
「休肝日を作れば安心」「チャンポンすると悪酔いする」――。お酒にまつわる“常識”は、本当に正しいのだろうか。お酒を楽しみながら健康リスクを抑えるために、知っておきたい事実がある。
『東大名誉教授が教える 死なない生き方』(北村俊雄著)では、iPS細胞の誕生にも貢献した著者が、最新研究をもとに「健康寿命100歳」を手に入れるための運動、睡眠、食事などのポイントを具体的に解説している。
今回は本書から一部を抜粋し、飲酒によるリスクを抑える具体的な工夫や、「休肝日」に対する正しい考え方について紹介する。
「空腹で飲む」のは避けた方がいい?
人それぞれ考え方は異なり、生きていく中で何を大切にしたいかは当然違う。長く健康に元気でいたいと思う人もいれば、アルコールを控えて禁欲的な生活をするなんて考えられないという人もいる。確かにリスクはあくまで統計的なものであり、アルコールを飲んでいると、あるいはタバコを吸っていると必ず病気になるというわけではない。
ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素 ※アセトアルデヒドを分解する主要な酵素) の遺伝子変異が片方だけにある人も、飲み過ぎには気をつけてほしい。遺伝子が両方とも正常の人はアルコールに強く、相当飲んでもアセトアルデヒドは速やかに代謝され、健康に大きな問題は起こらない。ただ、飲みすぎてアルコール依存症に陥るリスクがあるので、その点とカロリー過多には気をつけて、楽しく飲んでほしい。
ここでは、アルコールをたくさん飲むということを前提で、少しでもリスクを少なくする対策に触れておく。
まず、よく言われることだが、空腹で飲酒するのではなく、何か食べながら飲むことだ。これによって、アルコールの吸収が抑制されるのが良いとされている。一方では摂取カロリーが多くなりすぎるという問題はある。飲み足りなくて、結局飲酒量が増える可能性もある。
アルコール度数が強いウイスキーなどを飲む時には、水や炭酸水をチェーサーにして飲むのも、方法の一つだ。
「休肝日は意味がない」説、本当のところは?
よく言われるのは休肝日である。
時々、肝臓を休ませるのがいいと言われるが、飲酒量の総量が一番の問題であって、休肝日自体にはあまり意味はないと言う肝臓の専門医もいる。一方では、毎日飲む群と週に1、2日休肝日を作る群で、トータル量を同じにして追跡すると、休肝日を作る方が肝硬変になる率は低かったとする調査はある。しかしながら、長期間にわたりこの実験を正確に行うのは不可能だ。それでも、休肝日の良い点は、毎日飲んでいるとどんどん量が増えそうだが、それに対する抑制効果が少しはあることだ。また、飲まない日をしっかり決めることができる人は意志が強く、そうでない人に比べて節制できている。
これらを総合すると、科学的なエビデンスは強くないが、休肝日は作る方がよいという結論になる。
医学的には、(積算合計で)アルコールを500キロ以上飲むと、肝硬変を発症するリスクが高いと考えられている。そうならないために、1日の量は40グラム以下に抑えることが推奨されている。この量は、500ミリリットルの缶ビールを2缶、日本酒2合、ワイン1/2本に相当する。肝硬変になると肝癌を発症するリスクも高くなる。
また、チャンポンは悪酔いすると言われるが、どれくらい酔うかは純粋にアルコール量によるので、飲みすぎなければ悪酔いはしない。ワインなど防腐剤が含まれるアルコールをたくさん飲むと、頭痛が残りやすい。このことが、チャンポンは悪酔いすると誤解される理由の一つだろう。

著者:北村 俊雄(東京大学名誉教授)
1956年に大阪府で生まれ、兵庫県で育つ。東京大学医学部卒業後、内科研修を経て医学部第3内科に入局。国立がんセンター研究所ウイルス部に出向して白血病ウイルスの実験に従事。その後、第3内科に戻り血液内科の臨床と研究を行う。32歳で米カリフォルニア州DNAX分子生物学研究所に博士研究員として留学。37歳で自らの研究室を持つ。40歳で帰国し、東京大学医科学研究所で日本初の寄付講座を担当。1991年、同研究所先端医療研究センター教授。同センター長を経て、2022年から神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター長。東京大学名誉教授。






