
「最近、なんとなく疲れが取れない」「夜中に目が覚める」「以前よりイライラしやすくなった」……。40代に入ってから、これらの不調を感じることは珍しくありません。
「年齢のせい」「忙しいから」と片づけている人が多いかもしれませんが、不調の背景には、女性ホルモンのゆらぎが関係しているかもしれません。厚生労働省の情報でも、更年期には女性ホルモンの変化によって、心身にさまざまな不調が現れやすいと報告されています。更年期は閉経前後の時期を指し、40代前半から少しずつ変化を感じ始める人もいます。
10月18日は、国際閉経学会(IMS)が提唱する「世界メノポーズデー」です。日本でも10月18日から24日までを「メノポーズ週間」として、更年期に関する理解を深めるための啓発活動が行われています。
今回は、更年期の前段階として語られることの多い「プレ更年期」について、医学論文をもとに解説します。40代から始まる心身の変化を整理したうえで、早めに意識したい対策を確認していきましょう。
プレ更年期は何歳から? 月経周期の変化が大切なサインに
まず知っておきたいのは、「プレ更年期」は正式な医学用語ではないということです。医学的には、閉経に向かって心身に変化が現れ始める時期を「閉経移行期」と呼びます。更年期は一般に閉経前後の約10年間を指し、目安となるのは45~55歳ごろです。月経周期の変化はそれよりも早く、40代前半から見られることがあります。
女性の生殖年齢と閉経前後の時期を分類する国際的な基準である「STRAW+10(Stages of Reproductive Aging Workshop)」では、主に月経周期の変化で閉経移行期を判断します。初期の閉経移行期では、隣り合う月経周期の長さに7日以上の差が繰り返し見られ始めるようです。さらに進むと、60日以上月経が来ない時期が現れることがあります。
つまり更年期は「何歳から」と一律に区切れるものではないということです。40代前半ごろから月経周期のゆらぎとして始まる人もいます。大切なのは、年齢だけで判断するのではなく、月経の変化を体からのサインとして捉えることだと言えるでしょう。
一方で、ホルモンの変化そのものは、月経がはっきり不規則になる前から始まっている場合もあります。STRAW+10の整理でも、閉経移行期では月経周期の変化より前から、卵巣機能や関連するホルモンの変動が見られることが示されています。
海外での追跡研究の報告によると、閉経移行期が始まる時期や進み方には個人差があるものの、初期の閉経移行期に入る年齢は平均47歳前後で、最後の月経は平均51歳前後です。また、初期の閉経移行期は最終月経の6年から8年ほど前に始まることが多いとされています。
ただし、変化の始まる時期や症状の出方には個人差があり、40代前半から不調を自覚する人もいます。「まだ40代前半だから更年期とは無関係」と決めつけず、体の変化に目を向けることが大切です。
「ただの疲れ」と思っていた症状は、ホルモンの変化が原因かも
では、プレ更年期にはどのような症状が見られるのでしょうか。更年期の代表的な症状として、突然顔が熱くなったり汗が噴き出したりする「ホットフラッシュ」を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、現れる症状はそれだけではありません。
女性を長期間追跡した米国のSWAN研究では、閉経移行期の初期にある女性の約39%がホットフラッシュを経験していました。ホットフラッシュは更年期の代表的な症状として広く知られていますが、初期の段階では、全ての人に現れるわけではないことが分かります。
さらに、気分の落ち込みを感じる女性の割合は、研究開始時の20.9%から、閉経移行期初期には27.8%に増えていました。加えて、眠れない、集中しづらい、気分が不安定になるといった変化が見られることもあります。
こうしたことからも、「プレ更年期」には心と体の両面にさまざまな症状が現れることが分かります。不調の種類が幅広いため、年齢や疲れのせいだと思ってしまう人も少なくありません。
また、腟の乾燥や性交時の痛み、排尿にまつわる悩みは、気になっていても周囲に相談しにくい症状です。こうした変化も女性ホルモンの低下と関係しており、特に腟の乾燥は、そのままでは改善しにくい場合があります。
もちろん、こうした不調の背景に、貧血や甲状腺の病気、気分の病気などが隠れていることもあります。そのため、自己判断で済ませず、一度医療機関に相談することが大切です。
では、ホルモン検査を受ければ、プレ更年期かどうか分かるのでしょうか。そう考える人は多いかもしれません。しかし実際には、閉経移行期にはホルモン値が大きくゆれ動くため、1回の採血だけで判断するのは難しい面もあるようです。STRAW+10でも、閉経移行期の評価では月経周期の変化が重視されています。FSH(卵胞刺激ホルモン)などの血液検査は参考にはなりますが、あくまで補助的な情報としての扱いです。
こうした理由から、月経が来た日や周期の変化、気になる不調をふだんから記録しておくと、受診したときに状態を伝えやすくなります。
40代前半から始めたい、プレ更年期に備える「3つのセルフケア」
では、プレ更年期が気になり始めたら、何から始めればよいのでしょうか。最初の一歩として大切なのは、毎日の暮らしを整えることです。
国際閉経学会が2025年に公開した資料でも、健康的な食生活、体を動かす習慣、質のよい睡眠など、生活習慣を整えることが基本とされています。こうした取り組みは、更年期の時期を少しでも快適に過ごす土台になります。まず取り組みたいのは、次の3つです。
■月経周期と体調を記録する
月経が始まった日や周期の長さに加えて、ほてり、睡眠、気分の変化なども記録しておきましょう。体の変化に気付きやすくなるだけでなく、受診時にも役立ちます。
■適度な運動を習慣にする
週150分程度の中強度の有酸素運動に加え、週2回の筋力トレーニングが勧められています。骨や筋肉の維持に役立ち、生活習慣病の予防にもつながります。
■睡眠と食生活を見直す
十分な睡眠を確保し、野菜、果物、魚、大豆製品などを取り入れた、バランスのよい食事を心掛けましょう。毎日の生活を整えることが、心身のゆらぎへの備えになります。
生活習慣を整えても不調が続くときは、我慢せず医療機関に相談することも選択肢の1つです。北米閉経学会(NAMS)の2022年の声明でも、つらいホットフラッシュに対しては、ホルモン療法が最も効果的な治療とされています。60歳未満、または閉経後10年以内で禁忌がない場合には、治療のメリットがリスクを上回ることが多いとされています。
大切なのは、閉経を早く予測することではありません。今の自分の体に起きている変化に気付くことです。40代から体調を記録し、必要と感じたときには無理をせずに相談する。その習慣が、プレ更年期以降の健やかな生活につながっていきます。
■参考文献
1.Siobán D Harlow,Margery Gass,Janet E Hall,et al.Executive summary of the Stages of Reproductive Aging Workshop + 10: addressing the unfinished agenda of staging reproductive aging.Menopause.2012 Apr;19(4):387-95.
2.“The 2022 Hormone Therapy Position Statement of The North American Menopause Society” Advisory Panel.The 2022 hormone therapy position statement of The North American Menopause Society.Menopause.2022 Jul 1;29(7):767-794.
3.Nanette Santoro.Perimenopause: From Research to Practice.J Womens Health (Larchmt). 2016 Apr 1;25(4):332–339.
4.Katherine Williams.Perimenopausal depression: review of recent findings and implications for future research.Curr Opin Obstet Gynecol.2023 Apr 1;35(2):150-153.
5.Libera Troìa,Martina Garassino,Agnese Immacolata Volpicelli,et al. Sleep Disturbance and Perimenopause: A Narrative Review.J Clin Med. 2025 Feb 23;14(5):1479.







