『THE OPERA HOUSE MURDERS』Fumiya Sato/Tokyopop |
もし自然に切れたものなら……
名探偵・金田一耕助の孫である金田一一(きんだいちはじめ)は、幼なじみの美雪の頼みで演劇部の合宿に参加します。合宿所は孤島のホテル「オペラ座館」。ところが、その美しいホテルで、「オペラ座の怪人」になぞらえた血なまぐさい殺人事件が起こります。舞台照明の下敷きになって死んだ女子生徒の死を「事故」だと言う刑事に、金田一少年は次のような推理で反論します。
If it were old and worn, the end would be frayed.
It wouldn't look like this!
It means someone cut the wire on purpose...
dropping the lights on top of Orie.
もし自然に切れたものならもっとほつれてバラバラになるはずだ。
これは明らかに鋭利な刃物で切られた跡だ!
つまり誰かが故意にワイヤーを切り…
舞台の上の彼女(織絵)に照明を落としたんだ!
(fray = をすり切れさせる、on purpose = 故意に)
金田一少年のこのセリフは仮定法過去です。仮定法過去とは、現在の事実とは違う事柄を表す時に使う用法で、「もし」にあたるif節には動詞の過去形、「……だろう」にあたる部分に、would/should/could/might+動詞の原型 が使われます。
舞台照明を支えていたワイヤーは、斜めにスパッと切断されていたのです。その状態から、金田一少年はワイヤーが古くもなく擦り切れてもなかったと判断し、事故ではなく殺人だと断定したのです。
ちなみに2行目の「It wouldn't look like this!」も1行目の続きで仮定法過去になっており、直訳すると「こんな風(キレイな切断面)にはならないはずだ!」となります。
バイリンガル版も!金田一少年の事件簿 - オペラ座館殺人事件 |
こんな合宿、計画しなければ……
3人目の犠牲者が出た後、すべては合宿を企画した自分の責任だと、美雪が泣き崩れます。その時のセリフ。If I hadn't planned this training camp, nobody would've died!
私がこんな合宿計画しなければみんな死なずに済んだはずよ!
このセリフは、仮定法過去完了です。仮定法過去完了は、過去の事実と違う事柄を表す時に使う用法で、「もし」にあたるif節には動詞の過去完了形、「……だったろう」にあたる部分には、would/should/could/might+have+過去分詞 が使われます。
孤島での合宿を計画したばっかりに、みんな死んでしまった……そんな強い後悔の気持ちが、仮定法過去完了で表されているのです。
時制のズレがややこしい!
仮定法は、言い表したい事柄の時制と、if節の動詞の時制がズレているので本当にややこしいですね。もう一度おさらいしましょう。If 主語+過去形, 主語2+would/should/could/might+原型
例)If I were you, I would go out with him.
私があなただったら、彼とデートするのに。
If 主語+had+過去完了形, 主語2+would/should/could/might+have+過去分詞
例)If she hadn't married him, things would have been different.
もし彼女が彼とケッコンしてなかったら、状況は違っていただろうに。
wishを使ってかなえられない願望を表す
wishを使うと、実現できそうにない願望を表す仮定法になります。仮定法過去と仮定法過去完了の台詞を1つずつご紹介しましょう。I wish Fuyuko was still alive...
月島(冬子)さんがあんなことにならなけりゃ…
→【仮定法過去】「今彼女が生きていれば……」という、現実と違う願望を表しています。
I wish I'd met you under different circumstances...
お前とは…もっと違った形で…会いた…か…
→【仮定法過去完了】I'd metは I had metの省略形。
仮定法ってなんだか切ないセリフが多いですね。いわゆる「タラレバ」を表すのに仮定法はぴったり! サスペンスやミステリーだけでなく、実は恋愛ドラマにも欠かせない文法なのです!
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