世界自然遺産の魅力
アルゼンチン、パタゴニアの氷河。地球温暖化の危機が叫ばれている現在でも、ここの氷河はなぜか前進を続けているという説がある。©TBS「世界遺産」 ※写真はクリックで拡大 |
今回は自然遺産の特集ということですが、高城さん自身は自然遺産のどんなところに惹かれますか?
高城ディレクター:
たとえばスイスのメンヒを登ったときは完全に雪山で、両足をそろえる幅もないほど切り立った稜線を歩きました。登りはじめた途端に来たことを後悔しました。私とガイドとカメラマンがロープにつながっているのですが、「ひとりが落ちたら別の方に落ちろ」と言われるような場所を渡りました。本当に怖いですし、撮影はたいへんです。山頂自体は本当に小さくて、そこが本当に山頂なのかどうかもよくわからないのですが、そこで見た景色には本当に感動しました。言葉にすると「自分の小ささを感じる」などという月並みなものになってしまうのですが、撮影が終わって帰ってくると「また行きたいな」と思ってしまいます。「なぜ山を登るのか-そこに山があるからだ」という言葉がありますが、そうとしか言えないものを感じます。
ガイド:
自然遺産を撮影していて苦労するのはどんなところですか?
高城ディレクター:
撮影自体もたいへんですが、自分がそのとき感じたものを画面に定着しきれていないのではないかという点がいつも気になります。自然が見せてくれる表情をいかに逃さず撮るか、いかに自分の感動を伝えるか、その点に苦労します。
フランス、ヴェゼール渓谷の壁画。氷河期の頃、ヨーロッパはいまよりもはるかに寒く、マンモスが闊歩する雪原が広がっていた。©TBS「世界遺産」 ※写真はクリックで拡大 |
逆に楽しいのは?
高城ディレクター:
思わぬ景色が撮れたときです。番組がはじまった頃は、雲ひとつない晴天のなか撮影することがいいのだと思っていましたが、しばらく撮影しているとそうでもないことに気がつきました。たとえばキリマンジャロを撮影したときは雨季でした。ガイドやポーターが「なぜこんな時期に登るんだ」と文句を言うほどで、雨や雪のなか登るのは本当にたいへんでした。でも夕方、雨が途切れて太陽が出てきて、いい雲、いい光のなか撮影することができました。結果的には光あり雨あり雪ありで、キリマンジャロの様々な表情を撮ることができました。自然が語りかけてくれる言葉がふと聞き取れたとき、何ものにも変えがたい喜びを感じます。
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