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「旅の窓口」創業者に聞く情報仲介業の今 ベストリザーブ小野田社長に聞く(2ページ目)

「なによりもユーザーの利便性を第一優先」という姿勢がユーザーの拡大を創出。宿泊予約サイト「ベストリザーブ」小野田社長に聞く情報仲介業のポイント

水上 浩一

執筆者:水上 浩一

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「旅の窓口」創業者、ベストリザーブ小野田純社長

2005年8月30日現在、ネット宿泊予約業界は、動きがあわただしい状態です。楽天トラベルが手数料値上げを打ち出しましたが、ライブドア傘下のベストリザーブは手数料無料キャンペーンを発表したことにより、楽天トラベルは実質値下げを余儀なくされました。さらにYahoo! JAPANリクルートは8月2日、ネット上の旅行関連サービスを共同展開することで基本合意したと発表。9月以降、「Yahoo!トラベル」上から、リクルートの「じゃらんnet」の契約施設を予約できるようになり、予約可能な国内施設数は現在の約8,500から約15,000と大幅に増え、最大手の楽天トラベル(約1万7,260)に迫ります。また海外旅行でも順次協業を進め、国内最大規模に育てる計画です。

今回、楽天トラベルの前身である「旅の窓口」(創業時は「ホテルの窓口」)を1996年に立ち上げ、2000年にベストリザーブを創業した小野田純社長に、各社のビジネスモデルについての見解と情報仲介業について、そしてネット宿泊予約業界の予測を伺いました。

情報仲介業はマーケットプレイスの創出

小野田社長は、情報仲介業というのは一言でいうと「マーケットプレイスの創出」だと語っています。これまでの流通経路は、

メーカー→卸→小売→顧客

となっていたのが、インターネットの登場で、卸部分が中抜きされ、

メーカー→顧客

となります。しかし、顧客は、メーカーごとに情報を入手するのは手間がかかり、効率的ではありません。そこに商品やサービスの仲介役として「情報仲介業」というサービスが出現しました。

メーカー→情報仲介業→顧客

小野田純社長は、「変革というのは、利便性の追求であり、それは最終的には世の中の発展につながる。私はそういう仕事に魅力を感じて現在のビジネスを展開している」と語っています。まさに、「必要とする人のもとへ必要とする情報を」(小野田社長)という理念のもと、情報仲介業は、流通の革命を成し遂げたのです。

楽天トラベルの今回の手数料の値上げについて、小野田社長は、「楽天トラベルの手数料値上げは、販売手数料を取るビジネスとしては正しい選択であり、資本主義社会として考えると当たり前の行為」と考えています。楽天トラベルは、旅の窓口時代から一貫して一律6%だったシステム利用料を、利用形態に応じて7~9%にアップしました。楽天トラベル向けに部屋を多く確保すればするほど、また、楽天サイト上での露出を高めるほど、利用料が上がる仕組みとなっています。

「旅行代理店型」と「マッチング型」

宿泊予約のビジネスモデルには大きく2通りがあります。一つ目は、旧来のリアルビジネスに近い、いわゆる「旅行代理店型」。これは旅行自体のニーズを作り出し、ユーザーに参加してもらうスタイルです。

この場合、宿泊施設よりも代理店が優位になります。宿泊施設側は代理店に多額の手数料を支払ったり、代理店主催の研修に参加するなどして関係を強化しながら、部屋を優先的に売ってもらうという仕組みになっています。楽天はこのモデルに回帰しようとしている、というのが小野田社長の分析です。

もう一つは、ホテルとユーザーを最適にマッチングするシステムと場所だけを提供し、宿の価値はあくまでユーザーに決めてもらうという、「マッチング型」です。ベストリザーブはこのスタイルにこだわっています。「ネットは、まず需要がありき。たとえば○月○日に仕事で泊まらなければならないというところからはじまる」と小野田社長は語ります。

一律5%のシステム利用料は、ユーザーと宿泊施設をマッチングする、公平な情報流通の対価と考えています。「ネットを活用して、オープンで公平な仕組みを作り、情報流通を加速させたい」と小野田社長は意気込みを語ります。

競争で業界は伸びる

「公正な競争が行われる限り、業界は良くなる」と小野田社長は期待を込めて語っています。「楽天トラベル、ヤフー、リクルート、ベストリザーブ……競争が激化する中で、それぞれが信じたビジネスモデルを追求していけば、業界が活性化する」といいます。1996年に「ホテルの窓口」を作ったときも、その後ユーザーの支持を受けてシェアが拡大していきましたが、小野田社長は、シェアの高さをその時点ですでに懸念していたそうです。

現在、旅行予約全体に対してネット予約が占める割合は、5%前後で頭打ちの状態。「他事業者と切磋琢磨を重ね、競争することによって、この状態を打開していきたい」といいます。

これまでホテル予約専門だったベストリザーブですが、今後はレジャー向け旅館の予約サイトを9月に作る計画だということです。常に変革と利便性を追求する、当初からのその姿勢には、わずかのぶれもありません。

ベストリザーブの収益のポイント

ベストリザーブは、ビジネスユース特化型であり、とにかく使い勝手を重視しています。 宿泊予約までのステップ数も最短にすることを優先にシステム構築を行っています。また、 他の宿泊予約サイトを利用している中で、ストレスになるのが条件を入力したあとのリストが 表示されるまでのレスポンスタイムですが、ベストリザーブではそのスピードにも特にこだわっているようです。

アップルコンピュータの「GUI(グラフィック・ユーザー・インターフェイス)」に代表されるユーザーの使い安さ最優先の基本戦略や、先日取材させていただいたSNSの「mixi」の運営会社であるイー・マーキュリーの笠原社長(近日アップ予定です)も述べていましたが、「なによりもユーザーの利便性を第一優先」という姿勢がユーザーの拡大を創出し、結果的に収益のポイントになっているのです。

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