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世界遺産が消える!危機遺産と新たなる危機(2ページ目)

世界遺産には危機遺産と呼ばれる今まさに消えつつある遺産がある。また世界遺産になったために崩壊の危機にある遺産もある。遺産保護は世界遺産条約の要。今回は危機遺産と世界中の遺産を襲う新たな危機を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

救われた世界遺産

これまで危機遺産に登録されたものの、その後状態が改善してリストから外れたものの例を紹介しよう。

ドブロヴニク旧市街
ドブロヴニク旧市街。ほとんど修復されたが、実はドブロヴニクにはまだあちこちに砲弾の跡が残っている。
■ンゴロンゴロ保全地域(タンザニア):1984年登録→1989年削除
管理が不十分で、密猟や自動車の不法侵入、域周辺における耕作や放牧、火事などによって遺産の状態悪化が見られたことから、1984年に危機遺産リストに登録された。その後財政支援が充実し、管理システムがある程度整備されたことでリストから削除された。

■ドブロヴニク旧市街(クロアチア):1991年登録→1998年削除
1991年からはじまったユーゴスラビア紛争において、クロアチアが独立を求めてセルビア人勢力と対立。ドブロヴニクも戦場となり、砲撃を受けて崩壊の危機に直面した。1995年にクロアチアが独立して戦争は終結。保護計画に進展が見られたとして1998年にリストから削除された。

■イグアス国立公園(ブラジル):1999年登録→2001年削除
道路建設による環境への影響を懸念して危機遺産リストに登録された。その後道路計画が変更されたためにリストから削除された。近年このように世界遺産周辺の道路や橋・ビルの建設計画が持ち上がってリストに登録される物件も多い。

イエローストーン
イエローストーンのバイソンの群れ。一時期は30頭を切って絶滅の危機にあったが、現在は5,000頭ほどが暮らしている。
■イエローストーン(アメリカ):1995年登録→2003年削除
鉱山開発や観光に伴うゴミなどの問題、水質汚濁、バイソンの個体数減少などが深刻化したため、危機遺産リストに登録された。その後、鉱山の開発計画の見直しや国立公園の管理体制が充実したためリストから外された。

■アンコール(カンボジア):1992年登録→2004年削除
1949年の独立から戦争・内戦を繰り返してきたカンボジア。アンコールは遺跡の崩壊・盗掘・略奪の危機に直面し、世界遺産登録と同時に危機遺産リストに掲載された。その後世界各国の支援や国内の保護・修復活動の高まりによって状況が改善したとしてリストから外された。

■ケルン大聖堂(ドイツ):2004年登録→2006年削除
近郊に高層ビルの建築計画が持ち上がったことから、普遍的価値をもった景観を損ねるとして、世界遺産からの抹消も検討された。しかし、計画の縮小が決まったことから、2006年7月、反対にリストから外された。

ハンピ
自然と遺跡が融合した幻想的な景色を見せるハンピの建造物群。2006年7月に危機遺産リストを外れた。
■ハンピの建造物群(インド):1999年登録→2006年削除
遺跡の中心部に入る橋の建設や違法建築が世界遺産の価値を喪失させるとして、危機遺産リストに登録された。しかし、開発計画の修正や保護活動の進展が見られたためにリストから削除された。

■ガランバ国立公園(コンゴ民主共和国):1984年登録→1992年削除→1996年再登録
主に、絶滅が危惧されていたキタシロサイを保護するために危機遺産リストに登録された。一時は活動が実って危機遺産リストから削除されたが、紛争の激化に伴ってふたたびキタシロサイは絶滅の危機に直面し、1996年に再登録されてしまった。確認されているキタシロサイはなんと10頭以下。絶滅は不可避に近く、ガランバ国立公園の世界遺産からの抹消も示唆されている。

各国の世界遺産を同時に襲う新たな危機については次のページへ。
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