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石橋からの豪快放水に感動!通潤橋【熊本】

九州には江戸時代から明治、大正にかけて造られた石橋が数多く残ります。今回はガイドが魅了された石橋から熊本の通潤橋(つうじゅんきょう)をご紹介。一目見たら忘れない、強い印象が残る素敵な橋です。

村田 博之

執筆者:村田 博之

名所・旧跡ガイド

一目見たら忘れられない通潤橋(つうじゅんきょう)

今回の行き先は、【熊本】 石橋からの豪快放水に感動、通潤橋

今回の行き先は、【熊本】 石橋からの豪快放水に感動、通潤橋

九州では、江戸時代から明治、大正時代にかけて数多くの石橋が造られました。

21世紀を迎えた現在でも石橋がたくさん残っており、人々の暮らしを維持するためのかけ橋となると同時に、長崎の眼鏡橋のように石橋独特の美しい景観から観光資源となっている橋もたくさんあります。

今回は、九州の石橋の中から、ガイドが魅了された橋の一つとして、熊本県にある通潤橋(つうじゅんきょう)をご紹介します。他の石橋とは異なる目的で作られたこの通潤橋、一目見たら忘れられないとても強い印象を残してくれる橋なのです。

先人の知恵で作られた日本最大級の水路橋

通潤橋(1)
観光放水中の通潤橋。水路橋として江戸時代に作られてから150年以上に渡り、人々の暮らしをずっと支えています(2004年5月撮影)
通潤橋Yahoo! 地図情報)は、熊本県の中部、阿蘇・外輪山の南すそに位置する山都町(旧 矢部町)に作られた石橋。人が渡る橋ではなく、水を通す水路橋です。水路橋としては日本最大級で、1960年に国の重要文化財として認定されています。

通潤橋(2)
普段の通潤橋。画像に向かって左から右へ水が流れています(2003年8月撮影)
通潤橋の近くにある白糸台地に住む人たちは、飲料水や田畑に使う農業用水の確保に常に悩まされていました。

江戸時代の後期、惣庄屋・布田保之助がこの事態を見かねて、白糸台地に水を引くことを計画します。しかし周囲に流れる川はいくつかあるものの、深い渓谷を形作っているため台地の上に単純に水を引くことは不可能でした。

そこで近くを流れる笹原川の6キロメートル上流から水路を引くことを考えますが、台地の上に水を通すためには、台地を刻んでいる五郎ヶ滝川をまたぐ橋が必要。それも最低30メートル以上の高さが必要なのに、当時の技術で作れる石橋の高さは最高20メートルが限度だったのです。

頓挫するかに思われたこの計画ですが、ある科学の原理により難題を克服することができました。ビニールホースなどの管で水の入口の高さより出口の高さが低い時、ホースの途中の高さをどのように変えても水は出口に向かって流れていこうとします。

熊本城の石垣
通潤橋を造る際の石の積み方は熊本城の石垣(武者返し)を参考にしたとのこと(2005年8月撮影)
この「連通管(れんつうかん)の原理」を応用すれば、川面から20メートルの高さに橋を作り、対岸の白糸台地より高い位置から橋に通した水路に水を流せば、対岸で白糸台地の高さまで水路を引き上げても水を通せることがわかりました。

それから1年8ヶ月という短い期間で、通潤橋は1854年7月に無事完成。完成するまでには幾多の苦労があり、流れる水の強い力にも耐えられるよう設計変更を重ね、熊本城の石垣の積み方を参考に強固な構造の橋を作り上げました。

通潤橋は、時代の変遷を経て150年以上たった現代に至っても白糸台地に水を供給する大事な使命を全うしています。先人の知恵が今でも十二分に活用されているのが凄いですね。

橋からの豪快な放水は必見!

通潤橋(3)
通潤橋の上を歩く。3本の水路が対岸の白糸台地に向かって延びていることがわかります(2004年5月撮影)
通潤橋の近くには、道の駅 通潤橋があるので、車で来た人は道の駅に車を止めてゆっくり見学することが可能。道の駅から通潤橋までは遊歩道が整備されていて歩いて5分ほどの距離です。

元は水路橋として作られた通潤橋ですが、橋の上は6メートルほどの幅があるので、人も歩くことが可能。遊歩道から橋の上に登る階段がちょっと急なので、歩きやすい靴で行くのがベターです。橋の上に上がると3本の水路があることがはっきりとわかります。

通潤橋(4)
橋の真ん中から勢いよく吹き出した水が川面に落ちていきます。この観光放水は、田植え時期や冬季を避けて、定期的に行われています(2004年5月撮影)
さて、この通潤橋の最大の魅力は、なんといっても橋の真ん中から行われる豪快な放水。

係の方が橋の上にある栓を抜くと、水路からの水が下を流れる五郎ヶ滝川に向かって大きな音を立てて落ちていきます。元々は水路につまる木の葉などのゴミを一気に掃除するための放水口なのですが、豪快な放水が作り出す美しいカーブと、橋そのもののアーチが調和して美しい風景を織りなすことから、いつしか観光名所となりました。

この放水は、いつ行っても見られるものではなく、観光イベントの一つとして週末を中心に1日1回観光放水として行われます。なお水を供給するという本来の役割が最優先なので、水が必要となる田植えの時期や水不足が発生している時、また冬季には観光放水は行われていません。

観光放水の予定は、山都町のWebサイトに掲載されていますので、事前に観光放水が行われる日を調べておくと良いでしょう。


豪快な放水が楽しめる日本最大級の水路橋、通潤橋のご紹介、いかがでしたか?通潤橋の近くにも日本一大きい石橋である霊台橋(れいたいきょう)など個性的な石橋が数多くありますので、これらの橋を巡っていくのも楽しそうです。暑い夏を涼しく過ごす旅のバリエーションの一つとして、今年は熊本の通潤橋にぜひ出かけてみて下さい。

通潤橋へのアプローチ

  • 地図:Yahoo! 地図情報
  • 公共交通機関の場合
    <飛行機>
    熊本空港から熊本駅行き空港連絡バスで熊本交通センター下車。熊本バス 矢部行き、または馬見原行きに乗車して、矢部(浜町)バス停下車。
    <JR>
    JR九州 鹿児島線 熊本駅より、バスで熊本交通センター下車。熊本交通センターから先は<飛行機>のルートと同じ。
  • 車の場合
    熊本空港から国道443号線で御船町へ向かい、国道445号線で山都町へ。山都町矢部で国道218号線と交差するあたりからは、道の駅通潤橋への案内に従います。

  • 熊本県山都町
  • 通潤橋(熊本県山都町)
  • 通潤橋(よかとこBY・写真満載九州観光)
  • 道の駅 通潤橋(熊本県山都町)
    ◇「名所・旧跡めぐり」ガイドの熊本に関する他の記事はこちらです。
  • 阿蘇の雄大な眺めと温泉を楽しむ【熊本】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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