世界中に存在するピラミッド
ピラミッドの語源は古代ギリシアの三角形のパン「ピラミス」だと言われている。もともとはエジプトのピラミッドを示したが、マヤやアステカの同型の遺跡がピラミッドと名づけられるようになると、錘(すい)の形をした建築物は一般にピラミッドと呼ばれるようになった。中米だけでも千以上のピラミッドがあるといわれ、世界遺産にも数多くのピラミッドが登録されている。今回は世界遺産、あるいは各国の世界遺産暫定リストに登録されている世界のピラミッドを紹介しよう。
ピラミッド型の理由
幼い頃、砂場や砂浜で山を作らなかっただろうか? 人が高いもの、大きいものを自然のものから造ろうとしたとき、誰でも思いつくのは石や土を積み上げることだ。すると形は自然と錘になる。だから文明化が進んでいない民族や太古の昔の遺跡にはピラミッド型のものが多い。たとえばタヒチ島のマラエと呼ばれる祭壇や日本の円墳なども錘の形をとっているし、モヘンジョダロのような古代遺跡の積み上げられたレンガもピラミッド型に見えなくもない。ピラミッド型のもうひとつの理由は、山を模している遺跡が多いことだ。古代遺跡は、空は神々の世界、地下は死の世界というイメージで造られていることが多い。だから天に近い大木や山は世界各地の文化で神聖なものと見なされていたし、一方で墓は地下に造られることが多かった。そういった理由で、山を模したピラミッド型の建築物は、天国を表現していたり、神々と交信を行う神殿や祭壇として建てられた。
以下ではアジア、中東とアフリカ、中南米のピラミッド型の世界遺産、あるいは暫定リスト記載の物件を順次紹介しよう(■「世界遺産名」:国名、登録年、登録基準)。
アジアのピラミッド
秦の始皇陵 |
中国、1987年、文化遺産(i)(iii)(iv)(vi)
紀元前200年前後に造られた、東西・南北ともに約350m、高さ76mの四角錘の王陵。東に1.5kmの位置に兵馬俑坑がある。約70万の人数と約40年の歳月をかけて造られ、内部には未確認ながら広大な地下宮殿があると言われている。中国や日本の王陵は錘の形をとるものが少なくない。
ボロブドゥール |
インドネシア、1991年、文化遺産(i)(ii)(vi)
6層の四角形の回廊に3層の円形の回廊が積み重なったピラミッド型の仏教遺跡。800年前後に約50年をかけて建築された。世界の中心であり、神々が住まうメール山(須弥山)を模していると言われている。仏教やヒンドゥー教の寺院には、アンコール・ワットやバイヨンのようにメール山を模した遺跡が多い。
紹介記事はこちら>>ボロブドゥール寺院遺跡群/インドネシア
ダマヤンジー寺院 |
ミャンマー、暫定リスト記載の物件
パゴダとは仏教の仏塔で、釈迦の住む家を意味する。ミャンマーのパガンには数千のパゴダがあり、大きいものは回廊を積み重ねたピラミッド型になっている。写真は1165年前後建造のダマヤンジー寺院。一辺約60mの錘型で高さも約60m。ナラトゥ王が建築したが、暗殺されたため未完成のまま終わった。
紹介記事はこちら>>未来の世界遺産2 バガン
チョガ・ザンビールのジッグラト |
イラン、1979年、文化遺産(iii)(iv)
一辺105mの正方形の四角錘で、五層構造のジッグラト。紀元前13世紀前後のエラム王国時代に建てられた。ジッグラトとは紀元前3,000年頃からメソポタミア地方で造られたレンガ造りの聖塔で、20基程度が発見されている。最大規模を誇るこのチョガ・ザンビール以外にも、シリアのマリ遺跡やイラクのウル遺跡のジッグラトが有名。
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