癒しの旅/甲信越の癒しの旅

【信州】名作でめぐる秋の棚田と幻の蕎麦(2ページ目)

北信州・飯山市。ここには映画「阿弥陀堂だより」のロケ地となった癒しの風景があります。紅葉間近の山里や棚田。心安らぐ景色と味覚が待っています。

執筆者:本多 美也子


映画「阿弥陀堂だより」を体感する癒しの棚田風景

ロケセットの阿弥陀堂は内部も見学化。小説・映画の世界がそのまま残っています
さて、この福島新田の山頂には小さな阿弥陀堂があります。コスモスとススキに囲まれた小さな阿弥陀堂からは、棚田と眼下の千曲川の一望。お堂の縁側に腰掛ければ、誰もがしばし、その風景に見とれてしまうのです。
実はこのお堂、ほんものではありません。
映画阿弥陀堂だよりで使われたセットなのです。映画完成後は撤収されるはずだったのですが、あまりに周辺の風景にマッチしており、地域の要望もあって、そのままの形で残されたのです。


原作は信州在住の医師・南木佳士の心なごむ作品。 文春文庫530円
「阿弥陀堂だより」は芥川賞作家・南木佳士の原作で、小泉堯史監督によって映画化された作品。
都会でのストレスの多い職場で心に病を得た妻をつれて、夫の故郷、信州へ戻る中年夫妻。そこでの風景や人とのふれあいによって、心を癒していく物語です。
原作も映画も両方読み、観たのですが、どちらも味わいがあって、都市部で生活する者なら、一度は触れてみたい、自然と人情に包まれた温かい人間らしい暮らしが描かれています。

作品の中に登場する「阿弥陀堂」には北林谷栄が演ずる、90歳のおばあさんがたったひとりで暮らしいてる。貧しいが不平不満はなく、人や自然に感謝する日々。
忙しさを理由にする私たちが、生活の中で見失い、そぎ取られていく優しさや温かさを、再確認させてくれるおばあさんの存在。
この地に立つと、小説、映画を通して感じた感動がさらにまた、棚田の中でよみがえり、新たに大きな力が湧いてくるように感じさせます。



紅葉とはまたちょっと違う秋、心象風景のような癒しの情景に出会ってみませんか。



次ページでは、飯山で食べたい名物の笹寿司幻の富倉蕎麦をご紹介します。
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