょうか?
A:
自治体でガイドラインが定められている場合があります。
遺骨(遺灰)の主成分はリン酸カルシウムなので、「海洋汚染防止法」などに指定されている汚染物質ではありませんが、感情的な部分に配慮して沖合いに散骨するのが望ましいでしょう。

Q:
亡くなった本人は、生前に「自分の遺骨は海にまいてほしい。」と言っていましたが、イザとなってみると残された遺族は遺骨を手放すことができません。故人の意思と遺族の意思どちらを優先したらよいのでしょう?
A:
故人が散骨を希望していても、遺族が望まないケースはたくさんあります。「故人といつまでも近くにいたい」という思いの人もいれば、「遺骨はお墓に入れるべき」という考えの人もいます。散骨は故人だけが希望していても、残された遺族の意志が別の方向を向いていたら実施することは不可能です。

それでも日本人の場合は、遺骨のすべてではなく一部だけを散骨することが多いことに加えて、散骨が社会的に少しずつ認知されてきていることもあって、最近では散骨に反対する人が少なくなってきました。散骨に対して少しでも不安があれば、業者からじっくり話しを聞いて納得することが大切です。

Q:
海が荒れて中止になることもありますか?
A:
天候により船が出港できないことがありますので、その場合は延期になります。途中で海が荒れて散骨目的地までたどり着かずに引き返すこともあります。海への散骨の場合、天候により左右されますので事前に散骨業者に確認しておくと良いでしょう。
 

海への散骨普及に伴い業者も増加。格安の委託プランは5万円台から

散骨業者も千差万別。セレモニー重視型、アットホーム型等、それぞれ個性がありますから事前に調べておきましょう。
散骨業者も千差万別。セレモニー重視型、アットホーム型等、それぞれ個性がありますから事前に調べておきましょう。
散骨が普及するにしたがって、散骨船を保有する専門業者が増えてきました。

新事業の一環として葬儀社がはじめることもありますし、海を熟知した船舶関係者が散骨をはじめるケースもあります。

葬儀と違って散骨を決めてから実施するまで少し時間があると思いますので、事前に船のタイプ、乗船場所などを調査しておきましょう。

料金はほとんどの場合、委託散骨、合同散骨、個人散骨の3プランを基本に設定しています。一般的には委託散骨より、遺族が一緒に乗船して散骨をする合同散骨や個人散骨のプランが好まれています。

散骨の料金は業者によって異なりますが、目安となる料金は下記の通りです。

1.委託散骨 50,000円~

スタッフがあらかじめ遺灰を預かり、遺族にかわって散骨をする。写真や証明書などが付くことが多い。散骨日時の指定はできない。

2.合同散骨 100,000~

複数組の遺族が一隻の船に乗船する。乗船人数に指定がある(通常は2名くらい)。費用を抑えたい人向き。日時指定はできないところが多い。

3.個人散骨 250,000円~

一隻の船を一組の遺族がチャーターする。乗船人数は船の定員に順ずる。希望日時を指定できることが多い。

その他、オプションで宗教者の手配、船着場までのマイクロバスの手配、料理や返礼品の手配などを行っている業者もあります。
 

土地への散骨は基本的に不可

前述のように、法律で散骨について明示されているわけではありませんが、土地への散骨については各自治体が独自に条例で散骨を禁止している場合があります。
たとえば、北海道の長沼町、岩見沢市、埼玉県の秩父市などでは「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」という条例が制定されています。これらの地域では、たとえ自分の所有する土地であってたとしても散骨することは条例違反となるので注意が必要です。

条例で禁止されていない場所、たとえば自己所有の土地なら散骨は禁じられていませんが、近隣とのトラブルになったり、土地の評価に影響を及ぼすことも考えられるのでおすすめできません。

なお、自己所有の土地であっても、遺骨の上に土をかけてしまうと「焼骨の埋蔵」と見なされ、法律に違反することになります。

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