その国の文化と歴史を知る!
ガイド:グローバル人材に必要とされる資質についてはよく理解することができました。次に、ではどうやって、世界で活躍できる人材を育成できるかについてお伺いしたいと思います。齋藤氏:異文化理解ということだと思います。そのためには、やはり、月並みですが、その国固有の文化、歴史、習慣を学ぶことが必要です。その努力なしに、異文化を理解し、またこちらの文化を理解させることはできないといえます。その点、韓国のサムスンは、学ぶべき実践を積んでいると思います。地域専門家制度といって、社員に1年間給与を渡して、その国で何をしてもいいから、文化と語学習得ために現地に溶け込むことを課します。全く仕事から解放されて、自由にその国での生活を営むのです。1年間、社員は、会社には直接の貢献を一切しないわけですが、その後、大きく貢献することが期待されています。私は日本ももっと人的余裕を持つべきだと考えています。
異文化理解の鍵は「多様性」 |
齋藤氏:グローバル人材の育成とは、さらに言葉を変えて言えば、「多様性の理解と受容」であると私は考えています。ですから、企業や組織の中で、ひとところに留まらず、様々な部署や場所で、(世界も含めて)様々な経験をつむことがグローバル人材育成には不可欠です。必ずしも、世界に出かけるということだけでなく、「多様性」つまりは、身近な身の回りにある、多様性を理解し、受容する能力の開発も非常に大切だと考えています。
ガイド:身近な多様性とグローバル人材の育成について、もう少し、説明していただけますか?
齋藤氏:今、母校の立教大学大学院で教鞭をとっていますが、そこで、リスク管理、CSRと企業といったいくつかのテーマでゼミを持っています。研究科には、様々な社会人の方が参加されており、中にはソーシャル・アントレプレナーを目指している人もいます。そんな中、大切な視点として、「多様性」英語では、"diversity"を取り上げることがあります。この多様性には、実は、障碍を持つ人も含まれているのです。障碍を持つ人も含んで、例えその人がどのような人であっても、受容し理解する視点と考え方。これらは根っこのところで、つながっているということなのです。身近なところにある「多様性」への理解と受容が、実は遠く離れた国々の「異文化としての多様性」の理解につながっているのです。
グローバル人材育成は全人的教育の成果!?
ガイド:そうすると、グローバル人材育成というのは、いわば、「全人的」な教育ということになるように思いますが・・・。齋藤氏:ある意味ではそうなると思います。CSRという倫理を含んだ社会性と英語などの高度なコミュニケーション能力が求められるわけですから育成には時間がかかります。ただ、スキル的なことで言えば、私自身が日立製作所で体験した、スペイン語の集中研修は、今でも効果があったと感じています。4週間と3週間の2回に分けて、一切日本語禁止での参加でしたが、実際、現地に暮らして覚えたはずのドイツ語より、使える物になっています。それと付け加えて言えば、これからのグローバル人材としては、英語は話せて当たり前、次はその現地の言葉ができることが重要になるといえるでしょう。
ガイド:英語などのスキル的なものは、集中して習得し、異文化理解や多様性への資質は、様々な経験を通して理解、習得していくことが、グローバル人材育成への道ということですね!まだまだお伺いしたい点がつきませんが、最後にビジネス英語を読んで下さっている、読者の方へのメッセージをお願いいたします!
齋藤氏:ことグローバル人材としての資質は、やはり組織ではなく、個人一人一人の努力にかかっていると思います。私の持論として、「組織そのものは意思を持たない」「組織を構成する一人一人の意思次第」と言う思いがあります。最後は一人一人の人間なのです。一人一人の思いと行動が変化を作り出していくということを忘れないで置いてほしいと思います。
ガイド:本日は、大変ありがとうございました!
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