航空券/航空券関連情報

US機着水事故でわかった旅客機のヒミツ(4ページ目)

ニューヨークで15日に乗員乗客155人を乗せてハドソン川に不時着したUSエアウェイズ1549便。この予期せぬ事故と機長の対処を見ていて、旅客機の構造や運航訓練などについていくつか分かったことがありました。

執筆者:秋本 俊二

事故のニュースが教えてくれたこと──その3
フライトシミュレーター訓練の意味


さて、壊れた機体を操縦するチェスレイ・サレンバーガー機長は、高度920メートルで選択肢に尽き、意図的かつ冷静沈着にハドソン川への着水という道を選びました。同機長は元空軍戦闘機のパイロットで、飛行歴は40年。その判断力と技術に、地元メディアは「ハドソン川のヒーローだ」と称賛しているようです。

しかしこれは、決して奇跡ではありません。エアラインパイロットは、日頃からさまざまなアクシデントを想定しての訓練を積み重ねています。とくに最近は、パイロットの養成訓練でフライトシミュレーターを活用する割合が増え、危険をともなうため実機ではできないような訓練も繰り返し行えるようになりました。

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実機と同じ状況を先進のコンピュータ技術で再現 (c)Lufthansa

フライトシミュレーターは、実機のデータをシミュレーター用コンピュータに入力し、航空機のさまざまな動きを地上で忠実に再現するもの。その進化ぶりは驚くばかりで、現在は実機での訓練と比べてもまったく遜色がなくなりました。操舵やレバー操作による機体の細部にわたる反応を、実機での訓練と同じような感覚で体験できます。操縦桿や計器類だけではなく、窓には本物さながらの風景がCGによる3D映像で映し出され、また身体にはあたかも実機に乗っているようなリアルな振動や圧力が伝わってきます。

このフライトシミュレーターの前に座るのは、パイロット予備軍だけとは限りません。現役の機長や副操縦士にも、シミュレーターによる年に数回の訓練が義務づけられています。すでに多くのフライト経験を積んでいる機長らが、なぜわざわざシミュレーターでの訓練を受けなければならないのでしょうか。

シミュレーターには何種類もの天候のデータなども入っていて、各空港への夜間着陸や悪天候時のアプローチなど、いろいろな状況を設定して訓練することができます。「シミュレーターでいろんなケースを体験しておくことで、緊急時にも混乱することなく対応できます。何十年にもわたるパイロット人生でもトラブルに遭遇することはごく稀なのですが、日ごろのそうした訓練は決して無駄だとは考えていません」と、以前JALの訓練担当者が話していました。

ランディングギアに不具合が生じたときの着陸、突然の乱気流で機体が激しく揺れたときの対応、キャビンに火災が発生したときの措置──。設定する訓練項目はきわめて多岐にわたります。今回の機長の行動も決して「奇跡」ではなく、彼らが常にあらゆる状況を想定しての訓練を続けてきた結果なのです。


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