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ドイツの戦争叙事詩「ドレスデン、運命の日」(2ページ目)

4/21より公開されるドイツ映画『ドレスデン、運命の日』。第二次大戦末期に起こった「ドレスデン大空襲」の中でさまよい、引き裂かれる家族と恋人たちの物語。美しいバロックの町は一夜にして廃墟と化したのでした。

執筆者:カルカ 麻美

「ドレスデン空襲」を初めて本格的に描いた映画

ドレスデン空襲はドイツにとって大きな戦争の悲劇だったにも関わらず、これまでドラマや映画の題材になったことはありませんでした。ドイツは戦後ずっと、加害者としての立場で戦争と向き合ってきたのです。そのため、ユダヤ人大虐殺や独裁者ヒトラーに関する作品は数多く制作されてきました。そして戦後60年という歳月を経て、ドイツはようやく別の視点からも戦争に取り組み始めています。

「なぜ今、“ドレスデン”なのか?」との問いに、この映画のプロデューサーは次のように答えています。「今まで語られなかった歴史の事実を、戦争を経験した世代が生きているうちに作品化したかった。」またリヒター監督は、「戦争を知らない若い世代に戦争のむごさ、一瞬にして全てを失うというのがどういうことなのか伝えたかった。若いときに見たインパクトのあるものは、頭の片隅にいつまでも残っていると思うから。」と言っています。

ドレスデンのフラウエン教会
2005年に美しく甦ったフラウエン教会は、和解のシンボル
ただし『ドレスデン、運命の日』は被害者のみの視点からではなく、ドイツ・イギリス双方からの視点で描かれた映画。リヒター監督の「戦争とは無意味なもの」という強い反戦メッセージが込められています。

映画の中では、この空襲で崩壊し、11年間の再建工事を経て2005年に甦ったフラウエン教会も登場します。イギリスから「和解の印」として贈られた塔の十字架が立つ、美しいフラウエン教会。瓦礫の山から元の姿に戻った教会を見ていると、こみ上げてくるものがあります。

この教会については、ガイド記事「美しく甦ったドレスデンのフラウエン教会」で詳しくご紹介しています。



ドイツでは2006年3月に2夜連続のテレビドラマとして放送され、1,200万人以上もの視聴者数を記録した作品。ドイツ中の注目を集めていた作品だったため、ガイドもしっかり見ていました。みなさんにもぜひご覧になっていただきたいと思います。この映画を見てからドレスデンに行き、フラウエン教会を訪れ、町並みを歩いてみると、この町に対するより深い感情が沸き起こってくるに違いありません。

【DATA】
『ドレスデン、運命の日』 (原題:DRESDEN)
4月21日(土)~シャンテシネ他、全国順次ロードショー
上映劇場情報はこちら
監督:ローラント・ズゾ・リヒター
プロデューサー:ニコ・ホフマン
脚本:シュテファン・コルディッツ
<キャスト>
アンナ……フェリツィタス・ヴォル
ロバート……ジョン・ライト
アレクサンダー……ベンヤミン・サドラー

2006年度作品/ドイツ映画/ドイツ語/150分
後援:ドイツ連邦共和国大使館、ドイツ観光局
配給:アルバトロス・フィルム
宣伝:アステア
日本語版公式サイト

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  • ベルリンと東の町
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