自ら感じた“おもしろさ”を伝える「探検ロマン世界遺産」
マチュピチュでは現地で取材を進めていくうちにどんどん謎が解けていったと寺井CP。©NHK「探検ロマン世界遺産」 |
「探検ロマン世界遺産」はどうして生まれたのですか?
寺井CP:
世界遺産とは、人類の創造性や文化の多様性、そして地球が生み出した奇跡ともいえる造形や生命の美、さらに文明が作り上げたかけがえのない価値を持つものです。こうした世界遺産をNHKとユネスコとの共同で「世界遺産デジタル映像アーカイブス」として映像で蓄えようという動きからはじまりました。
ガイド:
Dr.ロマンやリポーターが世界遺産を紹介するという形がとても親しみやすいですね。
寺井CP:
最初からあまり高尚なことだけを語るよりも、あらゆる年代の方に親しんでいただいて、世界遺産の魅力を感じてほしいと考えました。そこで、リポーターが視聴者を代表するという「旅」の感覚を大切にして、世界遺産を見たときの驚きや感動を伝え、浮かび上がる疑問を解き明かしていく形をとりました。松本零士さん作画のDr.ロマンや松任谷由実さんのテーマ曲もそうした経緯で生まれました。
1年にたった2度だけ光が差すというアブ・シンベルの至聖所、ラムセス2世像の撮影にも成功。©NHK「探検ロマン世界遺産」 |
もともと世界遺産や歴史は好きだったのですか?
寺井CP:
いえ、高校では日本史さえとっていないほどで、歴史に詳しかったわけではありません。NHKに入局した際に奈良の支局に赴任したのですが、奈良にはたくさんの文化財があり、必然的にやむを得ず、歴史ものの番組を担当するようになりました。最初は日本史を扱い、シルクロード関連の番組を手がけ、やがて世界史の番組にも関わるようになりました。
ガイド:
歴史の知識がなくても番組は作れましたか?
寺井CP:
あまり知識がなかったので、すべてを自分で1から調べなければなりませんでした。たいへんな作業でしたが、調べていくといろんなところにおもしろさを発見します。歴史は本当におもしろいものです。素人だったがゆえに自分自身で調べて足を運ぶことで、人が何をおもしろいと感じ、感動したり驚いたりするのかよくわかりました。はじめから歴史的意義や価値などとかしこまるのではなく、そのおもしろさや感動を伝えることで、見ている方にも同じように楽しんでいただきと思いました。「探検ロマン世界遺産」も同じような形で作っています。
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