『還付金詐欺』という名称
ATMに行って手続を |
事件はテレビ画面の向こう側で起きている、あるいは新聞・雑誌の紙面に書かれていることは自分のこととは違う、どこか別のところで別の人たちが被害に遭っていることであって、自分はいつも画面のこちら側にいて、活字を読む側の人であるという無意識の意識、自分は無関係であるという根拠のない思い込みが、いつまでも減らない、なくならない被害の元となっているのです。
振り込め詐欺師たちは、その電話の中で「還付金」という言葉は使わないようにしているでしょう。また、「世間には『振り込め詐欺』というのがありますが、これは違いますよ」「よく間違われるので困ってるんですよね」といったようなことは当たり前のように言っているはずです。そして、「今日中に手続しないとお金は戻りませんよ」「今すぐにお近くのATMに行って下さい」と急かします。
人を騙すのに道具などいりません。口八丁(くちはっちょう=口が巧みなこと)だけ、言葉だけで相手が勝手に信用してくれるのですから、いくらでも安心させるようなことは言うでしょう。彼らは騙しのプロなのですから、善意の一般市民を騙すことは赤子の手をひねるより簡単だと思っていて、繰り返すほどにより巧みになっていくのです。
彼らの話す内容が、「振り込め詐欺」ではなく「還付金詐欺」でもないと思い込まされて、何百万円も振り込んでしまい、毎年250億円以上の被害が発生しているのが現実なのです。最近、還付金詐欺が増えている背景には、報道される「振り込め詐欺」や「還付金詐欺」という言葉が、実は身近に感じられないからなのではないでしょうか。
たとえば、「メタボ」「メタボリック症候群」と聞けば、「ビール腹」「太り過ぎ」「食べ過ぎ」「胴回り」「食習慣」などの具体的なイメージが湧くものでしょうが、「還付金詐欺」というのは、日頃、縁のない言葉だけに、実感が湧かないのではないでしょうか? その仕組や手口についても、「自分には縁が無いこと」と思っている人は知ろうともしないのではないかと思われます。
つまり、「還付金詐欺」という言葉は、確かに内容的にはその通りで、言葉としても問題はないのですが、何かもっと具体的に内容を知らせる、もっと警戒心を持てるような、分かりやすい言葉があるといいのではないでしょうか。そこで、防犯ガイド佐伯が考えた名称を次ページで紹介します。
→p.4・佐伯の提案『ATM行け詐欺』/関連防犯ガイド記事