あるべきグローバル人材育成とは?
日本在外企業協会(JOEA)
業務部長
立教大学大学院
21世紀社会デザイン研究科教授
(社)日本在外企業協会業務部長(日立製作所より出向),放送大学非常勤講師。立教大学大学院修士課程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程単位取得。(株)日立製作所入所後,日立ヨーロッパ社,日立オーストラリア社長など一貫して国際営業・経営に携わった後,本社国際事業本部渉外部長,ロスアンゼルスコーポレート事務所長など国際通商問題への経済界としての取り組みや企業市民活動を含む様々な企業外交や社会活動の第一線の現場に携わり2003年10月より現職。現在は主にグローバル時代における企業の社会的責任(CSR)やビジネス・リスクをテーマ領域として取り組んでいる。日本経団連国際労働委員会政策部会委員,日本規格協会リスクマネジメント規格国内委員会委員,日本ILO協会広報委員会委員,21世紀社会デザイン研究学会理事。
今、急速なグローバル化、とりわけアジア地域のグローバル化が進む中、日本のグローバル戦略の大幅な立ち遅れが各方面で指摘されています。その日本のグローバル展開の遅れに最も大きな障壁として指摘されているのが、グローバルに活躍できる日本人人材の不足です。高い技術力を誇りながら、世界標準が取れない。経営判断のスピードの遅さで世界市場で出遅れる。この危機的な現状を打破するために求められるグローバル人材育成について、海外で事業展開する企業の集まりである、社団法人日本在外企業協会(JOEA)の齋藤哲男業務部長にお話しをお伺いいたしました!
ガイド:まずはじめに、そもそもグローバル人材とはどのような人材であると齋藤さんはお考えでしょうか?
齋藤氏:私の立場から、グローバル人材を定義すると、次の2点を含む人材ということができます。1つは、社会的責任へのリテラシー、2つ目は、論理性です。まず、第1番目の社会的責任へのリテラシーですが、これは、企業また組織として、その企業理念も含んで、世界各地でのその企業、組織が果たす社会的役割を、理解、把握し、それにのっとって、行動、判断できる資質をもった人材ということです。次の2点目の「論理性」とは、説明能力と同時に説得能力を保持しているということです。
じつは、一般的に、グローバル人材という話になると、ついつい、スキル面、特に「英語力」であるとか、グローバル・コミュニケーション能力であるとか、スキルのみがクローズUPされがちですが、長年の経験と研究から言えば、先にあげた2つの資質と能力、企業・組織が世界の中で果たすCSR的役割分担を理解し、行動できることと、その企業・組織の理念や方針を相手に論理的に説明、納得させられる能力を身に付けていることが、何より重要だと考えています。
ガイド:英語以前の資質、能力が必要であるということですね!
齋藤氏:そのとおりです。私は日立製作所に所属していますが、今、日本の大企業は、グローバル・オペレーションを行っています。その際には、日本と異なる文化・習慣があるために、様々な問題が発生してきます。それは、時には、従業員の不祥事であったり、労務管理上の問題であったりします。しかし、先にあげた2つのポイントを、現地にいる日本人マネージャーが身に付けていると、問題を最小限で抑えることができるのです。
この日本在外企業協会(JOEA:Japan Overseas Enterprises Association)というのは、70年代の高度成長の際に、日本企業の進出を快く思わない反日感情が東南アジアを中心に高まった時期に、企業がそれぞれの社会的責任をより自覚して、海外での事業展開をスムーズにすることを支援する目的で設立された経緯があります。今では、CSRという言葉がありますが、これの先駆け、先導する役割があったのです。その時代時代のニーズによって、具体的な役割は変化しましたが、今でも、一貫して、その立場は変わっていません。かつては、今では普通になってきた海外子女の教育問題にも積極的に取り組んできました。現在では、政府等への様々な提言や、中国などの新興国でのリスク管理を中心にサポートしています。いずれも、グローバル人材育成の要素を含んでいるのです。
いわば、企業が必要とするグローバル人材というのは、企業の果たすグローバルな立ち位置を理解し、またそれを、きちんと現地の人たちが理解かつ納得できるように論理的に説明することができる人材だということなのです。
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