シーン1.希望に満ちたお引っ越し
“近居”なら「ばぁばの家へのお泊りだって、へっちゃらよ!」 |
以前から狙っていた、夫の実家近くの高級中古マンションをついに購入した。高級とは言っても、周辺に相次いで建っている新築マンションに比べればずっと値ごろだし、知らない人が見てもそれほど魅力はない。でも、古くからここに住んでいる質の高い住人と、古いマンションゆえのゆったりした間取りを、夫も私もずっと以前から知っていた。この5階、最上階の角部屋が売りに出されるという情報も、夫の両親にずっとリサーチしていてもらったからこそ、オモテに出る前にゲットできたのだ。
我が家は夫と6歳の長男、3歳の長女と私の4人家族。私の実家は飛行機に乗らないと帰れないようなところにあるけれど、夫は職場に通える範囲内に、今では両親二人だけで住む一戸建ての実家を持っている。これまでは職場を挟んで正反対の街にアパートを借りて暮らしていたから、年に数回の行き来だったけれど、近くに住むとなるともう少し関係は密になるのだろう。年に数回の交流だから、結婚以来7年近いけれど、これまで特に親とのトラブルはない。ちょっとお節介気味だけど人の好いお義母さんと、無口なお義父さん、近くに住んでもきっとうまくやっていけると思う。
それに、実は私もそろそろ復職をもくろんでいる。来春の上の子の小学校入学と、下の子の幼稚園入園にあわせた今はまさに引っ越しに最適のタイミングといえる。小学校は最初のうち帰りが早いけれど、帰宅まで実家で面倒見てもらえば心配ないし、下の子も幼稚園が終わったあと、お迎えに行ってもらえばパートが多少長引いても大丈夫だろう。これまであまり交流させて上げられなかった分、孫の面倒を見てもらうのもきっと親孝行のうちなんだと思っている。
クロスを張り替えるのにちょっとプラス程度のリフォームだったけれど、その間は義両親にマンションの鍵を預けて、工事の進捗をまめに見てもらっていた。「思ったほど配管も傷んでないって」「トイレの壁紙なんて、元がいいから張り替えるの勿体無いくらいだったわよ」なんていう報告を電話で受けながら、近くに住むってありがたいなあと思う。そうこうするうちに引っ越しの日がやってきた。狭い3DKから、ゆったりとした4LDKのマンションへの引っ越し。子どもたちもうれしそうだ。「僕の部屋も出来るんだよね」と長男。学習机とベッドも、来週には届く。
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