名所・旧跡/関東の名所・旧跡

絹の歴史を世界遺産に!富岡製糸場【群馬】(2ページ目)

富岡製糸場は、日本の工業化の一歩として明治政府が輸出用の生糸を大量生産するために作られた工場でした。115年間の操業停止後も明治時代の建物を大事に引き継いでおり、絹産業の歴史を未来に伝えるべく、日本の近代産業遺産としては初の世界遺産登録を目指している名所なのです。

村田 博之

執筆者:村田 博之

名所・旧跡ガイド

広い場内に明治生まれの建物がそのまま残ります 

富岡製糸場(5)/東繭倉庫

正門から見た富岡製糸場の東繭倉庫。富岡製糸場は場内の一部を見学することができます(2009年1月撮影)

富岡製糸場は、2005年(平成17年)10月に片倉工業から富岡市に建物を寄贈され、敷地は富岡市が買収し、現在は富岡市が管理しています。

特筆すべきは明治時代初期、製糸場設立時に造られた建物がほとんどそのまま残っているということ。明治政府が造った官営工場の中で創業当時の姿を残しているのは富岡製糸場のみです。

また15,000坪を超える製糸場の内部も操業を停止した1987年(昭和62年)当時の雰囲気のままで残されています。広い場内において公開されている見学コースはごく一部分ではありますが、当時の製糸場の雰囲気を体感するには十分ですね。

正門から見て正面に位置する大きな建物は、全長100メートルを超す東繭倉庫(ひがしまゆそうこ)。建物の大きさに圧倒されますね。木材で造った骨組みの間にレンガ壁を積む「木骨レンガ造」という当時の日本では珍しい工法で造られました。

 

富岡製糸場(6)/女工館

東繭倉庫の通りにある女工館。糸繰りの技術を教えるフランス人教師の住居です(2009年1月撮影)

東繭倉庫沿いに左手に歩くと、製糸場に勤める日本人の工女に糸繰りの技術を指導したフランス人教師の住居として造られた女工館があります。こちらも木骨レンガ造ですが、住居ということもあってモダンな造りとなっています。

全国から集まった工女は富岡製糸場で生糸を作る技術を習得した後、地元に戻って製糸を広めるために活躍しました。まさに富岡製糸場は近代化の先駆としての役割を担っていた訳ですね。

 

富岡製糸場(7)/繰糸場(そうしじょう)

繭から生糸を作る繰糸場(そうしじょう)。一部ですが中を見学できます(2009年1月撮影)

女工館の先にあるのが繰糸場(そうしじょう)。蚕の繭から生糸を作るための作業場所です。ここで多くの工女が日々作業をしていました。

全長140メートルという細長い建物の全景を見学コースから見ることはできませんが、建物の半分程度まで中に入ることが可能なので、その大きさを実感することができます。

 

富岡製糸場(8)/繰糸場(そうしじょう)

繰糸場の内部。昭和時代に使われていた自動繰糸機がずらっと並んでいます(2009年1月撮影)

繰糸場の中に入ると、通路の両側にあるカバーのかかった機械が目にとまります。これは昭和40年代から操業停止まで使っていた自動繰糸機。製糸場が創業した時はフランス式の機械が入っていたとのことです。

見学コースの奥には、この自動繰糸機を使って生糸を作っている様子をビデオで紹介しているコーナーがありますので、ビデオを見ながら操業時の雰囲気をイメージしてみるのも良さそうですね。

また繰糸場の先には、富岡製糸場建設の指導者であるフランス人技師、ポール・ブリューナと家族の住居であるブリューナ館があります。外観のみの見学ですが、女工館と同じくモダンな造りです。

 

富岡製糸場(9)/西繭倉庫

広大な敷地の向こうに見えるのは西繭倉庫。東繭倉庫と同じ大きさの建物です(2009年1月撮影)

東繭倉庫に戻り、「明治五年」と刻まれたキーストーンがあるアーチをくぐると、目の前にとても広い空間が現れます。

その正面にある建物は西繭倉庫。若干の作りの違いはありますが、東繭倉庫と同じ大きさで、2階部分に乾燥した繭を置いていたとのことです。

西繭倉庫から振り返ると、広い空間の向こうに東繭倉庫と昭和時代に使っていた背の高い煙突などを見ることができます。

 

富岡製糸場(10)/東繭倉庫の内部

東繭倉庫の一部は売店や映像コーナーとして使われています(2009年1月撮影)

西繭倉庫の中には入れないのですが、東繭倉庫は一部が売店やビデオコーナーという形で使われていて、中に入ることができます。

ビデオコーナーの手前には、「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する群馬県内の10の史跡の紹介もされています。売店ではちょっとしたおみやげも購入できますので、立ち寄って見るといいですね。

 

日本初・近代産業遺産としての世界文化遺産登録へ

イコモスからの登録勧告を速報する上毛新聞の号外と登録までのカウントダウン表示

イコモスからの登録勧告を速報する上毛新聞の号外と、富岡製糸場内に掲げられた登録までのカウントダウン表示(2014年5月3日撮影)

世界遺産へ推薦された「富岡製糸場と絹産業遺産群」の今後ですが、2014年6月に開催されるユネスコ世界遺産委員会で世界遺産への登録が審議されます。

これに先立ち、国際記念物会議(イコモス)からは、2014年4月26日に「富岡製糸場と絹産業遺産群」を世界文化遺産へ登録するよう勧告されました。

登録されれば、近代産業遺産としては日本で初めての世界文化遺産となるため、今後の動向に注目が集まります。

 

日本の工業近代化に貢献した富岡製糸場をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。世界文化遺産への登録勧告が出た直後から、多くの方々が見学に訪れていて、入場待ちも発生する状況ではありますが、明治時代の美しいレンガ造りの建物が織りなす風景を楽しみに、富岡製糸場を訪れてみてください。

 

富岡製糸場へのアプローチ

    富岡製糸場へのアクセス

    富岡製糸場へは、高崎から上信電鉄で上州富岡へ。駅からは案内に従って歩きます。

  • 地図:Yahoo! 地図情報
  • 公共交通機関の場合
    <鉄道>
    JR東日本 上越新幹線 高崎駅下車。上信電鉄 下仁田行きの電車に乗り換えて上州富岡駅下車。
    上州富岡駅から富岡製糸場へは、約1キロメートル(徒歩約10分)。駅からは富岡市のキャラクター「お富ちゃん」の案内と、道路に引かれている緑色のラインをたどって歩けば富岡製糸場に行けます。

    ※上信電鉄では、高崎から上州富岡駅までの往復きっぷと富岡製糸場の見学料をセットにした割引きっぷ「富岡製糸場見学往復割引券」を発売しています。
     
  • 車の場合
    上信越自動車道 富岡インターチェンジより、富岡市内中心部へ。富岡製糸場への案内に従います。
    富岡製糸場から少し離れた所にある市営駐車場(上町、宮本町、富岡駅東)に車を止めて、富岡駐車場までは歩く形です。

    ※世界文化遺産への登録勧告が出てから、たくさんの方々が見学に訪れていますので、駐車場の入場待ちが発生することがあります。時間に余裕をもつことをお薦めします。

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