美しいバロックの町ドレスデンが、第二次世界大戦中、空襲で一夜にして廃墟と化した史実を物語化したドイツ映画『ドレスデン、運命の日』。壮絶な爆撃の恐怖と必死に戦う人々、敵国同士でありながら恋に落ちる男女の運命が、生々しく描かれている大作です。日本では4月21日から全国で順次公開


大戦末期の恋人たちの運命

『ドレスデン、運命の日』
戦争中、ドレスデンの町で出会った二人の男女の恋物語

第二次世界大戦末期。産業中心地の一つであり交通の要衝でもあったドレスデンは、空爆を免れ数少ない無傷のドイツ都市として生き残っていました。しかし映画の主人公アンナが看護婦として働く病院では、日々負傷した兵士たちが運ばれてきます。

彼らの手当てに毎日走り回る中、病院の地下に隠れている一人の負傷兵を見つけたアンナ。ドイツの脱走兵だと思い、匿って看病するうち、アンナは彼が敵国イギリスの兵士だということに気づきます。彼はドイツの上空で追撃され、ドレスデンの町に身を潜めていたのでした。ショックを受けながらも、この謎めいたイギリス兵士に心惹かれていく気持ちを抑えきれないアンナ。映画は、この二人の恋物語を中心に進んでいきます。


美しい町が一夜にして崩壊した「ドレスデン大空襲」

ドレスデン
重厚な歴史的建築物が立ち並ぶドレスデンの現在の様子
ドイツ東部ザクセン州にあるドレスデンは、エルベ川のほとりにバロック建築が立ち並ぶ美しい町。ツヴィンガー城、ゼンパーオペラ、フラウエン教会など素晴らしい建築物が集まり、それらが見られるエルベ川沿いの景観は、現在世界遺産に登録されています。

この文化溢れる美しい町は、1945年2月13日、連合軍の大空爆を受けます。これにより町の4分の3が破壊。空爆は2日間にわたって行われ、ドレスデンのありとあらゆる建築物が崩壊し、町は廃墟と化しました。当時の写真を見ると、文字通り「廃墟」状態のドレスデンの町に言葉を失います。長い年月をかけて建てられた歴史ある建築物の数々が、一瞬にして破壊されたドレスデンの大空襲。犠牲者の数は2万人以上。映画ではこの空爆の凄まじさ、その中で逃げ惑い命を落としていく人々、生き延びた人々が廃墟と化した町を目の当たりにして呆然と立ち尽くす様子などが、壮大なスケールで生々しく描かれています。

『ドレスデン、運命の日』
大空襲で、ドレスデンの町は廃墟と化す

ローラント・ズゾ・リヒター監督は、空襲がどれほど凄まじいものだったか、戦災とは実際どのようなものだったのかを、この映画で可能な限りリアルに伝えたかったと言います。そのため大がかりなセットを作って大火災を実際に起こし、爆撃の録音を大音量で流し、役者、スタッフ共、身体と精神の限界のところまで挑戦したそうです。体の髄まで響き渡る爆撃音は本当に恐怖の念を呼び起こし、みな足がガクガクして少し気分が悪くなりさえしたそう。そんな本格的なセットの中、俳優たちはもはや演技をしているというより、究極の状態を体感し自然に反応していたと監督は振り返ります。

「ドレスデン大空襲」を初めて描いたこの映画に込められた制作チームの思いとは? 次のページ