刈り入れ後の稲穂を干す棚田。コスモスとススキが揺れ、眼下にはきらきら光る川の流れ。
はあ、っと心地よい溜息が思わず唇からこぼれる癒しの秋景色。
そこは名作の舞台として、映画のロケ地となった場所。
真っ赤に染まる秋よりも、懐かしさと切なさを感じる山里の風景こそ癒しにふさわしいのです。
秋桜に囲まれた棚田と寺町を歩く信州・飯山の里
長野県北部、斑尾高原や野沢温泉にも近い飯山市。戸狩温泉やスキー場がある地として知られていますが、その街並み、山里は情緒たっぷり。もともと仏壇製作が盛んなところで、今ではその細工技術や漆技術を継承した工芸品の里としても知られています。
また、寺が多く、島崎藤村の「破戒」の舞台となった真宗寺をはじめ、小さいながらも歴史とおもむきのある寺が20ヶ寺もある土地柄。
寺町散策はそれほど有名ではありませんが、隠れた人気で、寺町の細い散策路には、飯山の特産品である和紙の工房もあり、和紙漉き体験もできます。
雁木(がんぎ)と呼ぶ、雪除けの木製アーケードを通りながら、市内の街並み散策だけでも楽しいのですが、おすすめは少し離れた山里。
福島新田の棚田のまわりには、コスモスや秋の野花がいっぱい |
山腹の斜面を利用し広大なもので、中腹の「さんべ」と呼ぶ地域の公民館からゆっくりと棚田の中を歩けるようになっています。
福島地区には三十三観音の石仏が点在し、コスモスやススキの畦道を仏様の笑顔を眺めながら、山頂への散策がおすすめです。この山頂には絶景の棚田風景ともうひとつ、心を癒すとっておきの場所があるんです。
次ページでは”とっておきの場所”と、この棚田を舞台にした映画にまつわるエピソード。そして新蕎麦シーズンを迎える幻の蕎麦をご紹介しましょう。