フランス/フランスの観光・世界遺産

若きウィドウ皇女マルゲリート、その愛の軌跡(後編) ブルー修道院、永遠の愛の証

名門ハプスブルク家出身、薄幸の皇女マルゲリートが若くして失った最愛の夫フィリベールをしのび、永遠の愛を誓って完成させたブルー修道院。華麗なフランボヤンゴシックの美しい姿に秘められた悲恋の軌跡。

執筆者:赤木 滋生


教会への入口は典型的なフランボヤン調。半径が微妙に変わる優雅なアーチ。炎のような模様がフランボヤン(炎)の特徴。

うう、食べた食べた。つい食べ過ぎちゃうんですよね。時間をかけてお話ししながらだとワインも進むしあっという間に3時近くになっちゃいました、急がなきゃ。オンシーズンは6時まで開いてるけれどオフシーズンだと5時まで、しかも12時から2時までは昼休みで閉まってますから注意が必要ですね。さて、いよいよブルー修道院に入ることにいたしましょう。

INDEX
  燃え上がるゴシック
  中庭がたくさん
  教会に眠るフィリベールとマルゲリート
  二回は美術品展示室
  ブルー修道院情報


燃え上がるゴシック


初期のゴシックとは違い高さを余り強調せず、むしろたっぷりと幅を取っている。天井のアーチはゆるやかで、壁面の採光を重視、明るい空間が作られている。彫刻は凝っているがきらびやかさはない。
ブルー修道院全体を見てまず目に付くのがカラフルなチェックのモザイク模様もおしゃれな屋根と燃え上がるような彫刻が特徴的な飾り付けです。初期の重厚さを強調したゴシックと違いなんだかやわらかで優雅な雰囲気をかもしだしていますね。うねりながら立ち上る炎のような模様を多用した事からフランボヤン様式と名付けられた後期ゴシック様式の名建築なんです。

彫刻一つ一つを良く見ると、なめらかなカーブばかりで構成され、とても躍動感があります。アーチも単純な円弧ではなく大小の円弧を複合した優雅な形が多く見受けられます。教会横の入口から中に入って見ましょう。

洗練されたゴシック天井は優雅なリブが複雑に組み上げられ、緩やかなアーチの実現によって窓の面積がより大きくなり明るい雰囲気に。
無骨さの消えた洗練されたフランボヤンゴシックは細密な彫刻を別にすれば意外とシンプルで、むしろ質素にさえ見えます。金箔を貼り付け豪華さを強調した飾りは見向けられません。もちろん途方もない時間と手間をかけた彫刻は、さすがにマルゲリートの実家、ハプスブルク家の権勢と財力の後ろ盾がなければとてもかなわないような費用がかかっていることは明らかですが、しっとりすっきりとした装飾がかえって二人の永遠の愛の誓いを良く表現しているようにも思えます。

普通、修道院や大聖堂は建造に50年、百年かかるのはざらですが、このブルー修道院はなんとわずか25年で完成させてしまいました。夫の死後すぐにハプスブルク家の支配下にあったネーデルランド総督となったマルゲリートは、修道院の建設を命じると共に、多くの優秀なフランドルの彫刻家達を派遣し、すばらしい彫刻装飾群をおしみなく施しました。残念ながら、マルゲリートは完成を見ることなく先に亡くなってしまい、死後2年目にようやく完成、夫と共に教会の中に埋葬されました。
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