防犯/詐欺を防ぐ

“還付金詐欺”は“ATM行け詐欺”だ!(2ページ目)

いまだに後を絶たない「振り込め詐欺」被害の中でも突出して増加しているのが、「還付金詐欺」です。その理由についての分析と被害を防ぐ対処法の提案をします。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド


『還付金詐欺』は『振り込め詐欺』ではない?

還付金詐欺はATMに行くこと
還付金詐欺はATMに行くこと
結局は、振り込みをさせるので「振り込め詐欺」の一つではありますが、実際にかかってくる電話の中では、その他の「振り込め詐欺(恐喝)」で使われている、示談金、弁償・補償金などのような言葉は使われません。「被害者から振り込ませる=振り込め詐欺」と同じだとは、被害者が認知していない点がまず第一に問題です。

「世間で言われている『振り込め詐欺』は、お金を振り込ませるものでしょう? これは、向こうが『振り込む』と言っているのだから、振り込め詐欺ではではないはず」と、思ってしまうのでしょう。「こちらからお金を奪うのではなく、お金を振り込むと言っているのだから、しかも、税務署の人が税金を返すと言っているのだから、『振り込め詐欺』ではない」と、油断してしまうのです。

ところが、実際にはATMまで行かせて、あれこれと操作をさせて、被害者が意識していないうちに「残高照会」を読み上げさせて預貯金の残高を探り出します。そして、「振込みの手続をする」と思い込ませて「振り込み」のボタンを押させます。ATM操作で「振り込み」のボタンは、こちらから振り込むものだと、操作に慣れている人はすぐに気がつくはずですが、「相手の言うとおりにしていればお金が戻ってくる」と思い込んでしまっているのですから、この時点までに相手の言うことに唯々諾々と従ってしまっている人に疑問の気持ちは起こりようもないでしょう。

そもそも、「還付金~納付・徴収された税金に納め過ぎ・減免などがあった場合に、納税者に返される金銭」という言葉は、日常的な言葉ではありません。ごく当たり前の生活をしていれば、それほど聞くことも使うこともない言葉のはずです。「税金の還付」は当該役所からの郵便書面によって知らされるものであり、「電話で」「ATMに自分で行って」「自分で手続をする」ようなものではありません。これまでに税金の還付を受けたことのある人なら知っているはずですが、受けたことがない人は知らないとしても致し方ないかもしれません。

元々、馴染みのない言葉ですし、かかってきた電話は「税務署」だったり自治体の機関~区役所や市役所などを名乗ったりするので、まずそこからしてすでに信用してしまうのです。報道で聞いているはずの「振り込め詐欺」や「還付金詐欺」は、言葉として知っているだけで、自分の身に降りかかるとは考えてもいないので、相手が名乗ったとおり真に受けるだけでもう半分被害に遭っていると言っていいようです。

相手が警察官や弁護士などを名乗っただけでも信用してしまう「オレオレ詐欺」と同じです。顔も見えない見知らぬ相手のことを肩書きだけで信用してしまうという実に危険な状態です。被害者は、相手を疑うことなく名乗られただけでそうと信じてしまう善意の人たちだといえますが、この人たちも「振り込め詐欺」について知らないわけではないのです。ちゃんと知っていたのに、被害に遭ってしまうのはなぜでしょうか?


→p.3・『還付金詐欺』という名称
→→p.4・佐伯の提案『ATM行け詐欺』/関連防犯ガイド記事
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