自信をなくした日本。僕の中に芽生えたPatriotism
日本には、日本の良さがある……。離れてみたからこそ、気づくことができたのでしょう。(写真はハワイのイメージ) |
が、実際に帰ってきた日本は、僕の知っていた姿とはずいぶんと違う印象で、何かが大きく変わってしまったことに気づいていました。一番驚いたのは、ある種のモノの値段が、移住前よりも下がっていたこと。
値段、というのは、大量生産が進んで安くなることはあっても、基本的には年々上がっていくものという認識しかなかった僕には、日本のデフレ現象は驚きの対象でした。とくに生活に関連する消費財や食料関連の値段が下がっている印象だったので、ハワイの物価高をあらためて認識すると共に、日本の低迷する経済の深刻さも肌で感じることとなりました。
1995年から96年といえば、円高が著しく、日本から働く女性たちがハワイに訪れ、内外価格差を利用してブランド品をごっそりと買っていた時代。ハワイで見る日本人は、まだまだバブルの延長のように派手にお金を使い、豪勢な暮らしを楽しむ人のようにも映っていたのです。
ところが実際には、日本は「失われた10年」の真っ只中……。自信をなくした社会に漂う静かな空気と、ハワイでの受け止められ方のギャップの大きさは著しく、この社会から隔離された場所で生きてきた自分を認識しては、孤独感すら感じるのでした。
それでも久しぶりの帰省は、僕の中のPatriotism、故郷を愛する心を十分に喚起してくれました。街のコミュニティ・センターで見た餅つき大会。1分と遅れることなくホームに滑り込む電車。人々のスムーズでムダのない流れ。清潔な食料品売り場とか、お店のサービスの丁寧さなどにまで、愛着や誇りを覚えるほどでした。
日本にいた時は、あれほど嫌だった日本の生真面目なまでの「秩序正しさ」や、時にはストレスにもなりうる「統一感」も、逆に日本の「平均値の高さ」を生んだ素晴らしい点として理解することができるようになっていました。息が詰まると逃げ出したかった閉塞感も、期間限定であれば、かえって居心地が良いことも分かりました。
国を出たことで、僕の中の日本観はかなり変わり、そして帰省によって、その変化は決定的なものとなりました。日本は自信をなくすことなんて、何もない。アメリカの模倣が正しいことと信じて、独自の文化や価値観を否定する必要など、まったくない……。問題はいろいろあるにしろ、僕はあらためて素晴らしい国に育てたことを誇りに思える自分に感謝しました。
次に訪れる時に、この社会がいったいどんな変化を遂げているのか。それは外にいるからこそ見えるもの。田舎や故郷の存在を持たずに育ってきた僕でしたが、「日本」という国が、初めての故郷と呼べる存在になったのです。ハワイで暮らす僕に「帰省」という新しい楽しみが生まれたことを知り、とにかく卒業まであと1年、頑張ろう、と、元気が湧いてくるのでした。
※この続きは、次週お届けする「後編」でご覧ください。
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