◆レオナルド・ダ・ビンチ(1452~1519)
トビの羽ばたきから飛行の原理を導いた天才も
天才ゆえに「限界」を感じていた?
鳥は無風の上空を舞いながら、ときどき忙しく翼を動かします。これは失い始めた高度を回復して再び滑空の体勢をとるためで、鳥の動作の中でもっとも目立つこの「羽ばたき運動」は、過去に空を飛ぶことを夢見た多くの冒険家たちに模倣されてきました。
「鳥が飛べるのは羽でボートのオールのように漕いでいるからである」と、鳥が羽ばたく仕組みの科学的解明に挑んだの一人が、ヨーロッパの天才科学者レオナルド・ダ・ビンチでした。ダ・ビンチは鳥の羽の動きを入念に観察し、羽を動かす筋肉や骨格の構造を調査。そして1490年、人類初の空飛ぶ機械「オーニソプター」を設計しました。
その独創性と探求心はさすがダ・ビンチという印象ですが、ただし残されている図面をいま見てみると、これで本当に空を飛べるとはとても思えません。天才ダ・ビンチが鳥の羽ばたき運動だけに注目し、どうして翼のもうひとつ役割に目を向けなかったのか? ちょっと不思議な感じもしますね。広げた翼に風をうけて揚力をつくりだす──そこが飛行の最重要ポイントなのに、と。
天才ダ・ビンチの志を継いだ後世のパイオニアたちも同様な羽ばたき飛行にこだわり続け、それが無謀な挑戦だと気づくのに、それから200年以上の歳月を要しました。