フランス/フランスの観光・世界遺産

若きウィドウ皇女マルゲリート、その愛の軌跡(後編) ブルー修道院、永遠の愛の証(3ページ目)

名門ハプスブルク家出身、薄幸の皇女マルゲリートが若くして失った最愛の夫フィリベールをしのび、永遠の愛を誓って完成させたブルー修道院。華麗なフランボヤンゴシックの美しい姿に秘められた悲恋の軌跡。

執筆者:赤木 滋生

教会に眠るフィリベールとマルゲリート


祭壇正面には色鮮やかにステンドグラスがはめ込まれ、東から差し込む光りがまばゆいほどの美しさ。
ブルー修道院のもっともブルー修道院らしいところはなんと言っても教会部分です。ここは公妃マルゲリートと夫の男爵フィリベール、そして最初にフィリベールの父フィリップの傷の回復を願って建造を命じたフィリベールの母を埋葬した廟でもあります。ところでこの義母の名も実はマルゲリート。そこで公妃をオーストリアのマルゲリート、義母はブルボンのマルゲリートと呼び区別されています。ちなみにフィリベールのあだ名はル・ボー(le Beau)。今風の日本語で言えばイケ面。マルゲリートがめろめろになるのも無理はない男前だったそうです。


向かって左側、おかっぱの男性がフィリベール。右側の女性はマルゲリート。
上から見ると十字架の形をした教会の右から入ると、左手に仰ぎ見るような大天井の主廊が広がっています。白い大理石のあっさりした内装と透明ガラスがたっぷりと外光を取り入れとっても明るい雰囲気です。

内陣には中央にフィリベールの見事な大理石像が横たわり北側を見つめています。その北側の壁にはもちろんマルゲリートが見つめ返して横たわっています。南側の壁にはフィリベールの母、ブルボンのマルゲリートがやはり眠っています。



首を左に傾け、愛するマルゲリートを見つめるイケ面のフィリベール・ル・ボー。Philibert le Beauのボーとはフランス語で「美しい」という意味。
祭壇の後ろや内陣の窓には色鮮やかなステンドグラスがはめ込まれ、その1枚にはデューラー風に見える二人が描かれているのが分かるでしょう。

内陣の両側に並ぶ椅子は見事な彫刻の施された樫の木製です。又、中央アーチに飾られたイニシアルはPとM。もちろんフィリベール(Philibert)のPとマルゲリート(Marguerite)のMです。


夫をいとおしげに見返すマルゲリート。白大理石で彫り上げられた彫像は精細な模様がびっしりと入り見事。
甥のシャルル5世の後見人としてマルゲリートの移り住んだ、当時のフランドル地方の美術工芸は絶頂期で、ハプスブルク家はたくさんの優秀な芸術家達をかかえていました。大国フランスとはいえ片田舎の公国にしかすぎないブレスにこのような見事な工芸品を集める事が出来たのも皇帝の娘、マルゲリートの命だからこそでしょう。
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