実験では、乱気流による事故を防ぐため、飛行中のパイロットからの情報をエアライン各社と気象庁がリアルタイムで交換します。これまで報告義務のなかった小さな揺れを連絡したり、反対に揺れのない静空域を伝え合うことで、フライトに際してはより安全で快適な航路を選択。同時に気象庁では、パイロットから連絡を受けた上空の様子を参考に乱気流の起きやすい空域を予想し、管制を通じて地上から支援を行います。
具体的には、機長はまず飛行中に感じた揺れなどの情報を、無線で会社のディスパッチャー(運航管理者)に通報する。地上の運航スタッフは、その情報を国土交通省の管制コンピュータに入力。新しいデータは管制官や他のエアラインのディスパッチャーがただちに検索できるようになり、従来にない広範な空域の気象情報をつかむことができます。
実験は今年6月中旬からJAL、ANA、JASの大手3社を含めた国内5社が参加してスタート。これまで乱気流や雷雨が起きやすい空域を「悪天候情報」として出してきた気象庁でも、「実際に飛んでいる飛行機から現在の上空の様子が伝わることで、危険な空域を絞り込むことができる」と期待しています。
エアライン各社はここ数年、独自サービスの向上やチケットの安売り合戦で激しい競争を繰り広げています。そういう競争は利用者にとっては大歓迎ですが、一方でこうした実験には今後より多くのエアラインに加わってもらい、乱気流事故の防止の面で大いに協力し合ってほしいものです。
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